安倍首相の「戦争立法」記者会見を斬る

5月14日、安倍首相は、戦争立法閣議決定後に記者会見を行いました。その発言全文が内閣官房のHPにアップされています。合計約9500字、まぁ、なんと冗舌なことでしょう。この程度のことを言うだけなら、1000字もあれば十分足りるでしょう。彼の冗舌は、戦争立法の恐るべき真実の露見を防ぐめくらましなのでしょう。

安倍氏曰く、「70年前、私たち日本人は一つの誓いを立てました。もう二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない。この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく。」と。
日本国憲法はその誓いの結晶です。しかるに、あなたは、それを押し付け憲法とののしり、その改変を呼号しています。こういのを二枚舌と言うのです。

安倍氏は「国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この決意の下、本日、日本と世界の平和と安全を確かなものとするための平和安全法制を閣議決定いたしました。」と言っています。「平和安全法制」とは、またみごとにきれいな花で飾ったものですね。でもねぇ、昔からきれいな花にはトゲがあるって言うでしょう。また衣の下に鎧ともいいますね。

安倍氏は、一転して国際社会の厳しい現実を語ります。そして「私たちはこの厳しい現実から目を背けることはできません」と不安をあおりたてます。でもしっかり見抜きましょう。考えてもごらんなさい。日頃、言い争いばかりしている人が、まわりにいっぱい敵をつくり、「厳しい現実」を語っても、誰も相手にしませんよね。ご自分で「厳しい現実」を招きこんでおいて、それで人々の不安をあおろうとしても、そうはいきません。

安倍氏は、総理就任以来、近隣諸国との対話を重視し、地球儀を俯瞰した平和外交を展開してきたと自画自賛しています。しかし、お忘れですか?それとも敢えてフタをしようとされているのですか?あなたは、アジア侵略の事実を否定し、慰安婦問題、靖国参拝、さらに河野談話と村山談話の見直しに言及し、近隣国との対立を深めてきましね。ISの人質虐殺を招き寄せたカイロでの挑発演説もありましたね。私たちは決して忘れたりしませんよ。

安倍氏は、「厳しい現実」をあおりたて、「同時に、万が一への備えも怠ってはなりません。そのため、我が国の安全保障の基軸である日米同盟の強化に努めてまいりました。」と述べます。延々と枕詞が続きましたが、ここからが安倍氏の言いたい本論に入るのですね。さて、早速、言葉を返すようですが、今の日本の防衛体制や日米軍事協力の実態は、「万が一への備え」をはるかに凌駕しています。重武装をしながら、「万が一への備え」もあったものではないでしょう。

安倍氏「〈米軍は〉安保条約の義務を全うするため、日本近海で適時適切に警戒監視の任務に当たっています」。そうでしょうか。米国はそんなに善たる国ではありませんよ。戦後の日米関係の歴史をひもとけば、米国は、一貫して、わが国をその世界戦略、国益伸張の道具にしてきたことがわかります。米軍の展開と活動が、無条件にわが国の防衛の任務にあたるものだという見解は、あまりにも現実無視、戦後日米関係史の無知に基づくものと言わざるを得ません。米軍の展開と活動は、米国独自の世界戦略と国益伸張のためのものであると見るべきことは常識ですね。

安倍氏は続けます。「私たちのためその任務に当たる米軍が攻撃を受けても、私たちは日本自身への攻撃がなければ何もできない・・・本当にこれでよいのでしょうか」。待ってくださいよ。わが国は、戦後70年の今日も米軍に広大な基地を提供し、膨大な国費を注入してきました。沖縄では県土の面積の18%もが、米軍基地に接収されたままですよ。それによってどれだけの犠牲を強いられてきたことでしょうか。逆に私は安倍氏に問いたい。「本当にこれでよいのでしょうか」と。

安倍氏は「日本近海において米軍が攻撃される、そういった状況では、私たちにも危険が及びかねない。人ごとではなく、まさに私たち自身の危機であります。」と得意のきびす返しをして、国民に迫ります。しかし、それならそんな米軍にはサッサと退去願おうと反論しようではありませんか。米国の世界戦略と国益伸張のためにわが国を危険にさらすようなことはやめてもらいましょうと。

安倍氏は、存立危機事態で自衛隊を防衛出動させる許し難い憲法9条蹂躙に対し、「3つの要件による厳格な歯止めを法律案の中にしっかりと定めました。さらに、国会の承認が必要となることは言うまでもありません。極めて限定的に集団的自衛権を行使できることといたしました。」などとあっさり片付けています。なんと空しい言葉でしょうか。ごまかしですね。まぁ、はじめから米国とともに戦うためだなどは言えませんからね。

追い討ちをかけるように安倍氏は「それでもなお、アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか。漠然とした不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。」と続けます。しかしねぇ、むしろそれが健全な常識を持つ多数の国民が抱く不安ではないでしょうか。それは漠然とした不安ではありません。それには確たる根拠があります。米国は、戦後、殆ど途切れることなく、世界で戦争を続けてきましたからね。北東アジア、東南アジア、中南米、中近東と、本当に世界をまたにかけてね。

安倍氏は「日本が武力を行使するのは日本国民を守るため。これは日本とアメリカの共通認識であります。」と言います。つい口がすべったのでしょうか。ご自分が直前で「私たちのためその任務に当たる米軍が攻撃を受けても、私たちは日本自身への攻撃がなければ何もできない・・・本当にこれでよいのでしょうか」と述べたことを忘れてしまったようですね。

「もし日本が危険にさらされたときには、日米同盟は完全に機能する。そのことを世界に発信することによって、抑止力は更に高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくと考えます。」と安倍氏は、高潮してご託宣をしています。しかし、これはまぁなんと古い考えでしょうか!これは力の均衡論、パワー・オブ・ポリティックスです。この考え方は、古来、「安全保障のジレンマ」といわれる困難な事態を招き、結局は雌雄を決する戦争に至ります。

 
安倍氏曰く、「ですから、戦争法案などといった無責任なレッテル貼りは全くの誤りであります。」と。しかし、今回の安全保障法制は戦争立法であるというのは無責任なレッテル張りではありません。まさに本質をついています。私の下記小論をご一読下さい。きっとおわかり頂けるでしょう。

「『戦争立法の恐るべき真実』
http://t.co/nULN1oMXIS

あわせて5月14日付け下記日弁連会長声明もご覧ください。

http://t.co/DmacNCNZs6
                                                          (了)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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