明確になった海外での武力行使のためのマニュアルづくり

 昨年10月3日、「日米安全保障協議委員会」(SCC Security Consultative Commitee 通称「2プラス2」)は、実務レベルの「防衛協力小委員会」(SDC Subcommitee for Defence Cooperation)に対し、現行の「日米防衛協力のための指針」(1997年9月23日確定。以下「現行ガイドライン」という。)の変更に関する勧告を作成するように指示した。

 SCCはその際、上記作業の目的をいくつか確認し、それには以下のものが含まれるとしていた。

① 日米防衛協力の中核的要素として、日本に対する武力攻撃に対処するための同盟の能力を確保すること。
② 日米同盟のグローバルな性質を反映させるため、テロ対策、海賊対策、平和維持、能力構築、人道支援・災害救援、 装備・技術の強化といった分野を包含するよう協力の範囲を拡大すること。
③ 共有された目標及び価値を推進するため、地域の他のパートナーとのより緊密な安全保障協力を促進すること。
④ 協議及び調整のための同盟のメカニズムを、より柔軟で、機動的で、対応能力を備えたものとし、あらゆる状況においてシームレスな二国間の協力を可能とするよう強化すること。
⑤ 相互の能力の強化に基づく二国間の防衛協力における適切な役割分担を示すこと。
⑥ 宇宙及びサイバー空間といった新たな戦略的領域における課題を含む変化する安全保障環境における効果的、効率的かつシームレスな同盟の対応を確保するため、緊急事態における二国間の防衛協力の指針となる概念を評価すること。
⑦ 共有された目標を達成するため、将来において同盟の強化を可能とする追加的な方策を探求すること。

 これらを見ると一目瞭然であろうが、①と⑦以外は、従来の、「自衛権行使三原則」及びそこから派生する海外での武力行使を禁ずる憲法解釈にかかわる政府見解に真っ向から挑戦する課題を含んでいることがわかる。

 政府が、従来の憲法解釈を変更する閣議決定を脱兎の如く急いだ理由はここにあったのである。本年7月1日の「集団的自衛権行使容認閣議決定」の要点を箇条書きにしてみよう。

ⅰ 武力攻撃に至らない侵害に対し、臨機応変に自衛隊を動員し、対処できるようにする。また米艦への武力攻撃に至らない攻撃に対して武器使用できるようにする。
ⅱ 米軍や多国籍軍への支援活動の範囲、PKO協力活動の範囲を拡大し、活動できる場所及び武器使用の要件を緩和する。
  また海外における邦人救出活動にも武器使用できるようにする。
ⅲ 「自衛権行使三要件」を改め、「武器使用三要件」とする。これは従来の「自衛権行使三要件」と新たに「集団的自衛権行使三要件」を無理やりひっつけたものである。

 これらにより、上記②乃至⑥の具体化がはじめて可能となったのである。はたせるかな、SDCが、去る10月8日公表した中間報告は、現行ガイドラインと比較対照すると、7.1集団的自衛権容認閣議決定が色濃く投影したものとなっている。

 現行ガイドライン

○ 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動
○ 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力
・日米政府が主体的に行う活動における協力
・米軍の活動に対する日本の支援(施設の使用、後方地域支援)

 中間報告

○ 日本の平和及び安全の切れ目のない確保
○ 地域のおよびグローバルな平和と安全のための協力
・平和維持活動
・国際的な人道支援・災害救援
・海洋安全保障
・能力構築
・情報収集、警戒監視および偵察
・後方支援
・非戦闘員を退避させるための活動
(以上に限定されない)
○ 新たな戦略的領域における日米共同の対応

 現行ガイドラインにおいて、周辺事態とは何かと問われて、「地理的な概念ではなく、あくまでも事態の性質に着目した概念である」などとして議論にフタがされてしまったが、一応の了解としては、「朝鮮半島有事」をさし、「台湾有事」についてはグレーというところであった。
 しかし、中間報告では、周辺事態という概念は消えてしまい、「地域のおよびグローバルな日米共同の対応」となってしまった。協力して行う活動は限りなく広がっている(これに限定されないと注意書きを見よ!)。また細かく見ると、後方地域支援にかえて後方支援という用語が選択されている。さらに新たな戦略領域における日米共同対応まで謳われている。

 ガイドラインは、軍と軍との協力内容を明確にし、共同訓練、共同演習を通じて、実際に共同運用をするためのマニュアルである。いよいよ米軍と協力して、海外での武力行使に踏み出すことになる。憲法9条の空洞化、死文化は、もうすぐそこまで来ている。

                                                          (了)

スポンサーサイト
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR