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核燃料サイクルからの撤退を! (13)

1月6日付「朝日」紙は、「原発政策 政治の無責任は許されぬ」と題する一本社説を載せた。「福島第一原発の事故に苦しむ日本が、脱原発に向かうのか、それとも元の道に戻るのか。今年はその分岐点になる」との書き出しで始まる、凛として良い文章である。

現在、原子力規制委員会では、9原発16基の原子炉の、新基準への適合審査(再稼働)申請が受理され、うちプルサーマル運転3基を含む9基の原子炉の審査が山場を越えたとされる。昨年12月25日には自民党の原子力規制に関する党内チームの座長を務める塩崎恭久衆院議員が田中俊一原子力規制委員会委員長に国会議員や立地自治体の首長、電力会社らの意見を聴くように談判し、露骨な圧力をかけた。事務局である原子力規制庁のスタッフが政府各部門の官僚の寄せ集めということで、ただでさえ独立性に懸念の強い原子力委員会は、これで一層、政権党、政府・経産省、電力会社の方に顔を向けることになるだろう。

原発再稼働の荒波とともに核燃料サイクルも走り続けようとしている。「朝日」社説は、巨額のコストがかかり、資源の有効活用という意義がなくなった核燃料サイクル事業は撤退が世界の流れだと指摘し、これを続けようとしている安倍政権を無責任と断じている。そのとおりだ。

だから都知事選、脱原発の道筋を明確に示し、この道に都民・国民を統合して戦うことを模索してほしいのである。

そろそろ核燃料サイクルの話、終わりに近づいた。今日は、プルサーマルの話をまとめ、明日、全体のまとめをしてみようと思う。

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プルサーマルの危険性
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核分裂性のプルトニウムは、ウラン235と比べると、より不安定で、中性子を吸収しやすく、核分裂を起こしやすい。

確かにウラン燃料でも、原子炉内で燃えている間に、ウラン238がプルトニウムに転換し、その半分程度(燃料全量の1%程度)が燃えている。しかし、プルサーマルで用いられるMOX燃料のプルトニウム濃度は5~10%であるから、ウラン燃料を燃やす場合に比べて、プルトニウムの量は、著しく多い。

そのために出力の急な上昇、核分裂暴走及び暴走した場合の制御棒の性能低下などが危惧されている。また燃焼中のfpガスの放出量が非常に多いことやプルトニウムの濃度が稠密になると融点が下がることなどが原因で、燃料ペレットの破損及び燃料棒の破損を起こし、メルトダウンを起こすおそれがあることが指摘されている。更には、ウラン燃料を燃やす場合と比べて、MOX燃料を燃やす場合には、アルファ線を放出し、長い崩壊系列を持ち、また半減期が長いプルトニウム240、242,ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどの核種がより多く蓄積し、崩壊熱が格段に高く、放射能も著しく強くなるので、万一事故が発生して放出されると被害は著しく大きくなるなどの危険性が指摘されている。

なおプルサーマルで燃やしたMOX使用済燃料の再処理が困難であるのは、この最後に述べたことによる。

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プルサーマルはプルトニウムのごみ焼却
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以上見たように欺瞞的理由を述べたて、指摘した危険性も顧みず、しかも経済的合理性を無視してまで、政府・経産省及び電力会社が、プルサーマルを強行しようとしているのは何故であろうか。それは、結局、高速増殖炉開発・実用化が幻となった今、それでも使用済燃料再処理路線を走ることにより必然的に備蓄されていくプルトニウムを、実際に使用して減らす努力をしているということを世界に示すためのもの、即ち、アリバイづくりに過ぎないということである。備蓄したプルトニウムのごみ焼却のための苦肉の策なのである。

高速増殖炉開発・実用化構想には、誤りとはいえ、限りあるウラン資源を100%使い切り、有効利用をしたいというギラギラとした「野望」が認められた。プルサーマルには、何もない。独自の意義や価値を見いだすことはできないのである。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を! (12)

名護市長選の結果に快哉を叫んでいる人は多いだろう。この勢いで都知事選も脱原発派の統一で勝利したいものだ。

宇都宮氏は、「都知事選は脱原発の最後のチャンスだと言って一本化を求めている人たちいるが、その最後のチャンスがつぶれたらあきらめるのですか」と語気を強める。確かにそうだ。しかし、それでも敢えて問いたい。歴史には転換点というものがある。その転換点を的確にとらえ、歴史を前進させる方向に向けて舵を切るということが必要だ。過去の言動や実績に目を奪われ、現在どうなのかを確かめずに、細川氏を頭からダメだとはねつけ、協議しようとすらせず、今まさに原発再稼働と完全復活に向けて怒涛のごとく押し寄せる荒波に、脱原発の声を結集して立ち向かう努力をしないのは間違いではないかと。

昔、こんなことがあった。1936年12月召集の第70帝国議会・衆議院本会議において、政友会・浜田国松議員は2.26事件で皇道派が解体したあと、統制派が陸軍を掌握し、高まる軍部ファッショに抗して、軍部を激しく攻撃した。浜田議員は、寺内寿一陸軍大臣の恫喝に一歩も引かず、かの有名な「割腹問答」の応酬をした。浜田議員は、軍部の言いなりになる広田弘毅内閣を退陣させるために挑発したのであった。怒りの持って行き場のなくなった寺内陸相は、広田首相に衆議院解散を迫ったが、広田首相は内閣総辞職を選んだ。

そこで軍部ファッショと戦争路線に反対する政友会・民政党は、稀代の風見鶏と言われた宇垣一成元陸軍大臣・前朝鮮総督の担ぎ出しに乗り出し、宇垣も反軍部ファッショの覚悟を固めて、出馬の意思を固めた。そして天皇から宇垣に組閣命令を出され、反軍部ファッショ・平和の人民戦線「的」内閣の成立が現実のものとなろうとした。しかし、実にこのとき社会大衆党は、陸軍の進める広義国防路線は、勤労大衆の生活向上を目標としているとして陸軍と結び、宇垣内閣の成立に反対した。結局、陸軍の宇垣内閣には陸軍大臣を出さない強硬策を打ち破るだけの情勢熟さずで、宇垣内閣は幻と消えた。かわって陸軍の支持を得た林銑十郎元陸軍大臣(満州事変の朝鮮軍司令官。朝鮮軍を独断動員した越境将軍の異名をもつ。)が組閣、文字通り軍部独裁政権となった。これが軍部を勢いづけ、1937年7月7日の盧溝橋事件、そして日中全面戦争に突入する転換点となった。

だからとどうだというわけではないが、きれいごとを言って大局を見誤ってはならないことを示す歴史の一例として頭の片隅に置いては欲しいものである。

さてプルサーマル。どうしてこれを導入しようと言うのであろうか。

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プルサーマル導入の論拠は?
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ところでプルサーマルを実施する論拠として、政府(経産省・資源エネルギー庁)、原子力委員会及び電力会社は、①ウラン資源の有効利用、②余剰プルトニウムを持たないという国際公約の実行、③高レベル放射性廃棄物(本節では使用済燃料そのものも「高レベル放射性物質」という。)の発生量を少なくすることができる、の3点をあげていた。しかし、これらは、以下に述べるとおり成り立たない。

