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安倍首相の下での安保法制整備の検討はやめよう!

 安倍首相は、2日の参議院予算委において、今回の日本人拘束事件に関して、救出のために自衛隊を用いることは、(領域国である)シリアの同意を得られないこと、拘束場所の特定ができないなど自衛隊のオペレーション(任務遂行)ができるかという基本的な大問題もあるとして、困難であるとの見方を示しつつ、今後、救出を可能にする議論を行って行きたいと、未練たっぷりの答弁をした。
 安倍首相は、さらに3日の参議院予算委では、「警察権の行使として、受け入れ国の了承があり、『国に準ずる組織』がいない中で可能にするための法改正を準備している」と述べ、今回の事件で自衛隊を救出作戦に投入する法改正に前のめりの姿勢を示した。同時に、そのようなオペレーションにおいては武器使用基準を緩和する考えも明らかにした。

 安倍首相のこのような答弁の基礎にあるのは、昨年7月1日の「集団的自衛権行使容認閣議決定」である。

 「集団的自衛権行使容認閣議決定」には、第2項(2)ウにおいて、領域国の同意のもとで、武器使用を伴う邦人救出活動ができるように法整備をすることが明記されている。そのような救出活動は、単なる警察活動であって、「武力の行使」にはあたらず、憲法9条に抵触しないというのである。何故なら、領域国の同意が及ぶ範囲では、邦人に危害を及ぼしている当の相手方は、国家でないことは勿論、「国家に準ずる組織」でもないことを意味し、単なる犯罪集団に過ぎないからであると。

 しかし、このような論理は、いかにも単細胞的であり、複雑な現実の事象を思い切り単純化した机上の論理である。

 まずこの論理の前提には、憲法9条によって禁じられている「武力の行使」とは、「国家もしくは国家に準ずる組織」を対象としており、単なる犯罪集団に対する武器使用はこれにあたらないとの割り切りがある。しかし、現実の事象は、このような単純な割り切りはできない。たとえば今回のイスラム国であるが、これは「国家」を名乗っている。仮にそれが虚構であるとして、武力で一定の地域を支配していることは間違いないから「国家に準ずる組織」となると考えられる。しかるに政府はこれを単なるテロ集団、つまり犯罪集団だと言い切っている。政府の言い分では、自衛隊がこれと武器をもって銃火を交えても「武力の行使」ではないことになる。そのようなことが果たして妥当なのか。
 私は、自衛隊なる重装備の軍事組織が、武装した集団を相手として出動すること自体が既にして「武力の行使」である、それに対して、軽装備の警察組織が、自己もしくは第三者の生命・身体を守るために必要な最低限度の武器使用をすることは「武力の行使」にはあたらない、このような明快な基準によって区分をするべきだと考える。「国家もしくは国家に準ずる組織」論は、自衛隊を海外派兵するために小ざかしい外務・防衛官僚やそれに追随する学者がひねくり出したマジックである。

 次に、百歩譲って、「国家もしくは国家に準ずる組織」論に立ったとしても、領域国の同意によって、当該領域国の支配の及ぶ範囲では、全ての武装集団を「国家もしくは国家に準ずる組織」にあたらず、単なる犯罪集団に過ぎないと論にも重大な疑義がある。当該領域国が、自衛隊の救出作戦に同意する場合というのは、相手方武装集団を自力では制圧できない場合であることが一般的であると考えられるからである。いかなる主権国家も、外国の軍事組織は勿論、警察組織であっても、外国の暴力装置たる組織に、自国領域を蹂躙されることを拒絶するものだ。そのようなことを受け入れて何の痛痒も感じていない国は、世界広しといえどもそんなにあるものではない。わが国は、例外的な国なのだ。その例外国の卑屈な自己意識をもって他国のビヘイビアを推断してはいけない。大多数の国は、自国の力で措置できることは全てやる筈、外国の暴力装置たる組織の介入に委ねるのは、それができない場合であろう。即ち、領域国が同意するときは、当該武装集団が、「国家もしくは国家に準ずる組織」に匹敵するほどの強力な敵である場合であると考えられるのである。

 さらに過去、軍事組織が、不法に拘束された自国民の救出作戦を敢行したケースは、多くの失敗に帰し、かえって多くは犠牲者を出し、むしろ紛争を激化、拡大しているのである。逆に無事救出できたケースは、どんなに極悪な集団であっても、安倍首相のごとく一切接触も交渉もしないなどというお山の大将のような態度をとるのではなく、苦渋と汚辱にまみれた交渉を続けた場合が大半である。こうした経験知をこそ、わが国は大切にしなければならない。

 自衛隊を速やかに救出作戦に投じることができるようにしなければならない。そのためには憲法改正してもいいではないかとけしかける愚かな議員もいる。衝撃的な悲劇的事件が発生したあとには、こうした勇ましい、鉄火場の兄さんもどきの言動が支持を受ける。安倍首相にも、そのような鉄火場の兄さんもどきのエートスがあるようだ。

 こんなときには、安保法制整備の検討は差し控えるべきである。

 少なくとも彼の下での安保法制整備の検討はやめようではないか。立ち止まり、熟慮して、危険な道に踏み込むことを回避したいものだ。世界の平和と国際秩序の安定に貢献する道は、自衛隊の活用以外にいくらでもある。日本の世界におけるレーゾンデートルは、憲法9条にある。今こそ、わが国民は、理性を失わず、叡智を結集するべきときである。(了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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