まだまだ出てくる特定秘密保護法の問題点

 私は、朝日新聞を基本紙とし、喫茶店で地元の神戸新聞を読み、その他ネット上で各紙のニュースや論評を拾って、政治、経済、社会に関する諸問題を考える材料としているが、当今、「赤旗」の紙面を参照することも多くなった。政治的立場はともかくとして、「赤旗」が報ずる情報にも目配りが必要なようだ。

 昨年12月28日と本年1月5日の「赤旗」は、これまで知られていなかった特定秘密保護法の法案作成過程で隠蔽された重要な事実を報じている。「赤旗」が情報開示させた資料に基づくものだ。こんなことが国会審議の場で明らかになっていたら、大きな波乱を呼んだことであろう。

その1
「内閣情報官が特定秘密保護法の運用に関与し、重要な役割を果たすことに対し、内閣法制局担当官が疑問を提起していた事実」

 2013年9月13日作成の特定秘密保護法素案の付則第5条に、内閣法を一部改正して、内閣情報官の事務権限に「『特定秘密の保護に関するもの(内閣広報官の所掌に属するものを除く)及び』を加える」とされていることに対して、内閣法制局担当官が、「何をやるのか」、「そういうものを情報官がやっていいのか」と書き込み、疑問を提起していたことがわかった。
 内閣情報官とは、日本版CIAともいうべき内閣情報調査室のトップであり、歴代、警察庁の警備・公安畑の幹部経験者が就任しており、その職務は、従前、「内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務」を掌理することとされていた(内閣法18条2項、12条2項6号)。そのような隠微な情報収集事務を掌理する内閣情報官が、特定秘密の保護に関する事務を担当することに、内閣法制局担当官は、政府の法律顧問的な立場で、おそらくコンプライアンスの観点から疑問を提起したのであろう。
 しかしながら、政府は、内閣情報官の事務に「特定秘密の保護に関する事務を掌理」することを追加する内閣法の一部改正を強行してしまった。内閣法制局の担当官の疑問は無視されたのである。

その2
 「有識者委員から、本法制が国民の重要な権利利益に対する重大な脅威となり得ることが指摘されていた事実」

 特定秘密保護法の基礎となった2011年8月8日付「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議)の作成過程で、以下のやりとりがあったことが明らかになった。
 同会議の事務方を務めた内閣情報調査室が用意した文案には、「本法制は、その趣旨に従って運用されれば、国民の知る権利との関係で問題を生じたり、取材の自由を不当に制限したりするものではない」と書かれていた。これに対し、有識者委員らは、「むしろ危険性は指摘しておく方が、説得力がある。絶対安全という論調は、今となってはとり得ない」とコメントをし、上記記述を削除し、「ひとたび運用を誤れば、国民の重要な権利利益に対する制約する重大な脅威となる可能性が皆無とはいえず、国民主権のもと、国民による不断の監視が求められる制度であるということは、とくに強調しておくべできあると考える」(原文のママ)と記述するべきだとした。
 実際の成案では、この部分は、有識者委員の意見はややトーンダウンされ、「ひとたび運用を誤れば、国民の重要な権利利益を侵害するおそれがないとは言えないことから、国民主権の理念の下、政府においてはその趣旨に沿った運用を徹底することが求められ、また、国民においてはその運用を注視していくことが求められる制度であることは、特に強調しておきたい」と記述されるに至った。

 特定秘密保護法の運用事務を内閣情報官が掌理することは特定秘密法制の運用を秘密のヴェールで覆うことになる。内閣法制局担当官の疑問は正当であった。これを無視し、あるいは国民に隠蔽して国会審議を強行し、成立させられた本法には重大な瑕疵がある。

 本法案の審議において、安倍首相らは、特定秘密保護法制は、国民の権利利益を侵害することはあり得ないとの安全神話をふりまいたことは記憶に新しいところである。しかし、有識者委員らから上記のごとき指摘がなされていたことは極めて重大である。これを隠蔽して成立させられた本法には重大な瑕疵がある。

 政府は1月9日、特定秘密保護法に基づいて指定した特定秘密が、昨年末現在で計382件)にのぼると発表した。行政機関別で最も多いのは防衛省の247件、その他は内閣官房49件、外務省35件、警察庁18件、海上保安庁15件、公安調査庁10件、経済産業省4件、総務省2件、国家安全保障会議1件、法務省1件だった。しかし、本法は、廃止に至るまでずっと欠陥法であるとの追及を受け続けるであろう。(了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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