順不動になるが、まず②の論拠について。これは要するに使用済燃料再処理によって、自ら意欲してプルトニウムを抽出、備蓄をしておきながら、余剰プルトニウムを持たないとの国際公約を口実にして、備蓄したプルトニウムを減らすためにプルサーマルを実施するのだという奇妙な理屈であり、反論にも値しない。まじめに議論をするなら再処理路線そのものを再検討するべきであろう。

次に③の論拠について。ワンススルーする場合には使用済燃料全量が高レベル放射性廃棄物となってしまうのに比べて、再処理によって高レベル放射性廃棄物の発生量は減ることになることは、理屈の上ではそのとおりであろう。しかし、それはプルサーマルの燃料としたMOXの使用済燃料を繰り返し再処理する場合にはじめて言えることである。現実にはプルサーマル運転後に発生するMOX使用済燃料(ウラン燃料の使用済燃料よりも放射能が強く、崩壊熱も高い。)を再処理する技術は確立されておらず、そのための再処理施設建設は計画されていないのでMOX使用済燃料はワンススルーで処分されることになる。そうすると計算上は当初の使用済燃料から分離抽出されたわずか1%相当分のプルトニウムがプルサーマルで消えるのみであとはそのまま残り、高レベル放射性廃棄物の発生量は殆ど減らないのである。のみならず既に述べた再処理をしたことによりガラス固化体という始末に負えない危険な物質を残すことになる。
なお付言するに、③の議論は、使用済燃料の取扱いについて、再処理路線をとるかワンススルー路線をとるのかという問題であって、プルサーマル導入の論拠として無理にこじつけようとしているに過ぎないように思われる。

①の論拠についてはどうか。経産省・資源エネルギー庁の2001年11月作成の「核燃料サイクルのエネルギー政策上の必要性について」と題する説明資料において、濃縮度4.1%のウラン燃料1000㎏を燃やす→それにより生じる使用済燃料1000㎏を再処理し、プルトニウム約10㎏、濃縮度0.9%のウラン約940㎏を回収する→それを加工、濃縮してMOX燃料約130㎏、濃縮度4.1%のウラン燃料約130㎏が作られる→これによりもとの1000㎏のウラン燃料に対して260㎏、約25%の新たな燃料を生み出すことができるというモデルをあげて、資源の有効利用が出来ると説明されている。

しかし、これは著しい誇大宣伝である。

使用済燃料再処理により生み出されるプルトニウム10㎏のうち核分裂性のプルトニウム(Pu239、Pu241)はおよそ70%であり、しかも再処理工程でのロスが発生するのでそれを10%と想定すると、結局、実際には、核分裂性のプルトニウムは、6.3㎏でしかなく、MOX燃料となって実際に炉内で燃えるのはそのうちの5分の4の約5㎏である。これはもとの1000kgのウラン燃料の僅か0.5%である。

また回収済みの濃縮度0.9%の汚れたウラン約940㎏を濃縮して4.1%の濃縮ウランを製造することは実際には実施される計画はない。のみならず、そもそもこれは、ウラン燃料の使用済燃料に残留するウラン235の再利用ということであって、新たな燃料を生み出すわけではなく、プルサーマルとも関係がないことである。従って、プルサーマルで新たな燃料創出に寄与するのは、結局、核分裂性のプルトニウム約5㎏に過ぎない。使用済燃料再処理、MOX燃料製造のために投入される膨大な資源とコストを考えると何ら得るものはないどころか大きな浪費である。

大綱では、プルサーマルにより、「1~2割のウラン資源節約効果が得られる」と、ややあいまいな評価に落としているが、それさえも著しい誇張である。
(続く)
   注:当初アップロードした原文では、有効活用率5%としたが、0.5%と訂正する。

核燃料サイクルからの撤退を! (11)

2013年12月5日付「朝日」に、米国原子力規制委員会(NRC)委員長アリソン・マクファーレン氏のインタビュー記事が載っている。NRCは、核利用推進の立場から「安全性」を確保するための機関であるから脱原発の立場からの批判は当然あるだろう。
しかし、たとえば電源喪失時の対策としてすべての原発に時間無制限の安定的バックアップ電源を設けることを事業者に命令する(わが国ではバックアップ用電池は1系統あたり24時間作動、ディーゼル発電は1週間分の燃料を備え付けることを義務付け)、放射能漏れなどの緊急時の対応について運転開始前に実効性を演習で確かめないと稼働できない(わが国では緊急時対策の実効性を演習で確かめることを要しない)、できるだけ物事を透明な状態で行い、一般の人が読めるように書かれた文書のほとんどは公開し、公聴会も数多く開くなど情報公開に努力している(わが国では情報公開が著しく遅れており、特定秘密保護法によりそれが一層甚だしくなる懸念がある)、質量優れた事務局スタッフを擁し、原子力業界からの独立性を確保が図られている(わが国の事務局である原子力規制庁は、政府各部局からの寄せ集めで、かつ人員面でも弱体である。)など、わが国の原子力規制委員会と比べて、より信頼性が高いと言えそうだ。

さてプルサーマルの話、なかなかまとまらない。もう少し続けることにする。

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プルサーマル導入の経緯(3)
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チェルノブイリ事故後、1990年代後半には、こうした脱原子力発電依存の世論を背景に、1980年代末ころから続発する事故(1989年1月の福島第2原発3号炉再循環ポンプ破断事故、1991年2月の美浜原発2号炉蒸気細管ギロチン破断事故、1994年6月の福島第1原発シュラウドひび割れ事故及び既に述べた1995年12月の「もんじゅ」のナトリウム漏出事故)が、地方自治体を後押しし、地方自治体による政府の原子力政策への異議申立へとつながるのである。

まず、福井県と敦賀市は、「もんじゅ」事故発生直後の1995年12月11日、事故現場に立ち入り調査をした。これは動燃との安全協定にもとづく権限の行使で、当然と言えば当然のことであるが、それまでにこうした立ち入り調査さえも実施されたことはなかった(なお、その立ち入り調査によって、動燃が、事故状況を撮影したビデオテープのうち一部のみを公表し、肝心な部分を秘匿していたことが突き止められ、その後の動燃批判、解体のきっかけとなったのであった。)。

次いで、1996年1月、福島、新潟、福井3県知事連名の「今後の原子力政策の進め方についての提言」と題する政府への申し入れがなされた。その中で、3県知事は、①核燃料サイクルのあり方などについて国民各界各層と対話をし、合意形成をはかるべく、原子力委員会の体制整備を図ること、②検討段階から各種シンポジウム、フォーラム、公聴会を積極的に企画・開催すること、③以上の手続を踏まえて、改訂時期にこだわらず、原子力開発利用長期計画を見直すことなどを訴えた。

