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戦後憲法9条論争・伊達判決


 東京都北多摩郡砂川町(1954年までは砂川村、1963年に立川市に編入)は、1955年当時、戸数3000戸弱、人口12000名、桑畑の広がる農村であった。この平和な農村の町に、同年5月、突如として、米軍立川基地拡張計画の話が降ってわいた。基地拡張用地として、農地等約18万㎡の強制買収もしくは強制借り上げをするとの通告が町長に対してなされた。
 その通告があった直後から、地元農民らは基地拡張に反対の声をあげ、町議会も全会一致で反対決議するなど町ぐるみの反対運動が始まった。このため政府は、安保条約に基づく駐留軍用地特別措置法によって強制収用をすることを決めた。
 政府の強行突破策が決定されるや、支援の労働組合員、学生、市民らが駆けつけ、平和な農村の町で、労働者、農民、学生、市民の連帯の輪が広がって行った。 私よりも10年ほど先輩の人達には、懐かしい思い出となっている人も多いであろう。
 調達庁による強制収用のための現地測量には、度々、警察官が大量動員され、測量阻止のために座り込みをして抗議をする人達に襲いかかり、棍棒で殴りかかる流血の惨劇が繰り返された。

 この闘争の現場で、1957年7月8日、調達庁の強制測量に抗議していたデモ隊の一部が、アメリカ軍基地の立ち入り禁止の境界柵を壊し、基地内に数m立ち入ったとして、デモ隊のうち23名が逮捕され、うち7名が、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法」(以下単に「刑事特別法」という。)違反で起訴された。
通常、このような立ち入りを処罰しようとすれば、軽犯罪法第1条第32号(入ることを禁じた場所に正当な理由がなく立ち入った者)違反として拘留又は科料に問うほかはないが、刑事特別法によって、米軍基地用地内への立ち入りは1年以下の懲役に問うことができることになっているのである。

 この事件について、1959年3月30日・東京地裁刑事第13部(伊達秋雄裁判長、清水春三裁判官、松本一郎裁判官)は、大要以下のような判決を下した。

① 憲法9条は、戦争を放棄し、戦力をもつことを禁じている。
 安保条約(旧)では、日本に駐留する米軍は、米国が、極東における平和と安全のため必要と判断したら日本国外に出動することができることになっており、日本は米軍の軍事行動により戦争にまきこまれるおそれもある。
従って、安保条約によりこのような米軍駐留を許した政府の行為は、「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起きないようにすることを決意」した憲法の精神にもとるのではないかとのする疑念も生じる。
② そのような合衆国軍隊の駐留は一面わが国政府の行為によるものといえる。
 このようなことを実質的に考えると、わが国外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的で合衆国軍隊の駐留を許容していることは、指揮権の有無にかかわらず、憲法9条2項前段により禁止される戦力の保持に該当する。
③ わが国内に駐留する合衆国軍隊は憲法上その存在を許すべからざるものであり、刑事特別法は憲法9条2項に違反 し、無効である。
  よって被告人らは無罪。

 これは、憲法9条を燦然輝かした名判決である。伊達秋雄裁判長の名を冠して伊達判決として歴史に名を留めている。

 しかし、この伊達判決、今からは想像もつかないことだろうが、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞などの中央紙の社説では、きわめて冷淡に、いやむしろ政府よりの立場からの攻撃を受けた。曰く、「条約を、締結後数年たってから違憲とするのでは国際的信用が地に落ちる。」、駐留米軍は憲法の規定によってしばることはできないし、日本の戦力と解釈するべきではない」等々。これに対し、多くの地方紙は、伊達判決を、画期的意義を有するものと高く評価していた。
 マスコミと政治との位置関係を示す歴史のひとコマとして興味深い。

 伊達判決は、政府、米国からも敵視され、葬り去る計画がめぐらされる。その顛末は、またの機会に書くことにする。

                                                    (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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