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客観性と公正さを欠く鳩山由紀夫氏に対する批判

 『戦後日本外交史 第3版補訂版」(有斐閣)という学生向けのテキストがある。編者は、『米国の日本占領政策-戦後日本の設計図』(上・下 中央公論社)の著者として名高い五百旗部真神戸大学名誉教授で、執筆者は、ご本人をはじめ、いずれも京都大学・高坂正堯門下とおぼしき国際政治学の名だたる学者らである。

 パラパラと読み進めて、第6章「冷戦後の日本外交」に至り、愕然とした。普天間基地移設問題を関わる鳩山由紀夫元首相の対処について、一方的な非難としか言いようのない記述がなされているのである。

(要旨)

 民主党・鳩山代表は、2009年8月30日執行の総選挙直前、7月19日の沖縄での集会で、唐突に、普天間基地の移設先について「最低でも県外」と明言、既定のものとして進行していた名護市辺野古への移設を覆す挙に出た。
 同年9月、政権についた後も鳩山首相は、普天間基地の県外移設発言を繰り返した。これに対し、北沢俊美防衛相と岡田克也外相が、日米合意に反するばかりか内容的にも成り立たないとして鳩山首相に注意を促したが、鳩山首相は県外移設に固執した。
 2010年5月、鳩山首相は、迷走の末、辺野古移設の原案に回帰し、陳謝し、同年6月首相を辞任した。
 鳩山首相は、日米関係を大きく損ない、沖縄の人びとの協力心を深く傷つけた。
 鳩山首相は、リベラルな国際政治観を漠然と好み、そこから米国との対等な関係への移行と東アジア共同体構想を提唱したのだが、①祖父・鳩山一郎のように自主防衛力を確保すること、②アジアに信頼できる友邦を確保すること、③東アジアの国際環境改善を達せすること、などその前提条件を無視し、無造作に対米機軸を相対化しようとした。

 この章の執筆者は、五百旗部氏ご自身である。彼の著書は何冊か読んでいるが、豊富な資料をもとに客観的な事実を整理し、適確妥当な推論をする堅実な学者であると、私は、評価していた。その五百旗部氏が、上記の如き、客観的資料に基づかず、また米国に対する卑屈な従属的観点から、鳩山氏に対する一方的な非難を、学生向けのテキストに書き連ねることは信じ難いことである。

 第一に、普天間基地の県外移設は、総選挙を前にして鳩山氏が突如として持ち出したことではない。民主党が、政権構想を固めていく過程で、上記総選挙の前年である2008年に沖縄ビジョンを改定した。そこには「日米の役割分担の見地から米軍再編の中で在沖縄海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移転を目ざす。」ことが明記さいれている。民主党代表、また民主党政権の首相や各大臣は、普天間基地移設に関しての行動指針として、これに依拠すべきことは当然のことだ。従って、鳩山氏の対処が正しく、北沢氏や岡田氏の対処が間違っていたのである。鳩山氏が迷走したのは、普天間基地移設問題に関する民主党の唯一の政策文書である「沖縄ビジョン」に従い、これを実践しようとした鳩山氏を他の外務・防衛の担当閣僚、重要な党幹部がバックアップせず、それどころか米国と、外務・防衛官僚の抵抗に同調してしまったからである。事実を正確に書かなければならない。

 第二に、対米依存を脱するためには、強固な防衛力を持たなければならないとか、アジアに信頼できる友邦をまず確保すべきであるとか、東アジアの国際環境の改善が先決であるとの主張は、強固なパワー・ポリティクス、事大主義的なバランス・オブ・パワーの立場に立つものであり、過去の遺物である。わが国は憲法9条を持ち、平和に徹することを世界に宣言した国である。憲法9条の思想は、パワー・ポリティクスやバランス・オブ・パワーを克服したところにある。政治、経済、文化あらゆる分野における国際交流を通じ、さまざまな分野における官と民のレベルでの重層的ネットワークを張り巡らし、そうしたことを通じて世界の国々、とりわけ東アジア諸国との信頼関係を醸成し、ゆくゆくは世界でも緊張度の高い東アジアにおいても、紛争の平和的解決のための地域機構を築き上げることにより、平和と安定を確保しようとすることこそ憲法9条の求めるところだ。五百旗部氏の主張より、鳩山氏の主張の方が、憲法9条により適合的であることは明らかである。

 いくら政治学、国際政治学だからといっても、学者が政治家のような主張をしてしまっては、学生が困るであろう。

                                                        (了)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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