さらに、新潟県巻町では、東北電力巻原子力発電所建設の可否を巡って町政が紛糾した。1994年、原発賛成に転じた町長の当選、建設反対派の住民による自主管理住民投票の実施、住民投票条例制定、町長リコール、建設反対派町長の当選、そして1996年8月には、建設賛否を問う住民投票が行われ、有効投票総数の過半数が建設反対を占め、上記原子力発電所の建設計画は中止のやむなきに至った。

こうした情勢に促されて、わが国政府も、原子力行政の改革の検討に着手することを余儀なくされ、1996年4月には、通産省、科学技術庁両省庁の提唱のもとに、「原子力政策に関する国民的合意の形成に資するための場」として、「各界各層から幅広い参加者を招聘、原子力委員は常時出席、出席者の対話方式を採用、地域における開催も検討、全面的に公開」の原則のもとに、「原子力政策円卓会議」がスタートした。

ところが、通産省・総合エネルギー調査会原子力部会は、上記の「原子力政策円卓会議」がいまだ継続中であるにもかかわらず、そこでの議論とは無関係にそそくさと会合を行い、突如として、1997年1月20日、今後数十年間の核燃料サイクルの柱としてプルサーマルを積極的に進めるとの中間報告をまとめてしまった。

これを受けて、原子力委員会は、同月31日、「当面の核燃料サイクルの具体的な施策について」と題する文書をまとめた。それによると、①プルサーマルは現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法であり、原子力発電所を有する全ての電気事業者が共通の課題として取り組む必要がある、②2010年頃までには全ての電気事業者が実施する必要がある、③具体的には海外再処理で回収されたプルトニウムを用いて2000年までには3~4基程度で開始し、その後、国内外でのプルトニウムの回収状況や個々の電気事業者の準備状況等に応じて2010年頃までに十数基程度にまで拡大することが適当である、とプルサーマル実施の方針が示されていた。

同年2月4日、政府は、閣議了解によりこれを確認し、直ちに動き出した。通産省、科学技術庁が、福井、福島、新潟3県への協力申し入れ、東電及び関電がそれぞれの原子力発電所立地県と市町村への協力申し入れ、当時の橋本首相自らが上記3県知事と会談をするなどプルサーマル導入へ目まぐるしく動く。

政府は、一方でプルサーマルを含む核燃料サイクルの問題などについて、広く各界各層の国民と対話して、合意形成を図るとして、「原子力政策円卓会議」を提唱し、開催しているのに、他方で、それを無視して一方的に、プルサーマル実施する方向に走り出してしまったのである。
これは二枚舌、背信行為であり、厳しく批判されなければならない。

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プルサーマル導入状況
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政府、電力会社一体となったプルサーマル導入の動きに対し、導入対象とされた原子力発電所の地元では、さまざまな反対運動が展開され、またイギリス燃料公社(BNFL。当時)によるMOX燃料のデータ改ざんの発覚などもあり、プルサーマル導入は、政府、電力会社の思い通りには進まなかった。

2011年3月11日時点の状況は以下のとおりであった。
① 既に導入がなされたところ
・ 九州電力玄海原子力発電所3号機 2009年11月5日より試運転開始、同年12月2日より営業運転開始
・ 四国電力伊方原子力発電所3号機 2010年3月2日より試運転開始、同年3月30日より営業運転開始
・ 関西電力高浜原子力発電所3号機 2010年12月25日より試運転開始、2011年12月25日より営業運転開始
・ 東京電力福島第一原子力発電所3号機 2010年9月18日より試運転、同年10月26日より営業運転開始
② 事前合意が成立しているところ)
・ 中部電力浜岡原子力発電所4号機 2012年3月以降に導入予定
・ 関西電力高浜原子力発電所4号機 2011年夏から導入予定
・ 中国電力島根原子力発電所2号機
・ 北海道電力泊原子力発電所3号機
・ 東北電力女川原子力発電所3号機 2015年度までに導入予定

本日(2014年1月19日)現在、新基準への適合審査(再稼働)申請をしているのは、9原発16基。以下のとおりである。

四国電力・伊方3号機(プルサーマル)、九州電力・玄海3号機(プルサーマル)、4号機、川内1号機、川内2号機、北海道電力・泊1号機、2号機、3号機、関西電力・大飯3号機、4号機、高浜3号機(プルサーマル)、4号機、東京電力・柏崎刈羽6号機、7号機、中国電力・島根2号機、東北電力・女川2号機

本日の「朝日」紙が報じた原子力規制委員会田中俊一委員長の談によると、このうち四国電力・伊方3号機(プルサーマル)、九州電力・玄海3号機(プルサーマル)、4号機、川内1号機、川内2号機、関西電力・大飯3号機、4号機、高浜3号機(プルサーマル)、4号機、計9基の審査の「山を越えた」とのことであり、いよいよプルサーマル再稼働も正念場を迎えている。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を!(10)

都知事選に、脱原発都政の確立の一点で統一を進めることは矮小化であろうか。私は決してそうではないと思う。その理由として脱原発をさまざまな現在的課題の代表指標と見なす考え方については既に述べた。それに加えて以下のように述べておきたい。
脱原発を本気になって追及すると実はそれは極めて豊富な内容を持ってくる。たとえばプルトニウムの分離・備蓄やウラン濃縮は潜在的核兵器開発につながり、核武装ポテンシャルを抑止力とする安全保障政策につきあたる。脱原発はこれと対峙することになり、憲法9条を守る課題を担うことになる。原発事故の発生のおそれにさらされつつ生きる立地地域の住民は平和的生存権(憲法前文、9条)と生命、幸福・人間らしく生きる権利(憲法13条)及び財産権(憲法29条)が侵害される危険に直面している。立地地域住民と電力消費地都市住民には、これらの権利を侵害される者と単に受益するだけの者との不平等が存在し、憲法14条に違反する現実がある。脱原発は、これらを解決することも課題として担うことになる。矮小化だという論は、実は脱原発をエネルギー政策だけの問題に矮小化しているのではなかろうか。

さてプルサーマルの導入経緯は、我が国における反原発運動の歴史とクロスする。このことを簡単に見ておくこととする。

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プルサーマル導入の経緯(2)
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1979年3月28日、アメリカのペンシルヴァニア州スリーマイル島(TMI)原子力発電所2号炉(PWR)で、二次冷却系の主給水ポンプが停止したことに端を発し、いくつかのミスが競合して、冷却材喪失→核燃料メルトダウンとなり、大量の放射性物質が環境に放出された。この事故は、国際原子力機関(IAEA)及び経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)が共同で定める国際原子力事象評価尺度(INES)のレベル5に該当するもので、世界に大きな衝撃を与えた。

TMI事故後、スエーデンをはじめヨーロッパ諸国は、原子力発電依存からの脱却の方向を模索し始めた。アメリカでも安全規制が強まり、原子力発電所建設コストが急上昇したため、電力会社からの新規発電用原子炉発注がストップしてしまった。こうして世界的に原子力発電は低迷期を迎えた。

