核燃料サイクルからの撤退を! (1)

昨年12月、経産省は「エネルギー基本計画(原案)」をとりまとめた。形通りのパブコメ募集を経て、政府は、今月中にもこれを閣議にかけて承認する予定である。

「エネルギー基本計画(原案)」によると「核燃料サイクル政策の着実な推進」を掲げ、「プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を着実に進める。また、国際公約に従ってプルトニウムの適切な管理と利用を行うとともに、米国や仏国等と国際協力を進めつつ、高速炉等の研究開発に取り組む。もんじゅについては、これまでの取組の反省と教訓の下、実施体制を再整備する。その上で、新規制基準への対応など稼働までに克服しなければならない課題への対応を着実に進めるとともに、もんじゅ研究計画に従い、高速増殖炉の成果のとりまとめ等を実施する。」とある。

これは総合資源エネルギー調査会基本政策分科会作成名義の「エネルギー基本計画に対する意見」という形をとっているが、実際には経産省資源エネルギー庁の官僚の手になるものである。半藤一利氏は、昭和史を振り返って、日本の軍部・官僚は、「起きると困ることは起きないこととする」、「敗北(失敗)を率直に認めないことにより、さらなる敗北(失敗)の原因としてしまう」という性癖を有していたと総括している(「昭和史」戦前篇・戦後篇 平凡社ライブラリー)。これは原発政策にもあてはまるようである。まことに日本の官僚は、懲りない面々というほかはない。

なお同分科会メンバーの幾人かが、少数意見の付記を求めたところ、三村明夫分科会長・新日鐵住金㈱相談役名誉会長が、「恥ずかしい」と言って切り捨ててしまった。呆れるばかりである。この御仁は、少数意見が付された最高裁判決を「恥ずかしい」ものと、お感じになるのであろうか。少数意見は「恥ずかしい」、全員一致が美しいとなると、これはファッシズムである。

この原案が同分科会で確認されたのが12月6日、それから一週間余り後の18日に原子力規制委員会が策定した原発以外の核処理施設の規制基準が施行された。これを待っていたかのように、今月7日、日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)は、六ヶ所再処理工場及びMOX燃料加工施設の稼働に向けて、新規制基準への適合性審査を申請した。日本原燃は、審査期間を半年間と見積もり、今年10月には工場完成、地元自治体との協議を経て、早期稼働を目指しているとのことである。

私は、先に「核燃料サイクル政策の着実な推進」に強く反対する意見をパブコメ募集に応じて提出したが、あらためて核燃料サイクルの問題点を抉り、速やかに撤退するべきことを、何回かにわけて論じてみることとする。

しばらく核燃料サイクルに関する基礎的事項をおさらいしてみたい。

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プルトニウムの生成
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天然ウランの99.3%を占めているウラン238は核分裂しにくいので、原爆の材料となるわけでもなく、原子力発電の燃料となるわけでもない。重い(原子核には陽子が92個、中性子が146個あるのだから重いのは当然である。)だけで放射線を発する有害無用の物として廃棄される、もしくは劣化ウラン弾の材料となるくらいのものなのであろうか。実は、そうではない。

ウラン238は、中性子を吸収すると、核分裂はしないが、ベータ崩壊(中性子が電子を放出して陽子に転換することをベータ崩壊という。ベータ崩壊により放出される電子線がベータ線という放射線である。)を繰り返すことよってプルトニウムとなる。できあがるプルトニウムは、原子核中にある陽子が94個(原子番号は94)であるが、中性子の吸収具合やベータ崩壊の進展の違いによって、原子核中の中性子の数は144個乃至148個となる5つの同位体からなっている。プルトニウム238、239、240、241、242である。これら同位体の中では、プルトニウム239が主たる部分を占め、これとプルトニウム241とが、核分裂性で、同じく核分裂性のウラン235よりもより核分裂を起こしやすいという特性をもっている。

核分裂性のプルトニウム239と241の構成比を93%乃至94%程度に高めたものが核兵器級プルトニウムといわれ、核兵器の原料となる。全ての核保有国はこのような高純度のプルトニウムを生産するための原子炉を持ち、設備を持っている。

わが国では、通常、ウラン235が3%、ウラン238が97%の低濃縮ウランを原子力発電の燃料として用いているのであるが、原子炉の装荷した燃料を約3年間燃やすと、おおよその話であるが、もともとあった3%のうちの2%分のウラン235が燃えて消滅し、97%のうちの2%分のウラン238がプルトニウムに転換し、さらに転換してできたプルトニウムの半分が燃えて消滅する。そして取り出される使用済燃料中に残るのは、ジルカロイ被覆管や付随物は別として、およそ、ウラン235が1%、プルトニウムが1%、ウラン238が95%、核分裂生成物(fission product。以下「fp」という。)が3%で、全体質量は当初と比べてさほど目減りはしない。なお、使用済燃料中に残留するプルトニウムのうちのおよそ70%が核分裂性である。

わが国の原子力発電所では、通常、約1年のサイクル(電気事業法第54条、同法施行規則第91条によると、原子炉は、運転開始日もしくは前回検査終了日から一定の時期・・・従来は、13ヶ月を超えない時期とされており、運用上はおおむね1年であったが、2009年1月からは、プラントの特性に応じて経済産業大臣の認可を得て、13ヶ月を超えない時期、18ヶ月を超えない時期、24ヶ月を超えない時期を選択することができることとなったので今後はもっと長くなると予想される・・・までに経済産業大臣の検査を受けなければならないとされている。これを定期検査という。ここでいうサイクルとは、前回定期検査終了日から次の定期検査に入るまでの期間であり、原子炉の運転継続期間のことである。なお、この定期検査の際に燃料の入れ替えが行われる。)で、原子炉炉心に装荷された燃料を3分の1ずつ交換している。その際に取り出される使用済燃料は、上に述べた約3年間燃えた後の燃料であるが、電気出力100万kwの原子炉の場合、それは約30トンに達する。その成分は、おおよそ、ウラン235が300㎏、プルトニウムが300㎏(うち核分裂性のものは約210㎏)、fp900㎏(900㎏のウラン235もしくはプルトニウム239・241の核分裂の燃えかすである)、ウラン238が28.5トンである。

因みに、広島に投下されたウラン原爆「リトルボーイ」に使用されたウラン235は数十㎏、長崎に投下された「ファットマン」に使用されたプルトニウム239は6㎏余り、「リトルボーイ」ではそのうち800g~1㎏程度が核分裂を起こし、「ファットマン」ではそのうち600g程度が核分裂を起こしたと言われている。
上に述べた使用済燃料中にあるウラン235の量、核分裂性のプルトニウムの量、fpの量がいかに膨大なものかわかるであろう。
(続く)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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