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注釈:集団的自衛権などに関する想定問答 (3)

 集団的自衛権などに関する新「政府見解」の閣議決定案は、7月1日夕刻からの閣議で、原案通り決定された。私は、国家安全保障局が作成したこの新「政府見解」に関する問答(「集団的自衛権などに関する問答」)が、いかに事の本質をはずし、いかに空疎な言葉を弄し、いかにごまかしに終止しているかを淡々と述べてきたに過ぎない。しかし、そのことにより、新「政府見解」閣議決定が憲法9条に違反し、違憲無効であることがおのずから明らかになったと思う。

 それにしても、この想定問答、途中でまじめに批判をすることがバカらしくなるくらいの出来の悪い代物である。

問10 「武力の行使」関連の8つの事例で集団的自衛権を行使できるのか

・ いずれの事例も、「新3要件」を満たす場合には、集団的自衛権の行使としての「武力の行使」が憲法上許容される事例。
・ 8事例のような活動が新たに可能となるが、実際には、個別具体的な状況に即して総合的に判断。

■注釈

8事例というのは下記のとおりである。

・ 邦人輸送中の米輸送艦の防護
・ 武力攻撃を受けている米艦の防護
・ 強制的な停船検査
・ 米国に向け我が国上空を横切る弾道ミサイル迎撃
・ 弾道ミサイル発射警戒時の米艦防護
・ 米本土が武力攻撃を受け、我が国近隣で作戦を行う時の米艦防護
・ 国際的な機雷掃海活動への参加
・ 民間船舶の国際共同護衛

政府・自民党は、これらはいずれも集団的自衛権行使の事例であり、わが国としてこれらの措置をとることは絶対必要なことである、だから憲法9条の下では集団的自衛権の行使を認められないとする従来の政府見解を改めなければならないと主張してきた。公明党は、これらの事例の架空性・虚偽性を暴露し、これらの事例が想定する措置は現実的必要性のないものであることを真正面から論じるのではなく、集団的自衛権ではなく従来の自衛権で対処できるのではないかというような微温的対応をしていたために、全く勝負にならなかった。結局、全面的屈服をしてし、「新3要件」受け入れを余儀なくされたのであった。

「新3要件」中の「集団的自衛権行使3要件」のあてはめ及び自衛隊の出動は、あげて政府に判断に委ねられる構造であり、特定秘密保護法との組み合わせにより、報道機関も国会(議員)も情報にアクセスできず、戦前同様、政府の民主的統制は不可能で、その独断専行を阻止することも事後批判することも出来ない状況となる。

なお、これら8事例に限定されるわけではなく、米国が交戦状態になったときには、上記要件に該当すると判断されること、前述のとおりである。

問11 シーレーンでの機雷掃海や民間船舶の護衛は憲法上できるのか

・ 我が国の存立を全うし、国民を守るために、「武力の行使」に当たるものであっても、シーレーンにおける機雷掃海や民間船舶の護衛が必要不可欠な場合があり得る。これらは(湾岸戦争やイラク戦争での戦闘と異なり)航行安全を確保する限定的で受動的な活動。「新3要件」を満たす場合には憲法上許容される。

・ 実際には、個別具体的な状況に即して、総合的に判断。

・ 「新3要件」を満たす場合、邦人が乗船する船舶以外でも、共同の退避計画の下で外国人が乗船する船舶や外国のチャーター船等の護衛も可能。

■注釈

想定問答の答えも「新3要件」中の「集団的自衛権行使3要件」該当性の判断は、変幻自在、全く歯止めがないことを示している。

問12 地理的制限はないのか。他国の領域に行くのか

・ 「新3要件」に照らせば、我が国がとり得る措置には自(おの)ずから限界がある。

・ 武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領域へ派遣するいわゆる「海外派兵」は一般に許されないとする従来の見解は変わらない。

■注釈

新要件中の「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険性」は、要するに「我が国の存立が脅かされる明白な危険性」であり、それは抽象的、観念的な概念。米国が、地球の裏側で、大きな戦争を起したら、日米同盟を維持するために、わが国も参戦を余儀なくされる。勿論、地理的限界はないし、他国領域(領海)を除外する理屈を見出すことはできない。

問13 他国の領海内では機雷掃海はやらないということか

・ 他国の領海内における「武力の行使」に当たる機雷掃海であっても、「新3要件」を満たす場合には、憲法上許されないわけではない。

・ 実際には、個別具体的な状況に即して総合的に判断。

■注釈

上に述べたとおり他国領域(領海)を除外する理屈はどこにもない。政府の恣意的判断と独断専行を阻止することも批判することもできない。

問14 「我が国と密接な関係にある他国」とはどこか

・ 同盟国である米国はこれに当たる蓋然(がいぜん)性が高い。

・ 米国以外は、「新3要件」に照らし、一般には相当限定されるが、個別具体的な状況に即して総合的に判断。

・ 具体的な手続等は、法整備の過程で更に検討。

■注釈

同盟国である米国は、蓋然性が高いのではなく、米国のために従来の自衛権行使3要件とは別に「集団的自衛権行使3要件」を作ったのであり、まさにそれにあたる。

ほかは武力介入した時点で、その国が「我が国と密接な関係にある他国」になるというのが新「政府見解」の論理構造である。

問15 いわゆる集団安全保障では「武力の行使」はできないということか

・ かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはない。

・ 武力攻撃が発生した直後に、あるいは我が国が「新3要件」を満たす活動を実施中に、国連安保理が武力行使を容認する決議を採択しても、「新3要件」を満たすならば、憲法上「武力の行使」は許容される。国連安保理決議が採択されたからといって、「新3要件」を満たす活動を途中でやめなければならないわけではない。