ところが、日本では、事故後わずか2日の1979年3月30日、原子力安全委員会(前年の1978年10月、原子力委員会から分離独立する形で発足していた。)は、「事故の原因となった二次系冷却水ポンプ1台停止、タービン停止がわが国の原発で起きても、TMIのような大事故に発展することはほとんどあり得ない。」との吹田徳雄委員長談話を発表し、原子力発電の安全性に関する論議を封じ込んでしまった。そして1970年代から1990年代半ばまで、日本の原子力発電は、40基以上、発電設備容量にして4400万Kw以上の原子炉が営業運転を始めるという世界の趨勢に逆行する異常に突出した発展ぶりを示した。

さらに1986年4月26日、ソ連のチェルノブイリ発電所4号炉で、核分裂暴走→大爆発→メルトダウン、放射性物質の大量放出という大事故が発生した。
チェルノブイリ事故に関して、日本の原子力発電を推進する関係者らは、以下のように述べて、同事故は、わが国の原子力発電の安全性を揺るがすものではないと主張し、日本ではチェルノブイリのような事故は発生しないことをキャンペーンした。

① チェルノブイリの原子炉は、黒鉛減速軽水冷却型の炉である。これは冷却材である水にボイド(泡)が発生すると、炉心において、中性子を吸収しなくなり、中性子が増量するので、正の反応度が加わり、暴走しやすいという特性を備えている。これに対して、日本の軽水炉である。こちらは、水が、減速材と冷却材を兼ねているので、ボイド発生により、中性子を吸収しなくなって生じる中性子増量=正の反応度と、減速材として中性子を減速しなくなることによる負の反応度が同時に生じるが、後者の方が大きいのでむしろ暴走を抑える原理・構造となっている。

② チェルノブイリの原子炉には圧力容器も格納容器もないので、事故により、放射性物質は直接放出されてしまうが、日本の軽水炉では、圧力容器と格納容器という二重のバリアがあるので、万一、事故が発生しても放射性物質は放出されない。

③ チェルノブイリはいくつかの運転員の規則違反が重なって重大化したものであり、運転員が規則違反を重ねるソ連の安全文化に比べ、日本の安全文化は格段に優れており、運転員が同様の規則違反を犯すことはあり得ない。

しかし、これに対しては、以下のように反論もなされ、日本国内においても、原子力発電から脱却しようという大きな国民世論を巻き起こり、原子力発電所の新規建設に大きなブレーキがかかることになった。

① 暴走事故の原因となるのは冷却水にボイドが発生する場合だけではない。また暴走事故ではなく、冷却材喪失事故を経てメルトダウンに至るコースもある。地震国日本の軽水炉の場合、こちらの方が問題である。

② チェルノブイリ事故のような大爆発が発生すれば、圧力容器も格納容器も破砕される。日本でもメルトダウン、メルトスルーにより水蒸気爆発が発生すれば、圧力容器も格納容器も吹っ飛ぶおそれがあり、バリアの機能を持たなくなる。

③ それぞれに指摘されている規則違反は、運転員の責めに帰せられるものではなく、実際の状況下においてはそのような行動を防止できるものではない。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を! (9)

私の手元に、核不拡散研究会なる研究会がまとめた昨年2月4日付の「我が国の原子力発電・核燃料サイクル政策への提言~「一国主義」を脱却し、責任あるグローバル・プレイヤーへ~」(最終報告書)なる文書がある。核不拡散研究会がどんな団体か、私は知らないが、代表者として遠藤哲也(IAEA理事会議長)、谷口富裕(前IAEA事務次長)、山地憲治地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)、秋山信将(一橋大学教授)の名前が書かれている。

これによると、核燃料サイクル政策に関しては「徹底した検証、柔軟性・透明性の確保」が謳われ、当面は使用済燃料の中間貯蔵能力の拡充や直接処分を可能にするための法改正など必要案体制整備を行なうこと、技術や人材の基盤の確立・維持に向けた活動を開始することなど「柔軟性」の確保に主眼を置く、国際的な視点からは「利用目的のなしプルトニウムは持たない」など「透明性」の確保が不可欠だと指摘されている。

しかし肝心の核燃料サイクル政策の「徹底した検証」に踏み込んではおらず、結局、当面反省、しかし時期を見て復活を、という日和見主義というほかはないようである。

さて高速増殖炉が、核燃料サイクルの推進力、技術者・科学者の希望の星であったとすれば、これから入っていくプルサーマルは、さしずめ核燃料サイクルの消えゆく灯火、技術屋・科学屋が恋いこがれた幻を追って奏でるエレジーである。

今回は最初に簡単にプルサーマルの説明をし、次にその導入の経緯を述べることとする。

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プルサーマルとはなにか
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軽水炉に、プルトニウムが5%~10%程度、残りは、殆どがウラン238からなるMOX燃料を装荷し、運転することをプルサーマル運転という。軽水炉は、中性子を減速して用いるが、この減速された中性子を熱中性子といい、英語で、「thermal neutron」(サーマル・ニュートロン)という。そこで軽水炉を、別名サーマル炉とも呼び、サーマル炉にプルトニウムを用いることから、プルサーマルと呼称されるのである。
わが国で、現に、実施されているプルサーマルは、炉心に装荷する燃料のうち4分の1をMOX燃料とするというものである。もっとも、現在、青森県下北郡大間町に建設中の大間原子力発電所1号機(電気出力138.3万kWの改良型沸騰水型軽水炉<ABWR>)は、完成・稼働すれば全量MOX燃料が使用される計画である。

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プルサーマル導入の経緯(1) 
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原子力委員会は、第2回長期計画(1961年)において、①核燃料サイクルは、プルトニウムの抽出、利用が目的であり、その中心を担うのは高速増殖炉である、②1960年代末には高速増殖炉の実験炉を建設し、1970年代にはその実用化を目標とする、③これと並行してプルサーマルの実用化をはかるとの展望を示していた。

しかしながら、その後の展開を見てみると、わが国は、ひたすら高速増殖炉の開発、実用化にのめり込み、プルサーマルについては、いわば忘れ去られ、片隅に放置された存在となっていたのである。

長期計画では、ほんの申し訳程度に触れられだけであった(例えば第8回長期計画<1994年>では「軽水炉によるMOX燃料の利用は、将来の高速増殖炉の実用化に向けた実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術の確立、体制の整備等の観点から重要であり、エネルギー供給面で一定の役割を果たすことにも留意しながら、これを計画的に進めていきます。(中略) 軽水炉によるMOX燃料利用は、海外において多くの実績があり、わが国の少数体規模での実証計画において燃料のふるまい等について良好な結果が得られていることを踏まえると、現在の軽水炉でMOX燃料を利用することについては、特段の技術的問題はないと言えます。今後、わが国においては、燃料仕様の共通化等により一層の経済性の向上を目指していくことが重要です。」とされている。)。

