スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

立憲主義を守るために秘密保護法が必要との謬論を駁す (3)

(2)昨年12月21日付「朝日」紙インタビューでの発言

長谷部氏に対して、驚きと批判の意見が殺到したのであろう。長谷部氏は、特別に保護するべき情報がある以上は当然秘密保護法が必要だという没価値的・事務的で粗雑な論理に、理論的粉飾をこらすことを試みた。昨年12月21日付「朝日」紙のオピニオン欄に、長谷部氏のインタビュー記事が掲載されたが、そこで長谷部氏は、秘密保護法を必要と考える最大の理由は何かと問われて、以下のように語っている。

「国を守る法律だからです。国を守るとは、憲法を守るということです。単に物理的に領土を守るとか、国民の生命と財産を守るということではありません。中国や北朝鮮と同じ政治体制でいいなら、国を守る必要はない。しかし憲法の定める自由で民主的な統治の基本秩序を守り、現在の政治体制を守るためには、特定秘密保護法をつくり、特別な保護に値する秘密が外に漏れないようにしなければなりません。」

ここには立憲主義なる言葉は使われていないが、それのはしりとも言うべき考え方は示されている。憲法の定める自由で民主的な統治の基本構造を守り、現在の政治体制を守るために秘密保護法が必要だという主張である。これは、立憲主義なる抽象的概念で定式化されていないだけに非常にナイーブであり、誰もがそのウィークポイントに気付きやすいのではなかろうか。即ち、長谷部氏の言うところの、憲法の定める自由で民主的な統治の基本秩序、現在の政治体制とは、国民主権と代議制民主主義のことであり、これを支えるのは表現の自由、報道の自由、知る権利、内心の自由などの基本的人権である。これら基本的人権の徹底した保障なくして国民主権と代議制民主主義は成り立たない。そうであるならば秘密保護法とこれら基本的人権がクロスするのかしないのか検証しなければならないことになる。しかるに長谷部氏はそれを一切放棄しているのである。

この点については、私は、以下のように整理できると考える。

表現の自由・知る権利の侵害

秘密保護法は、国民の共有財産である行政情報・国家情報のうち、別表掲記の「防衛に関する事項」10項目、「外交に関する事項」5項目、「特定有害活動防止に関する事項」4項目、「テロリズム防止に関する事項」4項目、合計23項目に該当する情報について、各行政機関の長が特定秘密に指定し、特定秘密取扱者のみならず、入手し、公表し、論評しようとする第三者に対し、最高刑10年の懲役以下に処するとの脅しをかけて、情報の流れを遮断し、表現の自由とそれに内在する知る権利(憲法21条)に重大な制約をもたらすものである。

しかも上記23項目の文言は、一義的に明確ではなく、抽象的、曖昧である。そのため行政機関の長による特定秘密指定はとめどもなく広がる可能性を孕んでおり、それに対する歯止めは存在しないに等しい。

秘密保護法22条は、1項で「国民の知る権利に資する報道又は取材の自由に十分配慮しなければならない」とし、2項で報道関係者について「公益を図る目的を有し、かつ法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする」と規定しているが、前者は単なる配慮条項で何ら法的拘束力をもつものではなく、後者は、公益を図るために取材の自由と手段・方法の違法性・不当性を混同し、西山事件最高裁判決のレベルにとどまるもので、これでは取材の自由を保障したことにならない。

思想信条・内心の自由及びプライバシーの侵害

秘密保護法12条乃至17条は適性評価制度について定めている。適性評価制度とは特定秘密を取り扱う行政機関や特定秘密を保有もしくは提供を受ける可能性のある事業者において、職員・従業員を調査し、秘密を漏らすおそれありと評価された者を特定秘密取扱者としないようにする仕組みである。
適性評価の調査項目は、①特定有害活動(スパイ行為)及びテロリズムとの関係に関する事項(本人の家族及び同居人の氏名、生年月日、現国籍、過去に有していた国籍及び住所を含む)、②犯罪・懲戒歴、③情報の取り扱いに関する非違歴、③薬物の乱用及び影響に関する事項、④精神疾患に関する事項、⑦飲酒についての節度に関する事項、⑦信用状態その他経済的な状況、とされている。
調査方法は、質問調査(対象者本人だけではなく、対象者の知人その他の関係者にも)、資料提出をさせる、公務所もしくは行使の団体への照会し報告を求めるなど、徹底している。関連して政治活動や組合活動歴も調査されるおそれがある。預金の状況、株式・有価証券の取引歴など資産状況も把握される。
このような調査は、現在自衛隊で行われている上述の秘密取扱者適格確認制度の運用実情から見て、思想・信条の自由、内心の自由(憲法19条)、プライバシーの権利(憲法13条)を侵害するものとなるであろう。
  
先に、長谷部氏は、行政機関(つまり官僚)への信頼の弁をどんどん増幅させていると述べたが、このインタビューの中で以下のように述べているのが印象的である。
   
「今回の仕組みは、特別に保護すべき情報を金庫の中に厳重にしまって、権限のある人だけが見られるようにするというものです。なんでも金庫に入れてしまうと政府の仕事がやりにくくて仕方がない。常識的に考えて、秘密の範囲が際限なく広がることはありません。」

なんと底の浅い常識であろうか。我々の日常的経験においても、また歴史の教えるところでも、政府、行政機関、官僚は、必要以上に情報を囲い込みたがり、不都合な情報は一切秘密にするというのが常識ではなかろうか。

さらに長谷部氏は、独立性と中立性の高い第三者機関を設けてチェックさせるべきだとの記者の意見に対し、以下のように反論する。
   
「そうでしょうか。専門的知見のない人に、特定秘密として指定すべきか否かの判断はできません。しかし高い第三者性を求めれば求めるほど、専門性の低い人を呼んでこなければなりません。そんな組織を作ってもあまり意味がないと思います。発想を転換して、情報を手元に持っている人がそれを外に出しやすくする仕組みを作る、そのことに力を注いだ方がいいのではないですか」

これは専門家による専断を容認し、その叡慮にお任せするという見解ではないか。長谷部氏の「自由と民主」は、安倍専断政権を支える「自由民主」を名乗る政党の「自由と民主」の内実とどれだけの差異を誇れるのであろうか。メディアに萎縮」を煽るなと説教する長谷部氏に対して、私は、「公的領域(政治過程)において、人々にとって、大切なことは信じることではなく疑うことである」との一文を献呈しておくこととする。
(続く)
スポンサーサイト
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。