スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「存立危機事態でも、他国領域に派兵することはない」との安倍発言を解剖する

 5月20日の党首討論で、岡田克也民主党代表と安倍晋三自民党総裁との間で次のようなやりとりがあった。

岡田:存立危機事態について。武力行使の新3要件が満たされれば、日本の自衛隊も出ていって戦う。その場所は相手国の領土、領海、領空に及ぶか。

安倍:今までと同様、海外派兵は一般に禁止されている。他国の領土に戦闘行動を目的に自衛隊を上陸させて武力行使をさせる、領海、領空でそういう活動をする、派兵をするということはない。(中東・ホルムズ海峡での)機雷除去は、いわば「一般に」ということの外において何回も説明している。

 はたして安倍氏は、真実を述べているのであろうか。嘘に決まっているではないかとおっしゃるなかれ。少し論理的に検討してみようではないか。

 「眼にタコ」ができてしまっている人も多いと思うが、昨年7月1日閣議決定中の「武力行使三要件」を確認しておこう。

① 我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合であること
② これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
③ 必要最小限度の実力を行使すること

 ①については、二つの場合が一緒に書き込まれている。「我が国に対する武力攻撃が発生した場合」というのは、従来からある「武力攻撃事態」のことであり、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」というのが、今回、「武力攻撃事態法」あらため「事態対処法」に盛り込まれる予定の「存立危機事態」である。
 このやりとりでは、「存立危機事態」への対処がテーマとなっている。

 「存立危機事態」に関し、予定されている政府のとるべき措置は次の如くである。

① 内閣総理大臣が「存立危機事態」を認定する。
② 内閣総理大臣は事前に国会の承認を得て、自衛隊の全部又は一部に出動(「防衛出動」)を命じる。もっとも国会の承 認は特に緊急の必要があり事前に国会の承認をえるいとまがない場合には事後でもよい。
 内閣総理大臣が防衛出動命令について国会の承認を得る場合、別途、対処基本方針を作成して提出し、承認を得なければならない。その対処基本方針には以下に関する事項が記載される。
・事態の経緯、事態が存立危機事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実
・事態が存立危機事態であると認定する場合にあっては、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由
・当該武力攻撃事態等又は存立危機事態への対処に関する全般的な方針、対処措置に関する重要事項

 もっとも実際にはこのように進むことはないと考えた方がいいだろう。武力衝突・武力の行使・戦争は、法の描くストーリーに従い、法的概念と法的根拠に従って発生するものではなかったことは歴史の教えるところである。柳条湖事件後の満州における関東軍をはじめ出先の軍隊の暴走、盧溝橋事件後の現地軍の独断進撃、太平洋戦争開戦に至る過程での軍と政府一体の暴走など、武力衝突・武力の行使・戦争は法的な手続き・ルールに従いなされたのではなく、de factoに(事実上)進行したことを歴史は教えている。このことは何も我が国だけのことではない。

 今回の戦争立法において、自衛隊の部隊が、国際共同対処事態における協力支援活動(国際平和支援法)、重要影響事態における後方支援活動(重要影響事態法)、国連の統括しない国際連携平和安全活動(国際平和協力法)及び在外邦人の救出・警護活動(自衛隊法84条の3)など、なし崩し的に海外派兵されて行き、かつ派兵部隊の活動がこれまでのように抑制的なものではなくより危険なものに質的変化を遂げようとしている。
 従って、そのことによって、現地部隊が否応なく武力衝突に巻き込まれ、武力行使を余儀なくされる事態、つまり武力衝突・武力行使・戦争が、de factoに進行する事態の可能性が著しく広がってくる。政府は後追いをして、それに法的な外皮をかぶせていくだけ、という進行を考えておくべきであろう。

 それはともかくとして、事態対処法案の進行予定表に従って進むとしよう。その場合、法文上、「存立危機事態」における内閣総理大臣の防衛出動命令に地理的限定がなされることを想定した規定はどこにも認められない。

 「武力行使三要件」が打ち出される前段において、首相の私的諮問機関である安保法制懇が、昨年5月15日に提出した報告書では、集団的自衛権を次の要件のもとに認めることを提案していた。

① 我が国と密接な関係にある国が武力攻撃を受ける。
② 攻撃を受けた国から要請がある。
③ 放置すれば日本に重要な影響を及ぼす。
④ 第三国の領域を通過する際はその国の許可を得る。
⑤ 原則として国会承認を受ける。
⑥ 内閣総理大臣が行使の有効性を総合的に判断する。

 ここにおいては部隊が第三国の領域を通過する際には当該国の同意を得ることされている反面、武力行使をする場所、即ち戦闘の場所については何も書かれていない。というよりは、それは書けないのである。それを予め限定することはできないのである。何故なら、我が国と密接な関係にある国が武力攻撃を受けて戦っているとき、我が国は、後方支援をするのではなく、我が国と密接な関係のある国とともに、その敵と武力を行使して戦わねばならないからである。その場合、既に土俵は設定されており、かつ戦闘の展開とともに変動していくことになる。いきおい他国領域に戦闘の場が移っていくこともあるだろう。ともに戦う我が国が、土俵を自ら決定するわけにはいかないのは誰が考えてもわかることである。

 一方、「武力行使三要件」では、何も書かれていないから、地理的問題には一層無頓着である。しかし、戦闘現場を自ら設定できないことは同じである。このことは以下のことからも明瞭である。
 昨年7月15日参院予算委でのやりとで、日本共産党・小池晃議員は、「武力行使三要件」の2番目の要件「これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと」の「これ」とは何かという質問をしたのに対し横畠裕介内閣法制局長官は、「他国に対する武力攻撃のこと」であると答弁した。つまり、我が国と密接な関係のある国への攻撃を排除するのに必要な武力行使をしなければならないと答えたのである。それはとりもなおさず、戦闘の展開に応じて、我が国が戦う場所も、敵の攻撃を撃退するのに必要な場所に移動していかなければならないことになるということを意味している。

 もし、それでも安倍氏が「他国の領域に戦闘行動を目的に自衛隊を派兵しない」と言い張るのであれば、そのように事態対処法案に明記しなければならない。そのとき「武力行使三要件」は、事実上従来の政府見解である「自衛権行使三要件」に復元されることになり、集団的自衛権行使は否定されたにほぼ等しくなる。残るのは「ホルムズ海峡その他における機雷掃海」のみを単独に俎上に乗せてその可否を問えばよい。そうしない以上は、安倍氏が述べるところはやはり虚言と言わざるを得ない。
                             (了)
スポンサーサイト
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。