アフガン国際治安支援部隊(ISAF)について(1)

 朝日新聞5月30日付朝刊は、「独軍と同じ道、野党懸念 憲法解釈変えアフガン派兵、55人犠牲 PKO法改正案」との見出しで、5月28日の衆院特別委員会において共産党・志位和夫委員長がアフガンの国際治安支援部隊(ISAF)に参加し、計55人の死者を出したドイツ軍の例をあげて、PKO法改正案で新たに認めようとする国連の統括しない国際連携平和安全活動、とりわけ治安維持業務の危険性を指摘したことに関連し、以下の解説記事を載せた。

 「01年9月の米同時多発テロで、NATOが密接な関係にある他国のために武力を使う集団的自衛権を行使して米国主導のアフガン戦争の支援を決めると、当時のシュレーダー政権も軍を派遣。その後、同年12月に国連安全保障理事会決議が採択され、加盟国が一致して制裁を加える集団安全保障の枠組みで治安維持と復興支援を目的としたISAFが発足すると、ドイツは02年1月から参加した。

 ドイツは治安が比較的安定しているとされたアフガン北部を担当したが、次第に現地の情勢は悪化。戦闘に巻き込まれる事例も生じ、ドイツ軍によると02年からISAFの任務が終了する昨年までに、帰還後の心的外傷後ストレス障害による自殺者などを含めて兵士55人が死亡し、このうち6割強の35人は自爆テロや銃撃など戦闘による犠牲者だったという。」

 この解説記事には、次の釈明文が付け加えられていた。

 「朝日新聞は昨年6月15日付朝刊にシリーズ企画「集団的自衛権 海外では」の一つとして「平和貢献のはずが戦場だった/後方支援、独軍55人死亡」などの見出しでドイツ軍のアフガニスタン派遣に関する記事を掲載しました。ドイツ軍は当初、NATOによる集団的自衛権で兵士を派遣し、集団安全保障の枠組みに切り替えましたが、記事ではそうした経緯に触れなかったため、派遣全体が集団的自衛権に基づくという誤解を招きました。今回、関連の記事を掲載するにあたり、記事の中で経緯を詳しく説明しました。」

 この記事を読んで、私は、これは一体何を意味しているのだろうかと、ずっと違和感を持ち続けていたが、今日(6月27日)の朝刊の「パブリック エディターから」欄に掲載された小島慶子『安全、正確な情報の提示を』の論評を読んでようやくその意味がわかった。だが、私の違和感は、朝日新聞は、またまた一部の批判に屈して、筆を折ったのかと、深い失望感に変じることになってしまった。

 児島氏の論評によれば、顛末は以下のようなことだった。

 アフガン国際治安支援部隊(ISAF)の活動を取り上げた昨年6月15日の記事について、防衛大学名誉教授佐瀬昌盛氏、軍事アナリスト小川和久氏から、集団的自衛権と集団安全保障を混同している」「集団的自衛権行使で55人の死者が出たかのようにミスリードしている」との批判がなされ、小川氏からは訂正記事を出すべきだとの主張もあった。
 朝日新聞では、昨年の「誤報」問題への真摯な反省に立ち、読者目線に立った紙面づくりを推進するための一方策として、パブリック・エディター(以下「PE」という。)制度が、本年4月に発足した。具体的には4人のPEが選任され、毎週PE会議を開催し、紙面のチッェクをしている。
 佐瀬氏と小川氏の批判、訂正記事を出すべきだとの主張は、PE会議でも取り上げられ、訂正と集団的自衛権と集団安全保障の違いについての説明をすることを求め、上記5月30日付朝刊の解説記事と釈明文は、これに応じたもののようである。

(ISAFは正真正銘の集団的安全保障措置か)

 ISAFについて、昨年6月15日の記事は、集団的自衛権の範疇に属するのか集団的安全保障の範疇に属するのか不分明だという立場で書かれていたようであるが、本年5月30日の記事は、はっきりと集団的安全保障の範疇に区分している。これは、佐瀬氏や小川氏の批判とPEの意見を容れた結果である。

 しかし、本当に、ISAFは正真正銘の集団的安全保障措置なのだろうか。はたまたISAFを、集団的自衛権、集団的安全保障のいずれかの範疇に区分しないと現在の安保法制の理解をミスリードすることになるのだろうか。佐瀬氏や小川氏の批判は、アフガン戦争の全経過に照らして、はたして正しかったのであろうか。

 大いに疑問がある。私は、朝日新聞の過度のものわかりのよさを危惧するものである。

 私自身は、ISAFは、形式的には集団的安全保障の範疇に区分できるかもしれないが、本質も実態も集団的自衛権の範疇に属するものであると理解するものである。その理由を次回に説明したいと思う。
                              (続く)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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