スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「慰安婦」問題の記事に藉口した言論抑圧を弾劾する

 雑誌『世界』2月号に掲載された元朝日新聞記者植村隆氏の手記『私は闘う』を読んだ。サブタイトルに「不当なバッシングには屈しない」との決意がしたためてあるが、心底から激励と連帯の声をかけたくなった。植村氏に浴びせられた一連の攻撃は、単なるバッシングではなく、明白な犯罪行為にあたる。
 その中心に位置していたのは『週刊文春』の記者某であった。彼の取材にかこつけてした行為はわが法治国家においては許されるべきことではないし、彼が書いた『週刊文春』記事の内容も誹謗中傷の類で、侮辱、名誉毀損以外のなにものでもない。

 「この記事をめぐっては現在までにさまざまな研究者やメディアによって重大な誤り、あるいは意図的な捏造があり、日本の国際イメージを大きく損なったとの指摘が重ねて提起されています。貴大学は採用にあたってこのような事情を考慮されたのでしょうか」。昨年1月27日、『週刊文春』記者某が神戸の松蔭女子大学に送りつけた質問状からの抜粋だ。

 ここに、この記事とあるのは、植村氏が書いた1991年8月11日付朝日新聞大阪本社版の社会面トップに載った記事をさしている。これは、匿名の韓国人元「慰安婦」の証言を報じたものであった。これが報道された後、その匿名の元「慰安婦」は実名で記者会見し、これに勇気をもらった韓国人元「慰安婦」らから次々と証言が寄せられるようになり、韓国において「慰安婦」問題は大きくクローズアップされることになったのであった。
 この記事は今から振り返れば若干の不正確さを指摘できるかもしれないが、大筋において間違いはなく、捏造などという非難は到底あたらない。むしろ先のアジア太平洋戦争にまつわる史実を掘り起こし、わが国の戦後処理の問題点を明らかにするとともに、植民地や占領地域における戦争犠牲者の声を闇から拾い上げ、戦争責任を今に問うというジャーナリズムの本道をいく記事であったといえるのである。

 この記事が報じられた1991年8月以後、「慰安婦」問題は、国内外において、政治・外交の場面で、あるいは裁判の場面で、多くの証拠資料がつきあわされ、その実相が浮き彫りにされてきた。「慰安婦」とは、いまや、植民地や占領地において、甘言、欺罔、強迫、人身売買その他一部には有形力の行使により駆り出され、日本軍の強制下において、日本軍兵士らの性欲処理の道具として使役された性奴隷であったことが明らかになっている。
 「慰安婦」問題は、河野談話を産み、一定の解決への筋道も用意されたが、わが国の真摯な謝罪と慰謝の措置があいまいにされた状態での解決には応じられないとの元「慰安婦」の対応や韓国世論の突き上げの中で、いまも日韓の重要な懸案事項となっている。
 その長い「慰安婦」問題史において、植村氏の書いた記事は、一つの過去のエピソードとして名残を止めているに過ぎなかった。状況はずっと先に進んでいたのであり、特定の意図をもった人たち以外には、これを掘り返すようなことはしないであろう。特定の意思を持った人たちとは、「慰安婦」問題を打ち消し、日韓の緊張と対立を煽ることに存在意義と利益を見出そうとする右派政治家、右派政治集団及び右派ジャーナリズムである。

 植村氏の書いた記事に、『週刊文春』記者某は、執拗にくらいついた。あろうことか植村氏を教授として採用したことが間違いであることを示唆する上記の質問状を松蔭女子大学に送りつける一方で、そのころ既に『週刊文春』誌上に載せる記事を書いていた。
 昨年1月末発売の『週刊文春』2月6日号は嫌韓特集を組んでいた。その中の一つの記事が彼が書いたものである。そこで彼は、「“慰安婦捏造”朝日新聞記者がお嬢様女子大教授に」との見だしで、植村氏の書いた記事を「捏造」と決め付け、「本人は『ライフワークである慰安婦問題に取り組みたい』と言っているようです」と、全く事実無根のことを書いたのである。ネット上では、植村氏バッシングが広がった。その火付け役となったのは「チャンネル桜」に流された「逃げるな!朝日新聞・植村隆記者よ」という番組であった。なんとそこに登場したのは、植村氏を朝日新聞函館支局に訪ねて『週刊文春』記者某と行動をともにした女性ジャーナリストだったという。なんと周到な仕掛けをしくんだものだろう。

 植村氏は既に松蔭女子大学の教授となることが決まっていた。『週刊文春』記者某は、植村氏の採用を取り消させることを意図したとしか考えられない。実際、同大学に抗議の電話や、採用を取り消すように要求するメールが殺到する。中には「街宣活動」をするとの脅しさえあったという。
 そのような渦中に巻き込まれた松蔭女子大学側は、そのような攻撃と闘う道をとらず、植村氏に採用辞退、即ち雇用契約の任意解除を求めてきた。これに対し、植村氏は、大学側も被害者と考え、やむなくこれを受け入れたのであった。

 しかし、それでことは終わらなかった。今度は、植村氏が非常勤講師をしている北海学園大学に鉾先が向かったのである。植村氏を切れといういやがらせの電話、メールが殺到した。北海学園大学に脅迫状を送った男が検挙されたことも昨秋報道されている。だが驚くべきが、植村氏の手記で明かされた。かの『週刊文春』記者某は、昨年8月1日、「(植村氏につき慰安婦問題記事で重大な誤りが指摘されているとして)大学教員として適性に問題はないとお考えでしょうか」という質問状を送っていたのである。これは松蔭女子抱く学への質問状と同じく植村氏をやめさせることを意図したものとしか考えられない。

 幸い植村氏への支援の輪が広がり、大学側は、一時動揺したものの今は不当な嫌がらせに屈しないとの態度を固めているとのことである。また植村氏に対する法的なサポート体制も中山武敏弁護士を筆頭に多数の弁護士が結集して弁護団体制が組まれているとのことである。
 植村氏とご家族の平穏を祈ってやまない。そのためには不当な攻撃を跳ね返す多くの人々の励ましと、言論抑圧は許さないとの世論の盛り上がりが必要である。

 『週刊文春』記者某の一連の行為は、取材の自由、表現の自由の範疇におさまるものではなく、偽計による業務妨害、名誉毀損に該当する犯罪行為として適正な法的制裁を受けるべきである。このようなことを決して許してはならない。
同時に、最近の一部週刊誌は、売れれば何でも書く。明らかにジャーナリズムの一線を越えている。恥を知れと言いたい。(了)
スポンサーサイト
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。