核燃料サイクルからの撤退を! (12)

名護市長選の結果に快哉を叫んでいる人は多いだろう。この勢いで都知事選も脱原発派の統一で勝利したいものだ。

宇都宮氏は、「都知事選は脱原発の最後のチャンスだと言って一本化を求めている人たちいるが、その最後のチャンスがつぶれたらあきらめるのですか」と語気を強める。確かにそうだ。しかし、それでも敢えて問いたい。歴史には転換点というものがある。その転換点を的確にとらえ、歴史を前進させる方向に向けて舵を切るということが必要だ。過去の言動や実績に目を奪われ、現在どうなのかを確かめずに、細川氏を頭からダメだとはねつけ、協議しようとすらせず、今まさに原発再稼働と完全復活に向けて怒涛のごとく押し寄せる荒波に、脱原発の声を結集して立ち向かう努力をしないのは間違いではないかと。

昔、こんなことがあった。1936年12月召集の第70帝国議会・衆議院本会議において、政友会・浜田国松議員は2.26事件で皇道派が解体したあと、統制派が陸軍を掌握し、高まる軍部ファッショに抗して、軍部を激しく攻撃した。浜田議員は、寺内寿一陸軍大臣の恫喝に一歩も引かず、かの有名な「割腹問答」の応酬をした。浜田議員は、軍部の言いなりになる広田弘毅内閣を退陣させるために挑発したのであった。怒りの持って行き場のなくなった寺内陸相は、広田首相に衆議院解散を迫ったが、広田首相は内閣総辞職を選んだ。

そこで軍部ファッショと戦争路線に反対する政友会・民政党は、稀代の風見鶏と言われた宇垣一成元陸軍大臣・前朝鮮総督の担ぎ出しに乗り出し、宇垣も反軍部ファッショの覚悟を固めて、出馬の意思を固めた。そして天皇から宇垣に組閣命令を出され、反軍部ファッショ・平和の人民戦線「的」内閣の成立が現実のものとなろうとした。しかし、実にこのとき社会大衆党は、陸軍の進める広義国防路線は、勤労大衆の生活向上を目標としているとして陸軍と結び、宇垣内閣の成立に反対した。結局、陸軍の宇垣内閣には陸軍大臣を出さない強硬策を打ち破るだけの情勢熟さずで、宇垣内閣は幻と消えた。かわって陸軍の支持を得た林銑十郎元陸軍大臣(満州事変の朝鮮軍司令官。朝鮮軍を独断動員した越境将軍の異名をもつ。)が組閣、文字通り軍部独裁政権となった。これが軍部を勢いづけ、1937年7月7日の盧溝橋事件、そして日中全面戦争に突入する転換点となった。

だからとどうだというわけではないが、きれいごとを言って大局を見誤ってはならないことを示す歴史の一例として頭の片隅に置いては欲しいものである。

さてプルサーマル。どうしてこれを導入しようと言うのであろうか。

***********************
プルサーマル導入の論拠は?
***********************
   
ところでプルサーマルを実施する論拠として、政府(経産省・資源エネルギー庁)、原子力委員会及び電力会社は、①ウラン資源の有効利用、②余剰プルトニウムを持たないという国際公約の実行、③高レベル放射性廃棄物(本節では使用済燃料そのものも「高レベル放射性物質」という。)の発生量を少なくすることができる、の3点をあげていた。しかし、これらは、以下に述べるとおり成り立たない。

順不動になるが、まず②の論拠について。これは要するに使用済燃料再処理によって、自ら意欲してプルトニウムを抽出、備蓄をしておきながら、余剰プルトニウムを持たないとの国際公約を口実にして、備蓄したプルトニウムを減らすためにプルサーマルを実施するのだという奇妙な理屈であり、反論にも値しない。まじめに議論をするなら再処理路線そのものを再検討するべきであろう。

次に③の論拠について。ワンススルーする場合には使用済燃料全量が高レベル放射性廃棄物となってしまうのに比べて、再処理によって高レベル放射性廃棄物の発生量は減ることになることは、理屈の上ではそのとおりであろう。しかし、それはプルサーマルの燃料としたMOXの使用済燃料を繰り返し再処理する場合にはじめて言えることである。現実にはプルサーマル運転後に発生するMOX使用済燃料(ウラン燃料の使用済燃料よりも放射能が強く、崩壊熱も高い。)を再処理する技術は確立されておらず、そのための再処理施設建設は計画されていないのでMOX使用済燃料はワンススルーで処分されることになる。そうすると計算上は当初の使用済燃料から分離抽出されたわずか1%相当分のプルトニウムがプルサーマルで消えるのみであとはそのまま残り、高レベル放射性廃棄物の発生量は殆ど減らないのである。のみならず既に述べた再処理をしたことによりガラス固化体という始末に負えない危険な物質を残すことになる。
なお付言するに、③の議論は、使用済燃料の取扱いについて、再処理路線をとるかワンススルー路線をとるのかという問題であって、プルサーマル導入の論拠として無理にこじつけようとしているに過ぎないように思われる。

①の論拠についてはどうか。経産省・資源エネルギー庁の2001年11月作成の「核燃料サイクルのエネルギー政策上の必要性について」と題する説明資料において、濃縮度4.1%のウラン燃料1000㎏を燃やす→それにより生じる使用済燃料1000㎏を再処理し、プルトニウム約10㎏、濃縮度0.9%のウラン約940㎏を回収する→それを加工、濃縮してMOX燃料約130㎏、濃縮度4.1%のウラン燃料約130㎏が作られる→これによりもとの1000㎏のウラン燃料に対して260㎏、約25%の新たな燃料を生み出すことができるというモデルをあげて、資源の有効利用が出来ると説明されている。

しかし、これは著しい誇大宣伝である。

使用済燃料再処理により生み出されるプルトニウム10㎏のうち核分裂性のプルトニウム(Pu239、Pu241)はおよそ70%であり、しかも再処理工程でのロスが発生するのでそれを10%と想定すると、結局、実際には、核分裂性のプルトニウムは、6.3㎏でしかなく、MOX燃料となって実際に炉内で燃えるのはそのうちの5分の4の約5㎏である。これはもとの1000kgのウラン燃料の僅か0.5%である。

また回収済みの濃縮度0.9%の汚れたウラン約940㎏を濃縮して4.1%の濃縮ウランを製造することは実際には実施される計画はない。のみならず、そもそもこれは、ウラン燃料の使用済燃料に残留するウラン235の再利用ということであって、新たな燃料を生み出すわけではなく、プルサーマルとも関係がないことである。従って、プルサーマルで新たな燃料創出に寄与するのは、結局、核分裂性のプルトニウム約5㎏に過ぎない。使用済燃料再処理、MOX燃料製造のために投入される膨大な資源とコストを考えると何ら得るものはないどころか大きな浪費である。

大綱では、プルサーマルにより、「1~2割のウラン資源節約効果が得られる」と、ややあいまいな評価に落としているが、それさえも著しい誇張である。
(続く)
   注:当初アップロードした原文では、有効活用率5%としたが、0.5%と訂正する。
スポンサーサイト
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR