続・「安全保障法制整備に関する与党協議会」

協議会での議論の状況は、その細部にわたって公表されるわけではないから、私たち国民は、マスコミの報道を通じて知るほかはない。マスコミには、是非、私たち国民の目となり、耳となって正確に報道し、かつ適確な論評をして欲しいものだ。
 
さて前回は、過去4回の協議会の概要をフォローしたが、今回は、私の意見を述べてみようと思う。

1 第3回協議会で、集団的安全保障(4事例・・・④侵略行為に対抗するための国際協力としての支援、⑤駆けつけ警護、⑥任務遂行のための武器使用、⑦領域国の同意に基づく邦人救出)につき、国連PKOを含む国際協力活動で海外派遣された自衛隊員の武器使用について、政府側は、自己又は自己とともに現場に所在する者の生命、身体を守るために必要と認められる相当の理由があり、そのために必要最小限の範囲で認められるとしてきたのを、「国または国に準ずる組織」に対する武器使用には制限はなく、派遣する相手国の政府を承認があり、相手国の政府が権力を維持し実効支配しておる場合には、相手国の政府以外に「国または国に準ずる組織」は存在しないから、状況に応じて武器使用を認めるとの新たな見解を提示した。

「自衛権行使三要件」及び「自衛のために必要最小限度の自衛力」なる確立した政府見解二本柱から、そもそも自衛隊とは、ⅰ我が国に対する急迫不正の侵害があり、ⅱこれに対処するのにほかにとり得る方法がなく、ⅲ侵害者を我が国領土、領海、領空から撃退する等必要最小限度の範囲で反撃するための実力であり、それ以外の目的に転用することはできないのであるから、武器使用が認められるケースはおのずから限定される。政府側が提示した案は、これを逸脱し、また実際上も派遣自衛官らが戦闘に巻き込まれるおそれが大となる危険を伴うもので、到底認めるわけにはいかない。

2 第4回協議会で、以下のとおり、グレーゾーン事態(3事例・・・①離島等における不法行為への対処、②公海上で訓練などを実施中の自衛隊が遭遇した不法行為への対処、③ 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護)について大筋合意成立したことが報じられている。

①、②は、治安出動(自衛隊法78条)、海上における警備行動(同法82条)の活動範疇に含まれるもの政府命令を早めるなど運用の改善によって対応すること、③につい武器等防護のための武器使用(同法95条)において米艦も防護対象とすることができるような改正をすること。

しかし、③についてもし本当に合意したとなれば、由々しき問題である。

武器等防護のための武器使用とは、自衛官が、自衛隊の武器、弾薬、船舶、航空機等を職務上警護するに当たり、人又これらの物を防護するために必要があると認める相当な理由があるとき、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度で武器使用を認める(人への危害は正当防衛又は緊急避難に該当する場合に限る)というもので(自衛隊法95条)、防衛出動には至らない警察的な活動として位置づけられる。
ところが、自衛艦が、公海で、弾道ミサイル発射警戒活動中の米艦を警護するのは、どう見ても警察的な活動ではない。これは、まさしく集団的自衛権行使の事例に該当する。これを政府側がグレーゾーンの事例として持ち出したのは一種のトリックである。また公明党もそれに異議をのべないで、早々と、自衛隊法85条を改正する方向で大筋合意したとすれば、集団的自衛権の行使は容認しないと繰り返し言明してきたことは単なる方便に過ぎなかったことになる。

3 6月7日付、「朝日」紙朝刊から、要約して以下引用する。

第4回協議会、残り10分を切った段階で、突然、岩屋毅自民党安全保障調査会長が、集団的自衛権(8事例の「武力の行使」に当たり得る活動・・・⑧邦人輸送中の米輸送艦の防護、⑨武力攻撃を受けている米艦の防護、⑩ 強制的な停船検査、⑪米国に向け我が国上空を横切る弾道ミサイル迎撃、⑫弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護、⑬米本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戦を行う時の米艦防護、⑭国際的な機雷掃海活動への参加、⑮民間船舶の国際共同護衛集団的)を取り上げ、「これらを集団的自衛権以外でどう説明するのか。できないでしょう。問題はどういう制約をかけるべきだ」とまくしたてたのに対し、慌てた公明党北側氏が「ちょっと待って。首相が言う『必要最小限度』とは何か基準を示して欲しい」と切り返したが、自民党にとってはこれで十分であった。

