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日本人は果たして本当に戦争に懲りたのだろうか?

 清沢洌の暗黒日記(清沢洌著・山本義彦編『暗黒日記 1942- 1945』岩波文庫)の1945年1月1日(月)の項に、以下の記述がある。

 昨夜から今晩にかけ3回空襲警報なる。焼夷弾を落としたところもある。一晩中寝られない有様だ。僕の如きは構わず眠ってしまうが、それにしても危ない。
 配給のお餅を食って、お目出とうをいうとやはり新年らしくなる。曇天。
 日本国民は、今、初めて「戦争」を経験している。戦争は文化の母だとか、百年戦争だとかいって戦争を賛美してきたのは長いことだった。僕が迫害されたのは「反戦主義」だという理由からであった。戦争はそんなに遊山に行くようなものなのか。それを今、僕らは味わっているのだ。だが、それでも彼らが、ほんとに戦争に懲りるかどうかは疑問だ。結果はむしろ反対なのではないかと思う。彼らは第一、戦争は不可避なものだと考えている。第二に彼らは戦争の英雄的であることに酔う。第三に彼らに国際的知識がない。知識の欠乏は驚くべきものがある。
 当分は戦争を嫌う気持ちが起ころうから、その間に正しい教育をしなくてはならぬ。それから婦人の地位をあげることも必要だ。
 日本の最大の不自由は、国際問題において、あいての立場を説明できない一事だ。日本には自分の立場しかない。この心的態度をかえる教育をしなければ、日本は断じて世界一等国となることはできぬ。すべての問題はここから出発しなくてはならぬ。

 清沢洌は、1920年代から1940年代初頭まで、自由主義的外交評論家として華々しく活躍した人である。彼は、満州事変と日中戦争の拡大に反対し、日米戦争開戦にも反対した。彼は、戦争をまっしぐらに推進する軍部・政府にとっては人心をかく乱する危険極まりない人物だった。

 1941年2月、内閣情報局は、総合雑誌編集者に対し、意見の発表を禁止すべき人物として、清沢洌もリストアップした。言論弾圧である。事実上最後の評論になったのは、『改造』1940年12月号に掲載された、『三選ルーズヴェルトの肚」と題する日独伊三国同盟批判であった。そこで彼は、不気味な終末を予測して、次のように論じた。

 日独伊同盟は極東と欧州を一つにした最も画期的な国際事件であった。従来、必ずしも一つでのものではなかった日支事変と、欧州戦争は、これにより一貫不離のものとなった。満州事変によって国際連盟と断って、東亜建設に邁進してきた日本は、不思議にも東亜建設の必要から、再び違った内容と形式ではあるが、欧州と緊密な―以前よりは遥かに強固な連関を持つことになった。

 こうして彼は、評論活動の場を失い、日本外交史の研究に専心、戦前における日本外交史に関する最良の書と評されている『外交史』、『日本外交史』を書き上げるとともに、1942年12月、表紙に「戦争日記」と書きなぐったノートに、詳細に記録を書き始めた。これが、後に、『暗黒日記』として世に知られることになったのである。

 さて『暗黒日記』の1945年1月1日(月)の記述に戻ろう。

 「戦争は文化の母」とは、1934年10月に陸軍省新聞班が、総力戦・総動員体制を国民にアピールするために作成した陸軍パンフレットの標語「戦争は創造の父、文化の母」からの引用である。百年戦争というのは、1945年6月8日の御前会議で「ソ連を日本の側につけてでも対米英百年戦争を企図する」という勇ましい発言があったように、当時、日米戦争をペリー来航以来の百年戦争の最終局面とみなす見方が喧伝されていたことを示している。最近も、この語句をもてはやす、懲りない人びとがいることは、周知のとおりである。

 清沢洌は、これを書いてから5ヶ月余り後の1945年5月21日、肺炎をこじらし、急逝した。享年55歳。彼が、「ほんとに戦争に懲りるかどうかは疑問だ」といった我が日本国民は、再び戦争への道を歩み始めているようである。残念ながら、「日本の最大の不自由なのは、国際問題において、あいての立場を説明できない一事だ。日本には自分の立場しかない。」というのも図星であった。慰安婦問題、領土問題、歴史認識、対中国、朝鮮・韓国観、朝鮮人・中国人蔑視と言葉の暴力であるヘイトスピーチ。

 ただ救いなのは、これに同調しない国民も未だ多数いることだ。    (了)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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