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立憲主義を守るために秘密保護法が必要との謬論を駁す (5)

4 まとめ

そろそろまとめることにしよう。頭書の対談に戻るが、杉田氏が「法律は相互に関係し合っています。憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、安倍政権がめざす法制度改革の文脈に秘密法を位置づければ、不安も出てくる。情報が遮断された中で、いつの間にかとんでもないところに連れていかれるのではないかと。秘密法で国を守ろうとした結果、私たちの生活が脅かされるとすれば本末転倒ですようね。」と長谷部氏を、そのはまり込んだドグマティッシュな状況から救い出そうとしたのに対し、長谷部氏は、以下のように述べて、殻を閉ざしてしまうのであった。

「秘密法は民主党政権のもとで構想されたもので、民主党政権が提出していたらこれほど反発されていなかった可能性が高いと思います。(中略) ただ秘密法は、多くの先進国が持っているありふれた制度のひとつです。だから政権のありようとは別に法技術的な観点から判断されるべきです。」

驚かされることが二つある。一つ目は、秘密保護法の由来と政治的文脈に関するあまりにもひどい無知、二つ目は、先進国の法制度に関する完全なる無知を、あけすけに披露していることである。

(1)秘密保護法の由来と政治的文脈

長谷部氏は、秘密保護法は、民主党政権において構想されたものと言うが、とんでもない事実誤認であり、自民党が永年にわたって追及し続けてきた治安立法・スパイ防止法制定のベクトルと米国との軍事同盟を深化・集団的自衛権容認のベクトルの合成によって、秘密保護法が制定されたのだということを正視しなければならない。

治安立法・スパイ防止法制定の動きがはっきりした形をとったのは1985年のことである。第102国会に自民党の議員立法として国会に提出された「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法案」である。
この法案は「外国のために国家秘密を探知し、又は収集し、これを外国に通報する等のスパイ行為」を防止するために、国家秘密(防衛のための体制等に関する事項、自衛隊の任務の遂行に必要な装備品及び資材に関する事項、外交に関する事項で、我が国の防衛上秘匿することを要し、公になっていない情報)を、業務者自ら、もしくは探知・収集した第三者が外国に通報する行為、業務者が漏えいする行為等を死刑・無期懲役を含む厳罰に処することとするというもので、野党や日弁連の猛烈な反対運動と国民世論の反発により翌第103回国会で廃案となった。

自民党は、すぐにこれを修正して「防衛秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」をつくった。この法案は、「防衛秘密(防衛のための体制等に関する事項、自衛隊の任務の遂行に必要な装備品、資材等に関する事項、我が国の安全保障に係る外交に関する事項で我が国の防衛上秘匿することを要し、かつ公になっていない情報)を、業務者上自ら、もしくは探知・収集した第三者が外国に通報する行為、業務者が漏えいする行為等を最高刑無期懲役を含む厳罰に処する」こととするというものであった。旧法案に比べると、死刑の削除、対象秘密の範囲の限定及び「出版又は報道の業務に従事する者が、専ら公益を図る目的で、防衛秘密を公表し、又はそのために正当な方法により業務上行った行為は、これを罰しない。」とのメディア向けの条項が書き加えられていた。しかし、結局、自民党は国会提出を断念した。

自民党は、その後も治安立法・スパイ防止法制定の運動は細々とではあるが継続していたが、2001年の9.11事件後、突如スポットライトを浴び、上記「防衛秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」と趣旨において同じものが一気に政府の発案による自衛隊法改正という形をとって実現してしまったのである。それが自衛隊法法改96条の2・122条である(2001年11月施行)。これによって防衛秘密(自衛隊法別表4に掲げる事項―秘密保護法別表1防衛に関する事項と同じ―で、公になっていないもののうち我が国の防衛上特に秘匿することが必要として防衛大臣が指定したもの)の漏えい等が最高刑5年以下の懲役に処することとされた。
しかし、それでも自民党にとっては当初のスパイ防止法制定の目論見が完遂されたわけではなかった。
これが第一のベクトルである。

一方、日米軍事同盟を深化・集団的自衛権容認の流れを見てみよう。
2005年の「日米安全保障協議委員会(いわゆる「2+2」)合意文書は「日米同盟:未来のための変革と再編」なる刺激的なタイトルが付されている。この中で「日米同盟は日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎。同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は世界における課題に対処する上で重要な役割を果たす」、「日本の有事法制、自衛隊の新たな統合運用体制への移行計画、米軍の変革と世界的な態勢の見直しといった、日米の役割・任務・能力に関連する安全保障及び防衛政策における最近の成果と発展を、双方は認識した」とし、日米同盟の深化、米軍と自衛隊の統合運用を確認している。
2007年5月1日付「2+2」合意文書「同盟の変革: 日米の安全保障及び防衛協力の進展」では、「閣僚は、新たに発生している安全保障上の課題に対して、より効果的に対応するために、二国間の情報協力及び情報共有を拡大し、深化する必要性を強調した。」と記載されている。さらにこの合意文書中では「閣僚は、この同盟の変革に関する構想に沿った役割・任務・能力の進展を確認するとともに、以下を強調した」として「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)としても知られる、秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する両政府間の実質的合意」を明記している。
同年8月10日調印された日米軍事情報包括保護協定(GSOMIA)第6条は「日米両政府は秘密軍事情報について当該情報を提供する国の秘密保護と同等の保護を与えるための適当な措置を取ること」を確認している。
これが第二のベクトルである。

(2)先進国の法制度

先進国でも秘密保全法制はある。しかし、表現の自由・知る権利との格闘の生々しい跡をとどめており、長谷部氏のように「ありふれたもの」と言ってのけるのは、あまりにもその重みを無視していると言わざるを得ない。

米国の秘密保全法制では、秘密指定の範囲が限定され、秘密指定の濫用を防止する規定が置かれ、秘密指定・解除について連邦議会の上・下院の特別委員会による審査に服するほか、独立性が保障された強力な第三者機関による審査や解除がなされることになっている。
また米国では防諜法の犯罪類型が客観的行為によって記述され、可視性があり、拡張されるおそれが小さい。

ドイツ、フランス、イギリスについても、秘密保護法に相当する反逆的秘密漏示罪(ドイツ)、国防秘密漏えい罪(フランス)、スパイ条項(イギリス)があるが、それぞれに対象秘密を限定し、かつこれを審査する独立の第三者機関を持っている。

最後に、私は長谷部氏をこき下ろして快感を味わおうというような了見はさらさら持っていない。長谷部氏には憲法改正問題で果たしたような立派な役割を、この秘密保護法の問題でも発揮して頂きたいと心から願っている。敢えて非礼もかえりみず批判をしたのは一にかかってその願いからである。
                                      (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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