いよいよ集団的自衛権論に入ろうとしているが、自民党は知ってか知らないでか、「必要最小限度の自衛権行使」論で押してくる。対する公明党北側氏も、「必要最小限度とは何か」などと、なにやら安倍首相や自民党側が設定した危うい議論の土俵に乗っかっているようだ。

この点については、私は、4月以来、幾度となく警鐘を鳴らしてきた。
集団的自衛権が認められないのは、集団的自衛事態は、「自衛権行使三要件」の第一要件「我が国に対する急迫不正の侵害」に当たらないからである。かって公明党の大先輩、二見伸明衆議院議員が、折角、「必要最小限度であれば集団的自衛権の行使も可能というようなひっくり返した解釈」に封印をしたのに、今、北側氏らは、その封印を解こうというのであろうか。

私たちは座視するわけにはいかない。監視、批判を強めていかなければ、安倍首相、自民党の思い通りになってしまうだろう。
                               (了)
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「安全保障法制整備に関する与党協議会」 

「安全保障法制整備に関する与党協議会」(以下単に「協議会」という。)なるものが行われている。この協議会、どうもネーミングからして、既に、自民党の圧倒的優越性が滲み出し、一定方向を志向していることが明らかである。

協議会は、5月15日、「安保法制懇」から報告書の提出を受けた安倍首相は、ただちに以下の「基本的方向性」を打ち出し、これを受けて、与党間の合意に基づいて開催されることになったものである。

・「限定的な集団的自衛権行使容認」を求めた安保法制懇提言については今後研究を進める
・与党協議の結果、憲法解釈変更が必要と判断されれば閣議決定する
・武装集団が日本の離島に上陸する事態などの「グレーゾーン事態」への対処を強化する

 私は、公明党が立党の精神である平和憲法擁護の立場に徹するなら、広く国民に呼びかけ、協議会が開催される前にはその都度、意見交換をするための集会を持つこととし、そこでの意見聴取を踏まえて協議するという原則を確立する努力をするべきであったと思う。

なぜなら、公明党は、白紙もしくは集団的自衛権を認めないとの姿勢で協議会に臨むつもりであったかもしれないが、首相宛て提出された安保法制懇報告書と安倍首相の打ち出した上記「基本的方向性」に基づき、自民党は、既に、明確な方向性を持って臨むことは明らかであり、力関係においても優る自民党と対等平等に協議をするためには、国民的バックアップがどうしても必要だからだ。

既に協議会は、5月20日、27日、6月3日、6日と既に4回行われた。その概要をフォローしてみよう。

第1回 5月20日

自民党が①)武力攻撃に至らないグレーゾーン事態、②国連平和維持活動(PKO)での「駆け付け警護」など国際協力、③集団的自衛権の限定容認、の三分野一体的協議・決着を急ぐ姿勢を示したのに対し、公明党は、拙速な協議は避けるべきだと主張、公明党も協議の必要性を認めたグレーゾーン事態から議論に入ることを確認。

協議終了後の記者会見でも、自民党の高村正彦副総裁は、三分野一体での閣議決定が望ましいとの考えを強調したのに対し、公明党の北側一雄副代表は「私どもは、そういう認識ではない」と発言した。

第2回 5月27日

政府側が、現在の憲法解釈・法制度では対処に支障があると考える想定事例として、以下の15事例(プラス1参考事例)を提示した。

(1)グレーゾーン事態(3事例)・・・武力攻撃に至らない侵害への対処

① 離島等における不法行為への対処
② 公海上で訓練などを実施中の自衛隊が遭遇した不法行為への対処
③ 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
 (参考事例)領海内で潜没航行する外国の軍用潜水艦への対処)・・・撤回

(2)集団的安全保障(4事例)・・・国連PKOを含む国際協力等

④ 侵略行為に対抗するための国際協力としての支援
⑤ 駆けつけ警護
⑥ 任務遂行のための武器使用
⑦ 領域国の同意に基づく邦人救出

(3)集団的自衛権(8事例)・・・「武力の行使」に当たり得る活動

⑧ 邦人輸送中の米輸送艦の防護
⑨ 武力攻撃を受けている米艦の防護
⑩ 強制的な停船検査
⑪ 米国に向け我が国上空を横切る弾道ミサイル迎撃
⑫ 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
⑬ 米本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戦を行う時の米艦防護
⑭ 国際的な機雷掃海活動への参加
⑮ 民間船舶の国際共同護衛

