プルサーマル計画打ち切りを決断するべきだ


 11月3日付「朝日新聞」によると、「電気事業連合会は、2015年度までに全国の原発16~18基で実施する予定だったプルサーマル計画を先送りする方向だ。使用済み核燃料の再処理工場の完成が遅れているのに加え、停止している原発の再稼働の見通しが立たないためだ。」と報じられている。

 私は、今こそ、プルサーマル計画打ち切りの決断をすべきときだと思う。それは以下の理由による。

1 プルサーマルの効用については、資源エネルギー庁・電事連の誇大宣伝によるインフレが先行していたが、結局、2005年策定の原子力政策大綱においてさえ、「1~2割のウラン資源節約効果が得られる」と、大幅なトーンダウンとならざるを得なかった。まさにデフレである。
もっともそれさえも大きな誇張であることは、今では、はっきりしている。

 そのような僅かなウラン資源節約効果では、現在わかっているウラン埋蔵量(大島堅一『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新聞社によれば、2007年1月1日現在の値で、年需要量6.7万トンとして可採年数は132.4年であるとのことである。)からすれば無視できる程度の微々たるものである。むしろ、それは使用済燃料再処理、MOX燃料製造のために投入される膨大なコストに到底ひきあうものではなく、経済合理性を欠くものといわざるを得ない。

2 そうすると原発事業者から見ても、また電力需要者から見ても、プルサーマルの積極的な意義は全く認められない。それにも関わらず、資源エネルギー庁・電事連が、プルサーマルにしがみついているのは、結局、高速増殖炉開発・実用化が幻となった今、使用済燃料再処理路線を走ることにより必然的に備蓄されていくプルトニウムを、実際に使用して減らす努力をしているということを世界に示すためのもの、即ち、アリバイ工作に過ぎないということである。

 そうだ。云ってみればプルサーマルは、プルトニウムのごみ焼却のための苦肉の策なのである。

3 そのゴミ焼却によって、どれだけの危険がもたらされるであろうか。おおよそ次のような危険がもたらされるのである。

 プルトニウムは、ウラン235と比べると、より不安定で、中性子を吸収しやすく、核分裂を起こしやすい。そのために出力の急な上昇、核分裂暴走及び暴走した場合の制御棒の性能低下などが危惧されている。
またプルトニウム燃焼によって核分裂生成物のガスの放出量が非常に多くなること、プルトニウムの濃度が稠密になると融点が下がることなどが原因で、燃料ペレットの破損及び燃料棒の破損を起こし、メルトダウンを起こすおそれが生じることが指摘されている。

 更には、プルトニウムを燃やす場合には、ウラン燃料を燃やす場合と比べて、アルファ線を放出し、長い崩壊系列を持ち、また半減期が長いプルトニウム240、242、ネプツニウム、アメリシウム、キュリウムなどの核種がより多く蓄積するが、それらは崩壊熱が格段に高く、放射能も著しく強くなるので、万一事故が発生してそれらが放出されると被害は著しく大きくなることが指摘されている。

 プルサーマル計画の打ち切りは、もはや議論・検討の段階ではない。待ったなしの決断が迫られていると云ってよい。

 さてその先であるが、当然のことながら、プルサーマル計画打ち切りを決断すれば、いよいよ使用済み燃料再処理・核燃料サイクルの放棄が迫られる。何故なら、使用済み燃料再処理・核燃料サイクルの中核であった高速増殖炉開発の夢がついえた後に、その最後の支えとなっていたのは、プルサーマルであったから。
 使用済み燃料再処理・核燃料サイクルの放棄は論理的な成り行きであり、ドミノ倒しは避けられない。(了)
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特定秘密保護法を考える3つの視点

 特定秘密保護法(以下「秘密法」という。)は、よほどの異変が起こらない限り、12月10日をもって施行される。

 思い返せば、本法制定経過は、本法案のことが多くの国民の目に触れたのは、2013年8月27日、自民党インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチームが政府から法案概要の説明を受け了承したこと及び政府が同年秋の第185国会(臨時会)に法案提出することを決めたことの報道がおそらく初めてで、それから可決・成立を見るまでに、たかだか3ヶ月間、まさにあっという間のことであった。