現実にも、沸騰水型原子炉(BWR)、加圧水型原子炉(PWR)において、各1回、少数のMOX燃料体を装架して実験を行っただけであった。

ところが1995年12月の事故により、「もんじゅ」が運転停止となり、運転再開のメドが全く立たない状況となって、にわかに事態は急展開した。以下、そこに至る経過を少し追ってみることとする。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を! (8)

脱原発だけが都知事選のテーマではない。それは誰もが分かっている。しかし、それでも脱原発の筋道を誠実に提示し、真摯に、一心不乱に訴えて戦うことには十分な意義がある。原発推進・完全復活は安倍政権の悪政から有意に取り出した指標、これをターゲットとすることにより安倍政権の悪政全体を叩くという発想はあってよいと思う。広い視野で、統一を考えてみるべきだ。脱原発勢力一本化のために宇都宮氏に一方的に降りろという意見は一面的、非常識・非礼だ。しかし宇都宮氏が、細川氏ではダメだといって統一の努力をしないというのも間違いではないか。ここは長幼の序、宇都宮氏から、脱原発の中身を協議し、脱原発(できれば憲法を守る)都政の確立で統一を呼びかけて欲しいものだ。細川氏が、聞く耳持たぬということであれば正々堂々戦えばよい。

さて高速増殖炉破たんの話をまとめておこう。次回はプルサーマル、ようやく核燃料サイクルの話も終わりに近づいた。

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まとめ―高速増殖炉は破綻したが・・・
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「もんじゅ」の事故は、高速増殖炉が未熟で大きな危険のある技術であることを白日の下に曝したのであった。

この間、諸外国は、次々と商用の高速増殖炉開発から撤退した。当初の予測に反してプルトニウムの増殖効果があまり期待できない、コスト高で経済的にも割があわない、安全性の確保に難があることが次々と明らかになったからである。

安全性の問題としては、①高速増殖炉は、燃料であるプルトニウムがウラン235に比べて中性子を吸収しやすく、核分裂を起こしやすいという特性があるため、暴走事故を起こしやすく、一旦暴走事故を起こすと軽水炉のように緊急炉心冷却装置(ECCS)がないので重大事故に発展するおそれが大きいということ、②炉心溶融が起こるとその部分でプルトニウムの濃度が高くなり、核分裂が爆発的に暴走するおそれがあるということ、③冷却材の液体ナトリウムが、配管破断事故の原因を作りやすく、さらに水と反応して爆発炎上し、また水素を発生させて水素爆発を引き起こし、炉心溶融、放射性物質放出事故の原因となるということなどが指摘されている。

わが国においても、「もんじゅ」事故後に策定された第8回長期計画(2000年)において「高速増殖炉サイクル技術の研究開発に当たっては、社会的な情勢や内外の研究開発動向等を見極めつつ、長期的展望を踏まえ進める必要がある。そのため、高速増殖炉サイクル技術が技術的な多様性を備えていることに着目し、選択の幅を持たせ研究開発に柔軟性をもたせることが重要である。(中略)高速増殖炉の実証炉については、実用化に向けた研究開発の過程で得られる種々の成果等を十分に評価した上で、具体的計画の決定が行われることが適切であり、実用化への開発計画については実用化時期を含め柔軟かつ着実に検討を進めていく。」などと、ついに実用化の時期目標さえも打ち出せず、「将来の選択肢の一つ」としてしか位置づけることができなくなってしまった。ここにおいて高速増殖炉の開発・実用化は破綻をしたのである。

その後も2005年の大綱では、「2050年頃から商業ベースでの導入を目指す」として未だ撤退を打ち出せないでいたが、2012年の「革新的エネルギー・環境戦略」では、「『もんじゅ』については、国際的な協力の下で、高速増殖炉開発の成果の取りまとめ、廃棄物の減容及び有害度の低減等を目指した研究を行うこととし、このための年限を区切った研究計画を策定、実行し、成果を確認の上、研究を終了する。」として、ようやく高速増殖炉から撤退することを明確にしたのであった。

ところがである。今回の「エネルギー基本計画原案」は、「『もんじゅ』については、これまでの取組の反省と教訓の下、実施体制を再整備する」とまたまた鎌首をもたげようとしている。このような無謀な企みは断じて許してはならない。
(続く)

核燃料サイクルから撤退を! (7)

都知事選挙の争点を脱原発か原発推進に絞るのはおかしいという意見、いやそうではないという意見。それぞれの理屈は、それぞれに立つ。少し、飛躍があるかもしれないが、大気汚染公害で、大気汚染の指標物質として、かってSoxが、その後Noxが、最近はPM2.5がとりあげられている。大気汚染物質全部を網羅的に測定するのではなく、そうした指標物質に代表させるのである。これと同じように考えることはできないだろうか。安倍政権による現在の悪政の全てを取り上げるのではなく、原発問題を指標とし、これにより悪政全般を代表させるのである。私は、原発問題は、安倍政権の悪政の指標として取り上げ、真正面からそれを問うべき値打ちはあると思う。ただ敢えて言えば憲法を暮らしに生かすということを付け加えるべきかもしれない。なんとか統一して、悪政推進派と闘っても欲しいものだ。

さて高速増殖炉の開発が破綻していることに話を進めていきたいと思う。これは2度にわけた方がよさそうである。

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「もんじゅ」事故までの歩み 
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合理的に考えれば再処理路線は、もはや維持することは不可能なところまできている。それにもかかわらず、わが国政府が、これにしがみついているのは、もはやエネルギー政策の次元を超える安全保障政策に隠れた動機があることは別に論じたところである(前掲「憲法9条から見た原発問題」)。

しかし、他方で純技術屋的・科学屋的には、原子力発電を続けながら、同時に燃えないウラン238を燃えるプルトニウムに転換させ、そしてそのプルトニウムを燃やして原子力発電をしながら再び燃えないウラン238を燃えるプルトニウムに転換させ、燃えたプルトニウムの量を上回る量の燃えるプルトニウムを取り出し・・・、これを繰り返して、本来は、わずか0.7%しか燃える成分を含まない天然ウランを100%燃やし切ってしまおうという「野望」(単純計算で実に142.8倍にしてしまおうというのであるから「野望」という表現はピッタリであろう。)に突き動かされてきたといってもよいだろう。

第1回長期計画(1956年)、第2回長期計画(1961年)には、まだその「野望」は、鮮明にはされていないが、第3回長期計画(1967年)では、使用済燃料再処理によって生産されるプルトニウムを利用する高速増殖炉の開発目標を具体的に「昭和50年代初期に原型炉の運転を開始する」(原型炉とは実験炉の次の段階で、実証炉を経て、実用炉に至る。)、「昭和60年代の初期には実用化することを目標として開発をすすめる」とし、この「野望」は明確な形を示すことになった。

その後、第4回長期計画(1972年)もこれを踏襲したが、第5回長期計画(1978年)は、「昭和70年代に本格的実用化を図ることを目標として、その開発を進める」とややスローダウン、第6回長期計画(1987年)は、「2020年代~2030年代頃における高速増殖炉によるプルトニウムの技術体系の確立を目指す」と少し現実的な見通しを示し、第7回長期計画(1994年)も「2030年頃までには実用化が可能となるような高速増殖炉の技術体系の確立を目指す」とほぼ同様の見通しを示している。 

