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「一般の人は『特定秘密』に触れることはありません」・・・これ本当?

自民党のWEB版ニュース「The Jimin NEWS」No167(以下「ニュース167」という。)は、昨年12月1日付「朝日」朝刊がとりあげた以下のケースをやり玉に挙げている。

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ケース

A子さんはB男さんは大学時代の同窓会で再会した。A子さんから「今何しているの」と尋ねられ、B男さんは「防衛産業で・・・」と近況報告を始めた。

「もっと聞かせて」とA子さんに促され、酔ったB男さんは「ミサイルを研究していてね。実はあまり知られていない話だけれど」と続けた。数年前、北朝鮮から発射されたミサイルが途中で失速して海に落ちたが、「もし失速していなかったらこの辺に落ちていたかもしれないよ」と披露。

翌日、A子さんはブログに「同窓会で再会したB男さんビックリする話をしてくれた」と書き込んだ。ある防衛マニアがブログを見て、「ミサイルの飛ぶコースを推測して描き、ネット上で拡散させた」

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ニュース167は「このような場合A子さんが処罰の対象となることはありません」と断じ、ご丁寧にも「このような安全保障についての政府の重要情報は、『特定秘密』として厳重に管理されていますので、一般の方が、偶然触れることはあり得ません。」とまで書いている。


これは本当だろうか。答えは、「明白なウソ」、である。


まず、本件の対象となる情報は、秘密保護法別表1のロ、ハにより、特定秘密に指定されること(安倍首相が参議院特別委で「ミサイルの軌道計算を民間にやってもらうことはある。そこには守秘義務がかかる。」と答弁している。)、B男さんは防衛産業の勤務先で、北朝鮮のミサイルの軌道計算もしくは関連の業務(特定秘密取扱業務)に従事し、落下地点の予測情報を知得していた(業務上特定秘密知得者である)ことが大前提である。これらの点はニュース167も特に反論をしていない。

そこで本件においてはB男さんが、秘密保護法のもとでは特定秘密漏えい罪に該当し、10年以下の懲役(情状により10年以下の懲役及び千万円以下の罰金)に問われることになるだろう。一方、A子さんは、酒に酔って調子に乗ったB男さんに「もっと聞かせて」と促し、情報を取得したことが「特定秘密漏えい教唆」(もしくは「特定秘密不正取得」)にあたるかどうかを検討しなければならない。
ニュース167はA子さんに問題の情報が特定秘密であることの認識がないから「故意」がないと安易に断定をしている。しかし、これは捜査過程で「故意」がどのように自白させられているか、或いは刑事裁判において「故意」がどのようにして認定されるのかという捜査、裁判実務を全く無視した子供だましの議論と言わねばならない。

「故意」には確定的故意と未必の故意がある。たとえば人を包丁で刺した場合、「殺害することまでは考えていませんでした」といくら弁明に努めても、使用凶器が刃体の長さ30㎝の刺身包丁だったりすれば「腹部を刺せば死ぬかもしれないとは思いましたが、怒りにまかせてどうでもいいやと思って刺しました。」などという自白をとるのは捜査官のお手のもの、裁判になってから争っても裁判所は、「殺害する」との確定的故意は認めなくても「刺せば死ぬかもしれない」との認識・認容はあったとして、未必の殺意を認定してしまうのである。

本件では、練達の捜査官にかかれば、A子さんは、B男さんが酔っているのを幸いにもっと聞かせてと促し、北朝鮮ミサイルの落下地点の話を聞き出したのだろうと追及され、「B男さんは防衛産業に勤務していること、北朝鮮のミサイルの落下地点などということは新聞、テレビでも一切報道されておらず、破壊命令が出ているかどうかの問いにも防衛省は答えられないとの一点張りであったことなどから、これは我が国の安全保障にかかわる重要な情報であり、ひょっとすれば特定秘密に指定されているかもしれないということはわかりました。それでも抑えきれず、B男さんが酔っているので話を続けさせようと思いました。」というようなことをA子さんに自白させることはいとも簡単なこと、裁判所もその自白を認めてしまうことは十分に考えられる。そうするとA子さんは、「特定秘密漏えい教唆」に該当し、5年以下の懲役(そのような情報をブログに書き込むことは「我が国の安全を害する目的」があったと認めさせられて「特定秘密不正取得罪」にあたるとされるおそれもある。その場合には10年以下の懲役(情状により10年以下の懲役及び千万円以下の罰金))に問われることになる。

仮に、幸運にして、A子さんの犯罪が不成立であっても、A子さんは被疑者として、或いはA男さんの重要な参考人として厳しい取り調べが待っていることであろう。

ニュース167は「このような安全保障についての政府の重要情報は、『特定秘密』として厳重に管理されていますので、一般の方が、偶然触れることはあり得ません。」とも書いている。特定秘密の物的管理が徹底し、門外不出と言うならば重罰を科する秘密保護法など不要ということになる。これもまたウソではあるが、無意識のうちに秘密保護法の本質を抉り出していておもしろい。国家にどうしても一時的、例外的に秘匿すべき情報があることは確かであろう。しかしそれらを保全するのに、秘密保護法のような重罰規定を伴う底引き網を設置するのではなく、各行政機関において事務的に情報管理を徹底することにより達成することができるのである。秘密保全は、現行の法制と「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」に基づく人的・物的管理は必要にして十分、否過保全の状態にある。秘密保護法を廃止しても何ら差しさわりは生じない。

                                                 以上

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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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