・ この場合、国際法上、国連安保理決議が根拠となるが、「新3要件」を満たす「武力の行使」は、憲法上、我が国による自衛の措置として許容される。我が国が実施できる活動が、集団的自衛権が根拠となる場合より広がることはない。

・ 我が国有事の際に国連安保理決議が採択された場合についても、従来から、これと同様の考え方。

■注釈

湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはないというのは、単なるショックアブソーバー、これが守られる保障はない。なにせ憲法よりも日米同盟を、憲法よりも当面の政策を上に置く人たちのすることだから。

国連の集団的安全保障措置としてならともかく集団的自衛権の措置としての武力行使は反対だという人と、集団的自衛権の措置としてならともかく国連の集団的安全保障措置としての武力行使は反対だという人のどちらが多いだろうか。おそらく前者の方が多いだろう。だから、新「政府見解」は実によく考えられている。集団的自衛権の行使を認めれば、国連の集団的安全保障措置としての武力行使も認めるということになってしまうのである。

問16 「専守防衛」の変更になるのではないか

・ 武力攻撃が発生しなければ武力行使をしないことに変わりはなく、あくまで受動的なもの。「専守防衛」(憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢)は不変。

■注釈

従来言われてきた「専守防衛」とは、わが国領土、領空、領海の防衛であり、自衛権の行使として許される武力の行使は、あくあまでもわが国に対する攻撃の撃退であり、それが行使できる区域は、わが国領土、領空、領海、もしくはそれに接続する限定された物理的空間に限られるというものであった。「問答」で言われている「専守防衛」は、これとは全く異なる概念。ここでも恣意的な解釈の変更がなされている。


問17 日米安保条約は改正するのか

・ 改正は考えていない。集団的自衛権の行使は義務ではなく、改正の必要もない。

■注釈

既に安保条約は、条約本文の改正はないが、二度にわたるガイドライン(日米防衛協力指針1978年11月及び1999年5月)及び日米安全保障協議会における合意(たとえば2005年10月の「日米同盟:未来のための変革と再編」など)によって、実質的に改訂されてしまっている。その結果、安保条約本文からは到底考えられない日米協力体制の構築、軍事同盟化と世界戦略上の位置づけなどがなされるに至ってており、集団的自衛権行使が憲法上の制約がないということなると、その行使は日米同盟上の義務になる。

問18 後方支援で「現に戦闘行為を行っている現場」をどう判断するのか

・ 「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為が現に行われている現場」。

・ 隊員が支援活動を実施する地点で、人を殺傷し又は物を破壊する行為が現に行われていれば、客観的に明らか。現場の部隊で判断し、直ちに休止・中断。隊員の安全確保からも当然の対応。

■注釈

集団的自衛権行使(集団的安全保障措置への参加)を認めてしまえば、これを論じる意味がなくなる。「武力行使と一体化しない」との判断枠組みは、「自衛権行使3要件」の応用例であり、「自衛権3要件」によって海外での武力の行使は認められないから、自衛隊の「海外派遣」は「武力行使と一体化しない」ことを条件とする厳密な制限のもとで、かろうじて合憲とされ、認められてきたのであった。それは厳密な憲法9条解釈論をベースにしていたのである。しかし、集団的自衛権行使を認めることになれば、「海外派兵」は容易に認められることになるのだから、「武力行使と一体化しない」ということの意味は既にその時点で消滅してしまう。これこそ安倍式改憲である。

「問答」の答えからも歯止めがないことが理解できるが、多少の歯止めをかけるような言い方をしているのは、これまた現時点でのショックアブソーバーに過ぎない。

問19 「現に戦闘行為を行っている現場」で支援活動を実施しないのは「一体化」するおそれがあるためか

・ 「現に戦闘行為を行っている現場」での支援活動は、「武力の行使と一体化」するおそれが排除されないとしてきたことは事実であるが、今般、そのような現場での支援活動は必要性が低いことから、基本的に「現に戦闘行為を行っている現場」では支援活動は実施しないという政策上の判断をしたもの。

■注釈

前問と同じ。

問20 なぜ駆け付け警護や任務遂行のための武器使用が可能になるのか

・ PKO参加5原則の下でのPKO活動や、領域国の同意に基づく邦人救出等に伴う武器使用は、基本的には「武力の行使」に当たらない「武器の使用」。警察比例に類似した厳格な比例原則が働く。

・ その上で、国家安全保障会議で、情勢分析・審議等を行い、「国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場しないことを事前に判断する仕組みを設定し、自衛隊の活動が「武力の行使」に当たらないことを担保。

■注釈

前々問と同じ。PKO5原則とは、「自衛権行使3要件」の応用例で、海外での武力行使を認めないとの憲法9条論をベースにして考案されたもの。①)停戦合意の成立、②)紛争当事国によるPKO実施と日本の参加への合意、③)中立的立場の厳守、④)基本方針が満たされない場合は撤収する、⑤武器の使用は命の防護のための必要最小限に限る、というもの。安倍式改憲は、先人の叡知も無にする、知的ピグミーのなす暴挙。

問21 臨時国会に法案を提出するのか。グレーゾーン先行なのか

・ 今後の国内法制の在り方については、今次閣議決定で示された事項全般の検討と並行して、十分に検討。

・ 準備ができ次第国会に提出したいが、その段取りについて具体的に述べる段階でない。

・ 準備ができた段階で、与党にも御議論頂き、進め方も十分相談したい。

■注釈

閣議決定したといっても、自衛隊法その他の諸法の改正がなされなければ何らの意味もない。だからこれからが正念場である。戦争への道を阻止するために全国民の奮起を訴える。

                                   (了)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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