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蛸が自分の足を食らうような倒錯した構造

 私は経済・財政の素人であるから大きな誤りがあるかもしれないが、敢えて日頃抱いている問題意識を披瀝してみることとする。間違いがあれば是非ご教示願いたい。

 雑誌『世界』12月号の高橋伸彰氏(立命館大学教授)が『アベノミクスに対する尽きない疑問』と題する短い論文を書いておられる。その論文中において、私の漠然と考えていた事実をきれいに整理してくれている。それは以下の事実である。専門家にとっては当たり前のことかもしれないが、おそらく多くの人は、私同様きちんと整理できていなかったのではないかと思うがいかがであろうか。
 とまれこれらは、日本経済の現状を考えるにあたって、極めて重要な事実であると思う。

第一の事実・・・税収の激変
 1991年度と2012年度は、名目GDPは470兆円台でほぼ同水準であるのに、所得税収は26兆円から14兆円に、法人税収は18.4兆円から8.6兆円に激減している。(なお、これは上記論文中では指摘されていないが、同じ年度比較で、消費税収は5兆円から10.4兆円に増大している。)
 名目GDPが同一水準なのに、何故、所得税収と法人税収がかくも大幅に減ったのか。その理由としては、前者については累進税率の緩和(1991年度は課税所得2000万円超に対し50%であったが、2012年度は課税所得1800万超に対し40%)や不動産譲渡益に対する軽減税率の適用、後者については法人税率の大幅引き下げ(1991年度は40%、2012年度は25.5%。各種特別措置を受けやすい大企業においては、実質税率はさらに低くなる。)が、指摘できる。

第二の事実・・・財政赤字の大幅な増大
 財政赤字は、1991年度末で172兆円であったのに対し、2012年度末には705兆円に増大、安倍政権発足後も更に増勢を続け、2014年度末には780兆円となる見通しである。

 さて以下では上記論文とは離れて、私の考えを述べることとする。私は、これら二つの事実は、わが国経済・財政に大きな歪をもたらしているのではないかと思うのである。

 まず税収構造が、大きな利益をあげた者、大きな所得があった者の担税力に着目し、その担税力の大きさに応じて税を負担させるというものから、商取引から生存確保のための消費取引に至るまで、広くくまなく、等しい税率で負担させるというものに、変わってしまった。これは税思想の根本的転換、即ち税による富、所得の再分配を行うという思想から誰もが等しく負担するという大衆課税、形式的平等主義への転換でもある。

 同時に、それは、富裕層から厚く税をとり、それを低所得者の生活向上の原資にまわすという福祉国家の理念との訣別であり、レッセフェール、自己責任原則が跋扈する新自由主義への移行でもある。

 これによって企業や個人の思考や行動も抜本的に変化していく。大きな収益をあげた企業においては、収益のうち企業内にストックされる部分が確実に増大する。また高額所得層は所得の大部分をため込むことになる。それらはどこに行くか。債権市場や株式市場に流入することになることは言わずもがなである。利益を得るためのショートカットであり、ここにわが国経済の寄生的構造の変質の第一歩が始まる。
 やがてその規模は無限に拡大していく。企業や高額所得層のため込んだ富は、各種債権への投資や株式への投資に特化し、設備投資や消費にまわされない。わが国経済の成長はとまることになる。

 債券市場に流れ込んだ潤沢な資金によって、国債は安定的に買い支えられる。政府は安心して赤字国債を発行し、財政赤字が定常化し、拡大する。その繰り返しにより、上記の天文学的財政赤字が生み出されたのである。そうなると政府は、財政赤字がはじけてしまわないように、大企業や高額所得層の優遇をし続けなければならない事態に至る。わが国財政も、経済の寄生的構造の上にさらに寄生をすることになる。

 一方、その対極にある一般国民においては、窮乏化が進行する。厚生労働省が本年7月にまとめた「国民生活基礎調査」によると、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額に当たる「貧困線」(2012年は122万円)に満たない世帯の割合を示す「相対的貧困率」は、16.1%にものぼっている。

 経済・財政の寄生性とそこから吐き出される膨大な貧困層、これが現在の日本の経済・財政の特質である。アベノミクスは、そこにメスを入れるのではなく、さらに輪をかけて進めて行こうというものであり、破綻は最初から宿命づけられている。 (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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