戦前秘密保全法制 (10)

まとめ

明治以後太平洋戦争に至るまでの我が国の、外への侵略と内への軍国主義・国民抑圧の体制確立の歴史を駆け足で眺めながら、その流れの中に秘密保全法制の生成、発展、完成の推移をプロットし、その中心をなす三本柱である軍機保護法、軍用資源秘密保護法及び国防保安法の概略を説明してきた。

これら三本柱のうち軍機保護法についてはその適用状況、具体的事件等が比較的解明されており、一定の考察を加えることができた。しかし、軍用資源秘密保護法と国防保安法については適用状況、具体的事件等があまり解明されておらず、きちんとした考察を加えることができなかった。それがやや心残りである。さらに研究を続け、他日の完成を期したいと思う。

さて戦前秘密保全法制を検討してみて、多くの貴重な教訓が得られた。我が特定秘密保護法を検討する際に大いに参考とすべきであろう。

これらの教訓は、行文中において逐次述べてきたつもりであるが、整理して以下に摘記しておくこととする。

①秘密保全法制は戦争に備えて軍隊と軍備を整備するのと並行して制定され始めた。

②当初は、当面の要請に応える形で、バラバラに法令が制定され、適用対象者・秘密の範囲・適用されるべき時と場合などは比較的限定的であったし、犯罪とされる行為態様も最小限度のもので、その上それに科される刑事罰も比較的軽かった。

③戦争の準備と開始は、秘密保全法制を成長、増殖させる梃となる。秘密保全法制は、さらに戦争拡大の勢いと正比例して成長、増殖する。適用対象者・秘密の範囲もどんどん拡大して行き、最終的には秘密とはおのずから定まっているという「自然秘」なる概念に行き着くことになる。

④犯罪とされる行為も次第に細分化され、網羅的となり、その上それに科される刑事罰も重罰化され、死刑、無期懲役まで科されるようになる。

⑤刑事手続にも特例がもうけられ、捜査官の強制権限が強められる。とりわけ裁判手続が簡略化され、弁護人は司法大臣の認可した弁護士に限る、弁護人は公判で国家機密、軍事上の秘密、軍用資源秘密等について陳述できないなど被告人の防御権が著しく制限されるようになる。

⑥警察・憲兵による国民に対する支配と監視の目が網の目のように張られていく。警察・憲兵は、思想的に問題あると思われる者、まつろわない者、あるいは外国人などをマークし、些細な口実をもうけて干渉する。警察による濫用がひどくなり、秘密を認識して探知収集した、あるいは秘密を認識して漏えいしたなどとは到底言えないような事件で検挙され、挙句の果ては事件の捏造により重罰が科される。

⑦こうしたことによって、報道機関は政府・軍部の広報機関となり、国民は、目と耳は塞がれただけではなく、報道機関も国民も、戦争に協力・加担するように思想動員されて行った。

以下は、特定秘密保護法が強行成立させられた2013年12月6日に、私が書いた文章である。

多くの人々がまなじりを決して国会を包囲している。この空前の民衆の民主主義を求める高みを何にたとえるべきか。民衆はたとえ特定秘密保護法が成立しても反逆する力を確実に獲得した。灰塵の中から現代のリヴァイアサンは蘇る。
傲慢な自民党、哀れな仔羊公明党。見よ、勝ち誇った顔が凍り付いているのを。
私たちは負けない。私たちには敗北という言葉はない。何故ならつねに蹉跌を乗り越える勇気があるからだ。一時の結果をものともしない継続する志があるからだ。彼らはそのことに気づかず、すぐに勝ち誇る。しかし過ぎ去った歴史は、彼らこそ歴史の屑籠に捨て去られる運命にあることを示しているのだ。
安倍政権は走り続けなければこける悲しき一輪車。国家安全保障戦略・新「防衛計画の大綱」の策定、国家安全保障基本法の制定、憲法改正へと、周辺諸国を攻撃する能力を高め、集団的自衛権容認で米国とともに世界で戦争をする国づくりに狂奔するだろう。原発も福島事故前へと逆コースを鮮明にするだろう。
特定秘密保護法案反対の声を上げた多くの国民は、これに立ち向かう力を獲得した。きっとこうした安倍政権の暴走の前に立ちはだかるだろう。一輪車は簡単に止められる。特定秘密保護法案強行可決は、安倍政権の崩壊のはじまりだ。

特定秘密保護法を廃止しなければ、戦前秘密保全法制への胎動が始まる。しかし、今、人々は、これを廃止する知恵と力を身につけたと私は思いたい。
                                     (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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