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緊急事態条項と憲法9条・立憲主義(11)

平和主義と自衛権(その6)

 国際社会は、国際法として、個別国家による戦争と武力行使を違法とし、これを禁止する原則を確立した。しかし、いまだその例外として自衛権行使が容認されている。
 戦後の歴史を見ると自衛権行使の名の下に侵略戦争が公然と行われてきたことは顕著な事実であるし、今なお軍事力によるパワーポリティクスが国際政治の主要なテーマとなっている。人類の悲願である一切の戦争と武力行使を廃絶する道はいまだ半ばというところである。
 しかし、戦争と平和に係る国際法の歴史を、この500年というスパンの中で骨太に解読するとき、我々人類は、試行錯誤を繰り返し、ジグザグにではあるが、聖戦論⇒正戦論⇒無差別戦争論(自己保存権、戦争の自由、同盟の自由)⇒戦争・武力行使違法論へと歩みを進め、集団的安全保障と個別国家の戦争・武力行使の全面禁止へと一歩一歩前進をしていることもまた見えてくることは、これまで概観してきたとおりである。

 ではもう一つの課題である、日本国憲法は、自衛権行使をどのように取り扱っているかということに論を進めよう。

日本国憲法と自衛権(憲法第9条の解釈)

 日本国憲法第9条の下において、自衛権行使が認められるかどうかは、戦後の憲法論争史を飾る主要な論点であった。

 日本国憲法第9条
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


 憲法学説は大きく分類すると以下の三説となる。

 第一説は、そもそも9条第1項自体があらゆる戦争・武力行使等を放棄しており、自衛のための戦争・武力行使も認められないと説く。
 第二説は、9条第1項の「国際紛争を解決する手段としては」との文言を重視し、第1項で放棄したのは侵略のための戦争・武力行使等であって自衛のための戦争・武力行使等は留保している、しかし第2項は戦力・交戦権を無条件に否定しているとして、結局、9条全体では一切の戦争・武力行使等が禁止されると説く。
 第三説は、9条第1項を第二説と同じに解し、かつ第2項の「前項の目的を達するため」は第1項の「国際紛争を解決する手段としては」を受けるのであるから、9条の解釈としては自衛のための戦争・武力の行使等を放棄していないと説く。

 憲法学者芦部信喜によると、第一説を有力説、第二説を通説とし、第三説についてはこのような「説もある」とのことである(「憲法新版補訂版」岩波書店)が、この指摘は今日現在においても妥当するだろう。

 わが国政府は、上記学説の分類に従えば、当初は、第一説もしくは第二説、その後若干の動揺を経て、第三説に近い立場に移行している。
 内閣法制局の打ち立てた政府見解は、憲法9条1項はそもそも国家固有の権能としての自衛のための武力行使を放棄していないが、9条2項の戦力不保持と交戦権否認の趣旨から、「自衛権行使三要件論」と「自衛のための必要最小限度論」の二本柱のもとに、限定された自衛権を認めるというものである。

注:「自衛権行使三要件」論
1954年4月、政府は、憲法9条の下での自衛権は、以下の厳格なる要件に適合しなければならないとの見解を示した(同年4月6日衆院内閣委佐藤達夫法制局長官答弁)。
① わが国に対する急迫不正の侵害があること
② この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
③ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

「自衛のために必要最小限度の実力」論
1954年12月、政府は、自衛隊創設の合憲性に関して次の見解を示した。
「憲法9条は独立国としてわが国が自衛権を持つことを認めている。従って自衛隊のような自衛のための任務を有し、かつその目的のための必要相当な実力部隊を設けることは、何ら憲法に違反するものではない。」(鳩山内閣統一見解)


 この見解は、国民の間に定着した上記学説第一説もしくは第二説に依拠したあらゆる戦争と武力行使否定の世論と折り合いをつけながら、専守防衛、海外派兵禁止という枠内で、自衛隊を合憲とするもので、国民の多くの支持を取り付けてきた。
(続く)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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