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国会議員の定数削減は民主主義の形骸化を進める


 民主主義という言葉を広辞苑でひくと次のように説明されている。

 「[民主主義] (democracy)語源はギリシャ語のdemokratiaで、demos(人民)と kratia(権力)とを結合したもの。すなわち人民が権力を所有し、権力を自ら行使する立場をいう。古代ギリシャの都市国家で行われたものを初めとし、近世において市民革命を起こした欧米諸国に勃興。基本的人権・自由権・平等権あるいは多数決原理・法治主義などがその主たる属性であり、またその実現が要請される。」

 わが日本国憲法のもとでは、国民主権と、基本的人権を尊重・擁護するための立憲主義にもとづく政治システムと言い換えてもよいだろう。そのためには国権の最高機関たる国会が、国民の声を可能な限り公正・平等に反映できるように構成され、活発かつ真摯な議論を通じて十分な審議を行い、少数意見の尊重を図りつつ、最終的には多数決によって決することとするという制度設計がなされていなければならない。

 かつて、わが国において、衆議院議員選挙に小選挙区制を導入するに際し、二大政党制と政権交代、多数派による安定政権づくりのための「政治改革」として称揚され、それが唯一の選択肢であり、これに反対する勢力は改革を妨害する守旧派であるかのごとく、政権政党側とマスコミ及び政治学者らが一体となったキャンペーンが展開されて。だが、そのようにして導入された小選挙区制によって、得票率と獲得議席とが著しく乖離し、民意に反するとさえいえる安定多数政権が出現することになり、その一方で、大量の死票と棄権・白票の発生による少数意見と小規模政党の切り捨てが現実化した。そしてそれがもたらしたものは、大量の有権者の反選挙・非選挙志向であり、選挙のパロディ化であり、民主主義の危機である。
 
 今、この小選挙区制導入時に展開されたことと似通ったことが起こっている。それは「身を切る改革」と称されている国会議員の定数削減問題である。2年前、2012年11月14日、当時の野田首相は、安倍自民党総裁との党首討論で、次のように述べた。

 「定数削減は、2014年に消費税を引き上げる前に、まず我々が身を切る覚悟で、具体的に定数削減を実現しなければいけないと思っております。我々は、45削減をする、ゼロ増5減含めて、45減の法案を今日提出を致しました。是非、御党におかれても、元々マニフェストで、国会議員の1割削減と訴えてたはずじゃありませんか。衆議院議員は480です。1割削減だったら48、細田試案だって30削減言ってきた。何としても一票の格差と定数削減、これも今国会中に実現をする。それを是非お約束していただければ、今日、近い将来を具体的に提示をさせていただきたいと思います。」

 これを引き取って、安倍氏は、次のように応じた。

 「定数是正の問題、そもそもこの党首討論において、野田総理、総理は、憲法違反と言われている定数是正を先行させる、そう約束したじゃないですか。それをまた違えるんですか?確かに私たちも定数削減をしようとしていますよ。しようと思いますよ。定数の削減と、選挙制度の改正というのは、民主主義の土俵ですよ。なるべく多くの政党の皆さんが議論に参加をして、賛成できる環境を、たとえば議長が斡旋をして作ってくる、ずうっとこうやってきたではないですか。これが直ちに前に進まないから、まずはゼロ増5減、定数是正、そして憲法違反の状況を解消する。直ちに皆さんがこれに賛成すれば、もう明日にもこれは成立をしますよ。決断してください。」

 本年11月20日付「朝日新聞」社説は、このやりとりをとりあげて、定数削減の約束を安倍氏がしたのに、その後政権獲得するや、実行していない、重大な約束違反であると断じている。かつての小選挙区制導入について、「朝日新聞」は、旗振り役、急先鋒であった。編集委員(政治担当)としてその一端をになった石川真澄氏は、反省の弁を述べているが、「朝日新聞」としてはほうかむりしている。「朝日新聞」は今またその轍を踏もうとしているようだ。

 また自民、民主、公明、維新、次世代は、いずれも定数削減を公言している。たとえば本年11月23日に放映されたNHK「日曜討論」で、福山哲郎民主党政調会長が、「消費税を上げることに自民党、公明党の協力をいただいた。そのときに当時の安倍晋三自民党総裁は議員定数削減を約束したのに、全く音沙汰がない」と自民党に鉾先を向け、稲田朋美自民党政調会長が「確かに約束した。自公は30定数削減案を示した」と応えている。

 しかし、定数削減は、それだけ国会をやせ細らせ、国民の意思を反映するためのパイプを細くしてしまうことになる。民主主義が、天皇主権のもとでいまだ民本主義などとしかいえなかった時代、ようやく1925年に普通選挙法が制定され、1928年に普通選挙法による最初の衆議院議員選挙が行われた。このときの衆議院議員定数は466、議員一人あたりの人口は12.8万人であった。現在は、定数475、議員一人当たりの人口は26.7万人。はるかに国民の意思を反映するパイプは細くなっている。

 議員定数削減は、「身を切る改革」の美名のもとに民主主義を一層形骸化するものである。政治家が「身を切る」というなら、議員歳費の引き下げであり、政党助成金の廃止であろう。(了)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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