実務面においても、1967年、高速増殖炉の研究、開発を行うために動燃が創設された。動燃は、長期計画に沿って、1971年1月、茨城県茨城郡大洗町に、高速増殖炉・実験炉「常陽」の建設を始め、1977年4月に臨界達成、1985年、福井県敦賀市に、高速増殖炉・原型炉「もんじゅ」の本体工事を始め、1994年4月に初臨界達成と、高速増殖炉の開発計画は、若干の停滞、遅延が見られるものの、着実に前進しているように見えた。

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「もんじゅ」の事故と運転停止
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着実に前進していたかに見えた高速増殖炉の開発の目論みは、思わぬところからほころび始めた。初臨界を達成した後、僅か1年半余りしか経っていない1995年12月、「もんじゅ」に重大事故が発生したのである。

「もんじゅ」の事故は、二次冷却材配管部から、液体ナトリウムが漏出したというものであった。漏出したナトリウムは約0.7トン。空気中の酸素と化合して火災事故を起こしたのである。そればかりか液体ナトリウムは、床面コンクリートを覆っていた厚さ6㎜の鋼製床ライナーに腐食作用を起こし、穴をあける寸前のところであった。もし穴があいてしまっていたら、コンクリート中の水と反応し、水素ガスの大量発生、そして水素爆発へと進展し、大惨事を引き起こす危険もあったのである。まさに危機一髪の状態であった。

事故原因は、配管に差し込んだ温度計のさや管が破損したことである。何故破損したのかというと、さや管の細管部に、循環する液体ナトリウムが繰り返し振動を与え(流力振動)、取り付け部に金属疲労が生じ、破断をしたというのである。つまりさや管の設計に初歩的なミスがあったのである。なんとおそまつなことか。

以来、「もんじゅ」は、15年間にわたって運転が停止されたままであったが、2010年5月、運転再開。しかし同年8月、燃料集合体を装荷、取り外しをするための重さ3.3トンの炉内中継装置が炉内に落下、またまた運転停止してしまい、ようやく2011年6月23日に、これが引き上げられ、事業者(独立行政法人日本原子力研究開発機構)は運転再開の機をうかがっていたが、2012年11月、保安規定に基づく機器の点検漏れが9769件あったとして原子力規制委員会が立ち入り・保安検査する、2013年2~3月にも、非常用発電機などの重要機器で13件の点検漏れ、虚偽報告が発覚するなど不祥事が相次ぎ、同年5月29日、原子力規制委員会は原子炉等規制法に基づき、「もんじゅ」の無期限の運転禁止を命じている。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を! (6)

核燃料サイクルのバックエンド、使用済燃料の再処理について論じてきたが、ここで一応そのまとめをしておくこととする。これだけでも核燃料サイクルが砂上の楼閣であることは明らかであるが、核燃料サイクルの推進力とされる高速増殖炉とその陰の存在ともいうべきプルサーマルについても、一通り述べることにより、核燃料サイクルを完膚なきまでに粉砕しなければ気が済まなくなってきた。手抜きせず、もう少し続けていくこととする。

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使用済燃料再処理まとめ
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ここまで述べてきたところから明らかであろうが、使用済燃料の再処理は、膨大なコストを要し、再処理から高レベル放射性廃棄物の処分に至るまで各プロセスにおいて大きな危険を抱えている上に、再処理施設や附帯設備の建設、整備も、現実の要請にはとても追いつかず泥縄状態にある。

しかも再処理工程ではき出されるガラス固化体を30年~50年間貯蔵するという貯蔵施設の貯蔵能力もごくわずかであり、最終処分地に至っては候補地選定作業の第一段階の入口ではやくも頓挫を来たしてしまっている。

まさに八方ふさがりである。これらに加えて、再処理路線を推し進めることにより、結果として、大量のプルトニウムを備蓄してしまうことになり、核拡散をめぐる国際的軋轢をかかえ込まなければならないことになる。

アメリカでは、1980年代に、経済性と核不拡散を理由に、建設途中のバーンウェル再処理工場の建設を放棄し、ワンススルー路線をとることをより明確にした。ドイツも、バッカースドルフ再処理工場を建設中に、安全対策のために設計変更を余儀なくされ、建設費が当初見積に比べて3倍となってしまったため、1989年、その建設を放棄し、再処理路線をやめた(さらに、その後、原子力発電そのものをやめる方針を明確にした。)。イギリスは、再処理路線を採用しているが、再処理のコストが高いことが一因で、経営危機に陥っている原子力発電事業者もあるという。

こうした客観的困難及び国際的趨勢にもかかわらず、大綱において、安全性、技術的成立性、経済性、エネルギー安定供給、環境適合性、核不拡散性、海外の動向、政策変更に伴う課題、社会的受容性、選択権の確保などを検討した結果として、①過去の技術的知見の蓄積、②エネルギー安定供給、③環境適合性などにおいて再処理路線が優れているとし、再処理路線を堅持することを確認し、その後、逐次のエネルギー基本計画においても、使用済燃料再処理の推進を謳ってきた。

2012年9月策定された「革新的エネルギー・環境戦略」において「直接処分(注:ワンススルー)の研究に着手すると、ようやくにして重い腰を上げたと思ったら、今回のエネルギー基本計画(原案)では、先祖がえりを果たそうとしている。今、これを許せば、政治家、経産官僚、日本原燃はじめ核燃料サイクル関連企業・電力事業者の政官財トライアングルが息を吹き返すことになってしまうのだ。

ついで高速増殖炉に話を進めることとするが、今日は、高速増殖炉とはどんなものかを説明するにとどめることとする。

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高速増殖炉とはどのようなものか
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高速増殖炉とは、核分裂により放出された中性子を減速せず、高速中性子のまま用いるので「高速炉」、また運転中に燃えた核分裂性のウランやプルトニウムよりも多くの核分裂性のプルトニウムを生産することを目的として設計されているので「増殖炉」、両者をつないでそのように呼称されるのである。

まず高速増殖炉で使用される核燃料は、プルトニウムが15%~20%程度、残りは、殆どが核分裂をしないウラン238からなるMOXである。だから、このMOXは、プルトニウムそのものが核燃料となるのだと考えてよい。

核分裂性のプルトニウムは、ウラン235よりも中性子を吸収しやすく、核分裂をおこしやすいという特性がある。一方、ウラン238は高速中性子をよく吸収するという特性がある。こうした特性を利用し、高速中性子を効率的に吸収して核分裂を引き起こすように炉心中心部に密集してMOX燃料を配置し、炉心中心部で進行する核分裂により放出される中性子が炉内から漏れ出すのを防ぎ、むしろ効率よくウラン238に吸収されるように炉心外周部にウラン238からなるブランケット(blanketは毛布。厚手の毛布のように覆いをするものという意味であろうか。)で囲いをする。