 このために法案提出前においては勿論のこと、法案提出後においても、わが国おける従前の秘密保全の体制と問題点、秘密保護制度を新たに設けることの可否・必要性の有無及び妥当性、わが国おける公文書の管理・保存・公開の実情と諸外国との比較・改善のための施策、わが国における行政情報の開示制度・その運用実情と諸外国との比較・改善のための施策、仮に新たに秘密保護制度を新たに設けるとした場合、憲法の諸原則に照らしその運用の適正を確保するための措置(秘密指定を限定するための工夫、諸外国の実例と遜色のない独立した多元的な監視・監督機関の設置)を、冷静に検討し、議論をすることが全くできないままであった。

 私たち国民は、昨年9月に実施された法案概要に対するパブコメに、わずか2週間という短期間にもかかわらず69,579件もの反対意見(総数は90,480件)を寄せ、その後、短期間に大きな反対運動のうねりで、政府を追い詰め、腰のふらつく一部野党も反対、修正の姿勢をとらなければならない状況を作り上げることができた。これは、今後、秘密法廃止への大きな力となることは間違いない。

 しかし、私たち国民は、法案の治癒不能な問題点を指摘し、廃案を求めたのではあるが、上記の議論を深めることはできないままでいる。そこで、今後秘密法施行を向かえて、これを無効化し、ついには廃止へと見通すために、以下の3つの視点を提起したい。

① わが国の行政機関は、公文書を保存せず、廃棄し、隠蔽する実務慣行に骨の髄までひたりきっている。これは戦前から一貫していることである。こうした実務を転換し、公文書を保存・公開を徹底するために、2009年制定・2011年施行の「公文書等の管理に関する法律」(「公文書管理法」)を抜本的に改正・強化する。これはとおりいっぺんの法制度でこと足るわけではなく、公務員の倫理感と国民の意識というソフト面での改革と、国立公文書館の人的・物的両面の大拡張というハード面で改革を成し遂げなければならない。その点で、内閣府に設置され、今、進行中の「国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議」の動向にも、私たち国民は目を向ける必要がある。

 例えば、「諸外国の国立公文書館の比較」と題する資料が同会議で配布されている。以下で閲覧することができるので是非ご覧頂きたい。

 http://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/kentou/20140516/siryou3-4.pdf

 わが国の公文書管理・保存の仕組みの立ち遅れは一目瞭然だ。こういう資料は大いに活用したいものだ。

② わが国の行政情報開示制度は著しくいびつなものである。国の行政機関の保有する情報を開示させるための制度は、先進諸国に遅れることおよそ20年、1999年に制定され、2001年に施行された「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(「情報公開法」)によって、ようやく整備された。しかし、先進諸国と比較して、現行制度は著しく見劣りがする。第一には、法5条第3号、4号により、安全保障に関わる情報、外交に関する情報、犯罪捜査等に関する情報については行政機関の長の不開示判断を覆すことが殆ど不可能な定めとなっていることである。第二には、不存在を理由とする不開示については請求者側が存在を証明しなければならないとの運用(2014年7月14日沖縄密約開示請求事件最高裁判決)、第三に不開示を争う訴訟において裁判所が当該情報を記録した文書等を直接検証して不開示の当否を判断する手続が法定されていないこと、その他手数料の問題、文書検索のシステムの不備などが指摘されている。
 これらを改善し、情報公開の実を上げるためには「情報公開法」の抜本的改正が必要である。私たち国民は、これを要求し、秘密法に対抗する政治上の争点としていく必要がある。

③ 秘密法は、その由来から見ても、また現実の狙いからしても、日米同盟の深化、米軍と自衛隊の一体的運用、集団的自衛権行使と連動し、それの潤滑油的役割を果たすものである。従って、秘密法の廃止は、軍事によらず政治・外交交渉を基本として平和を守るという憲法9条の理念を生かす運動の一部として位置づけられる。   (了)

※久保亨・瀬畑源「国家と秘密 隠される公文書」(集英社新書)はタイムリーな好著、是非お読み下さい。
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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