グレーゾーン事態の①、②の2事例を中心に意見交換された。
政府・自民党は、離島に武装集団が上陸した 場合、自衛隊の治安出動や海上警備行動に「時間がかかる」として、発令手続きの簡素化が必要と主張。政府側の出席者は、中国漁船が大挙して日本領海に侵入 する事態などを念頭に「尖閣諸島も大丈夫ではない」と指摘した。これに対し、公明党北側一雄副代表は「海上保安庁で対処が困難なとき、スムーズに海上警備行動が出ることは当然やっているのではないか」と強調。あくまで海上保安庁が主導的役割を果たすべきで、自衛隊出動の手続きは現行の枠組みで十分との認識を示した。
また公明党北側氏は、海上保安庁の巡視艇が周辺におらず、付近にいる海上自衛隊ならば速やかな対応が可能とする状況設定に、「たまたまの話が挙がっている。かなりレアな話との印象を受けた」と不満を示した。公明党からはさらに、「どういう離島を想定しているのか」、「海上自衛隊に平時から警察権を持たせる考えなのか」などの質問が出された。
政府側が法整備の具体的な方向性を明確には示さなかったため、両党が「次回会議では政府の考え方を示してほしい」と要請したとのこと。

第3回 6月3日
 
政府側から、自衛隊の国際協力活動に関して、「武力行使と一体化」したものと許されないのは以下の4条件を全て満たす場合であり、「戦闘地域」であっても多国籍軍等の後方支援活動を認める案を提示した。

ⅰ 現に戦闘中の他国部隊を支援する
ⅱ 提供する物品・役務が直接戦闘に使われる
ⅲ 活動場所が、他国部隊が現に戦闘中の現場にあたる
ⅳ 後方支援活動が戦闘行為と密接な関係がある

これに対し、公明党から、「米国が戦争を始め、補給や医療をやってくれと頼まれたら断れない。自衛隊が活動中に攻撃されれば応戦せざるを得ず、結局、戦闘と一体化する」と危うさを懸念する意見が出た。また自民党も「政府の論理は緻密でない」と批判的な意見が出された。

さらに政府側から、自衛隊が「国または国に準じる組織」に襲撃され、武器を使用した場合に「海外での武力行使」と認定される恐れがあることから、「国または国に準じる組織」の定義を改め自衛隊が武器を使用できる対象を緩和する考えが示された。

第4回 6月6日

グレーゾーン事態(3事例)について、①、②については「運用の改善」で対処、③については自衛隊法改正で対応する、ことに大筋合意した模様。

政府側は、自衛隊の国際協力活動について、前回提示した案を撤回して、新たに以下の基準案を提示した。

ⅰ 現に戦闘中の現場では支援しない
ⅱ 戦闘現場となった場合は支援を中止する
ⅲ 人道的な捜索・救助は例外とする

政府側は、「(自衛隊イラク派遣などで設けた)非戦闘地域の概念は取らない」とも説明しているし、上記基準もあいまいである。他国部隊が現に戦闘中でさえなければ、戦場などの危険地帯で戦闘準備中の他国部隊に対する後方支援が可能になり、戦闘行為に限りなく近づくこと、突然起きた戦闘に自衛隊が巻き込まれることなど、懸念される。

政府側は、集団的自衛権(8事例)を説明、「いずれも集団的自衛権に当たり、これまでの憲法解釈を変える必要がある」とした。これに対し、公明党北側氏らは「現行法や現行憲法解釈でどこまで可能なのか議論する必要がある」と述べ、次回以降に政府が想定する「『必要最小限』の基準を示して欲しい」と、詳細な資料を示し、説明するよう求めた。

自民党は、安倍首相の指示に従い、6月22日の国会会期末までに与党協議を整え、三分野一体で閣議決定することを目指し、協議を急ぐ。
安倍首相、自民党は、「朝日」紙の表現にならうと公明党への北風政策に出た。公明党よ、大丈夫か!

                                   (続く)
プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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