こうして、理屈の上では、効率よくウラン238はプルトニウムに転換されることになる。まるで「打ち出の小槌」のようにプルトニウムをつくりだし、限られた量のウラン235に代替できるプルトニウムを増殖することができることになる。

軽水炉では、普通の水が、減速材でもあり、冷却材でもあった。高速増殖炉では、減速材は使われない。冷却材には、ナトリウムが使用される。ナトリウムは、常温では銀白色の柔らかい固体で、常圧のもとでは、融点が98℃、沸点は882℃である。そこで、融点をこえて熱せられ、液体となったナトリウムが冷却材として用いられるのである。

液体ナトリウムは、以下述べる理由から、高速増殖炉の冷却材として、願ったりかなったりの優れものである。第1に、液体ナトリウムは、常圧であっても沸点が882℃と非常に高いので、150℃~700℃の広い範囲で、安定した冷却材として使用できる。第2に、ナトリウムは、いくつかの原子が結合してできる分子ではなく、単原子であるから、原子炉容器内での放射線照射によっても変性しない。第3に、ナトリウムは、熱しやすく、冷めやすいので熱伝導性に優れている。第4に、これも重要なことだが、ナトリウムの原子核は、陽子が11個、中性子が12個からなる質量23の重いものであるから、これに中性子があたっても、あたった中性子は減速しない(コンクリートにぶつけたボールが強く跳ね返るのと同じと考えてよい。)。第5に、ナトリウムの比重は、0.98で、水よりも僅かに小さいので、液体状態では、ポンプで循環させ易いということ、さらに言えば値段が、割と安いということも挙げられる。

高速増殖炉の冷却材は一次冷却材と二次冷却材とに区分される。原子炉容器内の炉心をひたす液体ナトリウムが一次冷却材である。その一次冷却材が循環し、原子炉容器から出て、格納容器内の熱交換器に至り、格納容器外から循環してくる液体ナトリウムである二次冷却材に熱を引き渡す。原子炉容器内の一次冷却材は、核分裂の熱を奪い、500℃を超える温度になっているが、二次冷却材に熱を引き渡すことにより自らは冷却される。一次冷却材から熱を引き渡された二次冷却材も、500℃程度になる。そして二次冷却材は、格納容器外の熱交換器(蒸気発生器)において、外から循環してきた水を熱し、蒸気を発生させ、自らは冷却される。ここで発生した蒸気が、タービンを回して発電をする(一次冷却材、二次冷却材、水、蒸気の循環の仕方は、わが国が採用したループ型高速増殖炉に即して説明したが、他の型式のものも基本原理はかわらない。)。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を! (5)

最近は、公共図書館にもパソコン・スペースが用意されている。便利になったものだ。まわりの閲覧スペースを見ると大学受験生が多いようで、最後の追い込みに捻りはちまきで頑張っている。若いということはいいことだ。希望通りの大学に入って、大いに勉強して欲しいものだ。私も、天皇制の勉強にもっと身を入れよう。
話は使用済燃料再処理の問題点の続き、高レベル放射性廃棄物の問題に入っていくこととする。

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使用済燃料再処理の問題点 その2  
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高レベル放射性廃棄物の問題である。
使用済燃料の再処理工程で、①fpを溶解した硝酸液、②半減期の長いアメリシウム、キュリウムなどウランよりも原子番号が大きい超ウラン元素(Transuranium Elements)の核種を含む放射性物質(「TRU廃棄物」と呼称される。)及び③剪断されたジルカロイ被覆管の破片やその他の使用済燃料付随物などの放射性物質が発生する。これらのうち、①は濃縮してガラス溶融炉でガラスと混合し、直径約40㎝、高さ約1~1.3m、厚さ5~6㎜のキャニスターと呼ばれる円柱形のステンレス製容器に流し込んでガラス固化体に成形され(ステンレス製キャニスターと一体化したものが「ガラス固化体」である。)、②はアスファルト固化処理もしくはガラス固化処理が行われる。

そして①については「最終処分法」によって第1種特定放射性廃棄物(同法2条8項)として、②については同じく第2種特定放射性廃棄物(同法2条9項)として、それぞれ「最終処分を計画的かつ確実に実施させるために必要な措置等を構ずる」(同法1条)こととされている。また③は、低レベル放射性廃棄物に分類され、原子炉等規制法に定める廃棄事業の規制対象とされている。

以下に述べるのは、上記のうち、②、③は省略し、①に関してのみである。なお、以下では、①のことを、「最終処分法」による第1種特定放射性廃棄物なる用語を用いず、通常の用語例に従って高レベル放射性廃棄物といい、場合によってはガラス固化体と言い換えることもある。

さて、第6回長期計画(1987年)において、原子力委員会は、はじめて高レベル放射性廃棄物を「地下数百メートルの深い地層中に処分する」との基本方針を打ち出した。その後2000年6月、「最終処分法」が制定され、同年11月施行された。現在、それに基づき、「ガラス固化体は、30年~50年間貯蔵して、発熱量の低下、放射能の減衰を待ち、順次、安全性を確認しつつ最終処分する」こととされている(2008年3月14日閣議決定)。

貯蔵する場所は、日本原燃の六ヶ所高レベル放射性廃棄物貯蔵センターである。ところが同センターは、1995年4月から受け入れを開始しているものの、貯蔵容量は1440本に過ぎず、既に上述したフランスとイギリスへの再処理委託使用済燃料のガラス固化体(再処理委託契約において返還されることになっていたもの)1338本を受け入れたものの、フランスとイギリス及び国内で再処理した使用済燃料は上述のとおり合計約8200トンであったので、これはそのほんの一部に過ぎず、まだまだ搬入される筈で、既にしてパンク状態である。そこで、急遽、貯蔵容量を倍の2880本にするための増設工事がなされている状況、まさにこれも泥縄である。

しかしながら、既に見たように使用済燃料は、現時点でも各原子力発電所内に約13500トン、六ヶ所再処理工場に約2800トン、合計約16300トンも貯まっており、またさらに、今後、これまでどおり原子力発電を続ければ全国の原子力発電所で毎年およそ1000トン発生すると想定されているのである。ガラス固化体は、使用済燃料1トンにつき1本できるとされているので、これらを全量再処理すると、実に、現在ある使用済燃料だけでもおよそ16300本、そして、今後、毎年およそ1000本発生することになる。一体、どのような計算をし、どのような計画がなされているのであろうか。

ところで、ガラス固化体は再処理工程において発生するものであるが、使用済燃料が炉心から取り出されて再処理工程にまわされるまでは4年以上もの長期の冷却貯蔵期間がある。そんなに長期間の経過にもかかわらず、日本原燃で作られることになっている直径約40㎝、高さ約1.3m、重量約500㎏程度の決しておおぶりとはいえないガラス固化体は、成形された直後には、およそ2万テラ・ベクレル(1テラは1兆)もの放射能を持ち、その表面付近において、実に約1500シーベルト/時ものガンマ線が計測されるほどに超高レベルの放射線を放出しており、50年後でも放射能は5分の1程度、表面の放射線レベルは9分の1程度にしか下がらず、数万年後に至って、ようやく、もとのウラン鉱石のレベル程度になるとされている。また発熱量も大きく、100年経過しても表面温度は200℃近いといわれている。

