専守防衛が堅持される?それほんまかいな~?


東京新聞5月13日付朝刊に載った次の短い記事に目がとまった。

 「中谷元・防衛相は十二日の参院外交防衛委員会で、日本が掲げてきた『専守防衛』の定義に関し、他国が攻撃されたときに反撃する集団的自衛権の行使も含まれるとの考えを明らかにした。これまでの政府見解を事実上変更した発言だ。
 『専守防衛』は戦争放棄と交戦権の否認などをうたった憲法九条に基づく日本の防衛政策の根幹となる考え方。政府は『相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使する』と定義、防衛白書にも明記している。
 しかし、中谷氏は憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めた昨年の閣議決定に基づき、専守防衛は『他国への攻撃でも国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合も含むと解している』と述べた。政府は集団的自衛権の行使も『自衛の措置』と説明しており、中谷氏は『(集団的自衛権は)他国防衛が目的でなく、専守防衛の定義に何ら変更はない』と強調した。質問した民主党の小西洋之氏は『こうした読み替えは許されない。専守防衛の精神が安倍政権によって変えられてしまった』と批判した。」

 昨年7月1日の閣議決定「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(以下「7.1閣議決定」という。)は、切れ目ない自衛隊を海外派兵と世界各地の武力紛争へのわが国のコミットメントを進めるためのマスタープランであった。その後10ヶ月をかけて作成された「戦争法案」は、7.1閣議決定をめいっぱいふくらませ、おなかをパンパンにした状態で、5月15日に、国会提出された。

 こうして、今、作られようとしている「戦争法制」の下では、わが国の防衛の基本方針たる「専守防衛」は公然と廃棄される運命にあると私は考えている。ところが、上記の記事によると、政府は「専守防衛」は、なんらの変更もなく維持すると言い張っているようである。

 では自民党はどうだろうか。自民党安全保障法制整備推進本部は「切れ目のない『平和安全法制』に関するQ&A」なる文書を、同日作成している。これに目を通してみたら以下の問答が記されていた。

問18 「専守防衛」の変更になるのですか?
答18 昨年7月1日の閣議決定においても、憲法第9条の下で許容されるのは、あくまでも、国民の命と平和な暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置としての「武力の行使」のみです。引き続き、「専守防衛」を堅持していくことには変わりはありません。

 政府も自民党も、「専守防衛」は堅持すると言っている。関西では、「それ、ほんまに言うてんの~?」と突っ込まれそうだが、本当である。

 さらに、日米両政府が4月27日に合意した新たな日米防衛協力のための指針(以下「新ガイドライン」という。)には、第二章「基本的な前提及び考え方」において、「(新ガイドラインで合意された)日本の行動及び活動は専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる」と明記されている。新ガイドラインは、7.1閣議決定と上記「戦争法案」の対米約束版である。そこでも「専守防衛」堅持となっているのだ。

 さて、これをどう理解するべきであろうか。上記の記事によると、民主党の小西洋之議員は、「こうした読み替えは許されない。専守防衛の精神が安倍政権によって変えられてしまった」と批判したとのことであるが、もう少し掘り下げて考えてみよう。

 まず「専守防衛」の沿革をざっと見てみよう。

 わが国で、「専守防衛」なる用語がはじめて政治の場に登場したのは、1955年7月のことであった。航空自衛隊の戦闘機その他の航空機の整備にかかわる国会論戦の中で、杉原荒太防衛庁長官が、次のような答弁をしたのが嚆矢である。

 「厳格な意味で自衛の最小限の防衛力を持ちたい。・・・決して外国に対し攻撃的・侵略的空軍を持つわけではない。もっぱらの専守防衛という考え方でいくわけです。」

 1970年10月に、わが国初の「防衛白書」が発行されたが、そこにおいて「わが国の防衛は、専守防衛を本旨とする」と記載された。

 ここまでは、憲法9条の下で許される必要最小限度の実力という文脈で、「専守防衛」なる用語が用いられていることはわかるが、その意味について解説はなされていなかった。それが具体的に示されたのは、1972年10月31日、参議院本会議における田中角栄首相の次の答弁であった。

 「専守防衛は、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行うことであって、わが国防衛の基本的な方針であり、この考え方を変えるということはまったくない」

 「防衛白書」における記述はその後、1981年版において、「専守防衛とは相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限度のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」と説明されるに至り、2014年版に至るまで、この説明は踏襲されている。

 以上の沿革をたどるとき、「専守防衛」とは、自衛隊を憲法9条に適合するとなす長年にわたる国家実践の要諦をなす次の二つの政府見解の射程において構成された防衛政策の大原則であったと認めることができる。

(1)「いわゆる自衛権の限界は・・・たびたび述べておりますように急迫不正の侵害、即ち現実的な侵害があること、それを排除するために他に手段がないこと、さらに必要最小限度それを防御するために必要な方法をとるという三つの原則を厳格なる自衛権行使の要件と考える。」(1954年4月6日衆議院内閣委員会・佐藤達夫法制局長官答弁)

 これは「自衛権行使3要件」を述べたものであり、整理すると次のようになる。

① わが国に対する武力攻撃があること
② この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
③ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

(2)「①9条1項は国家固有の権能としての自衛権を認めている、②9条2項では戦力の保持は禁止されるが、自衛のための最小限度の実力の保持は認められるとの鳩山内閣統一見解(1954年12月22日衆議院予算委員会)

 ここでいう自衛権は、「自衛権行使3要件」の範囲内のものである。

                             (以下続く)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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