前述の閣議決定では、30年~50年間、高レベル放射性廃棄物貯蔵センターに貯蔵し、発熱量の低下、放射能の減衰を待ってから、最終処分するとのことであるが、その最終処分とは、「最終処分法」によると、地下300m以上の深さの地層において、飛散、流出、地下に浸透することがないように必要な措置を講じて埋設することとされている(同法2条2項)。具体的には、安定した岩盤(天然バリア)と人工的な障壁(ガラス固化体を厚さ19㎝の炭素鋼製オーバーパックに封入し、オーバーパックと地層との間に粘土質のベンナイトと呼ばれる緩衝剤を充填するのだそうだ。ガラス固化体、オーバーパック及び緩衝剤を三つを称して人工バリアという。)。そして100年間にわたって受け入れた後、埋め戻して完全に閉鎖を、人々の生活圏から遮断をするということになっている。

しかしながらそのようなことで、飛散、流出、地下への浸透を防ぎ、はるかな未来においても、環境汚染を防ぎ、人々に放射性物質による被害が及ぶことを防ぎきることが果たして可能であろうか。ガラス固化体の前述の性状を考えるとおおいに疑問がある。

「最終処分法」の制定、施行にともない、2000年10月、最終処分事業を実施する主体として、電気事業連合会が中心となって、経済産業大臣の認可法人である原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。そのNUMOの手により、2002年から、最終処分地の立地選定作業が進められている。しかしながら、電源三法交付金制度により、原子力発電所の場合よりもはるかに有利な交付金、補助金を交付するという露骨な利益誘導をしているにもかかわらず、立地選定作業は遅々として進まず、三段階に及ぶ選定段階(注:立地選定作業は、第1段階が概要調査地区の選定、第2段階が精密調査地区の選定、第3段階が建設地の選定と3段階のプロセスを経て行われる。)のうち、第一段階の概要調査地区選定のための文献調査候補地区への公募に応募したのは、高知県東洋町のみで、それさえも地元住民の反対運動により、すぐに撤回されるなど、惨憺たるありさまである。
(続く)

核燃料サイクルからの撤退を! (4)

コツンと頭をたたかれたような不快な感覚を覚えて、目を醒ました。何か嫌な夢を見ていたようだが、どんな夢であったか思い出せない。今日は、日曜日。ちょっと出鼻を挫かれたようである。
使用済燃料再処理の問題点に話を進めることとする。

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使用済燃料再処理の問題点 その1
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使用済燃料には、核分裂性のウラン235、プルトニウム239、241が合計しておおよそ2%含まれている。fpも3%程度含まれている。六ヶ所再処理工場の使用済燃料貯蔵プールに、3000トンもの膨大な量の使用済燃料が搬入されるとなると、60トン近くもの核分裂物質と、およそ90トンものfpが集積されることになる。そのために地震による貯蔵プールの破壊、電源喪失などが生じれば、使用済燃料の損傷・破壊、メルトダウン、再臨界、大量の放射性物質の放出など、大事故発生の危険性があることが、つとに指摘されてきたところである。

また再処理工程においては、揮発性fpの大気中への放出、fpを含む廃液の海への流出のなど、放射性物質による環境汚染が危惧されるほか、腐食性の強い硝酸、引火性の強いドデカンが用いられるため、化学爆発事故を起こす危険も指摘されている。

さらに使用済燃料再処理に要する費用は、総括原価方式により、結局は電気料金に跳ね返り、全て国民が負担しなければならないことになる。現在までの、六ヶ所再処理工場の建設費は、上述のとおり、2兆1,930億円、1989年に再処理事業の指定申請がなされた当時の建設費用予定額のおよそ3倍となっている。しかし、これとてもこのままでおさまるとは考えられず、これまでの経過から見て、さらに膨れあがる可能性が大きい。

加えて将来発生する再処理工場の操業や廃止に要する費用は約11兆円が見込まれている(2003年11月11日に開かれた総合エネルギー調査会電気事業分科会に提出された電気事業連合会のペーパーによれば、バックエンドに要する費用は約19兆円、うち、再処理工場を40年間稼働し、廃止するものとしてその間の操業及び廃止の費用は約11兆円とされている。)。

この約11兆円という数字も、当初年210トン/年の処理能力をうたっていたが、実際には、事故や故障続きで、20年余りの間におよそ1,000トン、計画処理能力の4分の1の処理しかできず、事故対策や故障修理で多額の費用を費やしてきた東海再処理工場の実績に照らせば、同じように事故対策や故障修理で多額の追加費用の支出を余儀なくされ膨れあがっていくことは目に見えている。

何せ、電力会社は、いくら費用を費やしても全て電気料金で回収できるのだから、湯水の如く支出をしても痛痒を感じない。好き勝手のしほうだいで、何らの抑制も働かないのである。

そして何よりも重大な問題は、大量のプルトニウムが備蓄されていくことである。現時点での備蓄量は、海外委託分と国内分をあわせて、全量およそ45トン(うち核分裂性のプルトニウムだけで30トン以上と推計される。)である。仮に六ヶ所再処理工場が、2015年1月以後、フル稼働して年800トンの使用済燃料を再処理していくとすると、プルトニウムは、年8トン程度ずつ蓄積していくことになる。

前述のとおり、アメリカとの合意により、プルトニウムは、MOXの形で取り出されることになっているが、これは化学的処理によっていつでも純粋なプルトニウムに転換できる。

わが国は、核不拡散条約(NPT)により、国際原子力機関(IAEA)の厳格な保障措置を受け入れているので、わが国自身が直ちに核保有をするといった事態は、当面、考えなくてもよいかもしれないが、わが国周辺国の疑念は消せないだろうし、これら諸国にプルトニウム保有への願望をかきたてることにはなるだろう。実際、わが国政府は、1991年、IAEA総会において「核燃料サイクルの推進に当たって必要な量以上のプルトニウムを持たないようにする」ことを宣言し、国際公約をせざるを得なかった。

さらにはテロリストのターゲットになるおそれもある。

わが国が使用済燃料の再処理路線をとり続ける限り、それは核拡散につながる危険性を孕んでいると言わざるを得ない。

なお、私は、わが国が再処理路線を取り続けることは、単にエネルギー政策の問題にとどまるものではなく、プルトニウムの生成・備蓄・加工技術の開発こそが目的であると考えるものである。原子力の平和利用(原発推進)と宇宙ロケット開発こそが核武装ポテンシャルの要諦をなすものであり、わが国は核武装ポテンシャルを抑止力とする安全保障政策を確立しているのである(私の論文「憲法9条から見た原発問題」http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml)。‎
(続く)
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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