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緊急事態条項と憲法9条・立憲主義(22)

国会議員の任期や選挙の特例をもうけることは必要か

 大災害が発生したとき、当該被災地において、国政選挙の執行に支障が生じる事態があり得ることは、まぎれもない事実である。このような事態に対処するために、公職選挙法は「繰延投票」という方法を用意している。

注:公職選挙法第57条(繰延投票)
① 天災その他避けることのできない事故により投票を行うことができないとき又は更に投票を行う必要があるときは、都道府県の選挙管理委員会(市町村の議会の議員又は長の選挙については、市町村の選挙管理委員会)は、更に期日を定めて投票を行わせなければならない。ただし、その期日は、当該選挙管理委員会において、少なくとも五日前に告示しなければならない。
② 略
 

 被災地の都道府県選挙管理委員会は、この規定を適用して、被害の実情、復旧の見通しを勘案し、投票日を定めればいいのである。従って、近藤議員が言うように「国政選挙の選挙期日を延期するとともに国会議員の任期を延長することができないならば、大災害の発生という不可抗力によって、被災地では実際上選挙が行われなくなるおそれがある」などということはあり得ない。

 もっともこの場合、衆議院議員の総選挙であれば、当該被災地の小選挙区と比例ブロックからの議員選出が、参議院議員の通常選挙であれば、当該被災地の選挙区の議員選出と比例区全体の議員選出が、それぞれ繰延投票の結果を待たなければならない。

 そこで近藤議員は、この点にくらいつく。先の質問主意書、再質問主意書に引き続いて、翌2012年3月15日、さらに質問主意書を提出し、以下のように問いを発している。

 緊急事態が発生し、これによって大きな被害を受けた被災地の代表が最も求められている時に、その被災地から繰延投票が行われるまで衆議院議員が選出されないという事態は、まさに被災地の国民の参政権、憲法第十五条第三項で保障されるべき参政権が侵害されている事態であって、憲法上きわめて大きな問題であると考える。
これらを踏まえてもなお、緊急事態時に衆議院が解散されている場合、現行の規定の下で、憲法第十五条第三項に規定されている参政権は保障されていると言えると考えているのか。改めて、政府の見解如何。


 これではもはや憲法論、法律論ではなく、一政治家の心情吐露に過ぎない。案の定、野田内閣総理大臣の答弁書では、「国会の在り方に関することを前提としていることから、政府としてお答えすることは差し控えたい」と、またもやするりとかわしている。

 ここで繰延投票が実施された場合、各議院の構成がどうなるか確認しておこう。繰延投票の結果確定前でも、いずれの院も大半の議席は埋められており、国会の機能は、何ら問題なく働くことになる。

衆議院
繰延投票の結果確定前・・・繰延投票が実施されない大半の小選挙区、比例ブロック選出議員により構成
繰延投票の結果確定後・・・全議員により構成
参議院
繰延投票の結果確定前・・・非改選の半数の議員と改選議席中繰延投票が実施されない大半の選挙区選出議員により構成
繰延投票の結果確定後・・・全議員により構成

 以上に対し、一地方ではなく、巨大な首都直下型地震が発生し、全国規模で選挙が執行できなくなる場合が皆無とは言えないではないか、その場合にはどうなるのかと突っ込んでくるかもしれない。だが、そのような事態は、果たしてあり得るであろうか。国政選挙の歴史は、明治憲法制定以来、実に120年以上に及ぶが、大災害のためにその執行があやうい事態になったことは一度もない。

注:なお、わが国では、衆議院議員の任期を1年延長し、予定された国政選挙を延期したことが一度だけある(明治憲法下にあっては衆議院議員の任期は憲法上定められておらず、衆議院議員選挙法により4年と定められていた。)。1937年4月30日の第20回総選挙で選出された衆議院議員の任期は本来1941年4月30日をもって終了し、同日総選挙が行われる予定であったが、東条内閣は帝国議会で「衆議院の任期延長に関する法律」を可決させ、任期を1年間延長、第21回総選挙を1942年4月30日に執行した。これは「今日のような緊迫した内外情勢下に、短期間でもでも国民を選挙に没頭させることは、国政について不必要な議論を誘発し、不必要な摩擦競争を生ぜしめて、内治外交上はなはだ面白くない結果を招くおそれがあるのみならず、挙国一致防衛国家体制の整備を邁進しようとする決意について疑いを起さしめぬとも限らぬので、議会の議員の任期を延長して、今後ほぼ1年間選挙を行わぬこととした」と説明されているように、今日とは異次元の議会無視、軽視の考え方に基づいている。

 それでも万が一にもその可能性をあり得るではないか。そのときのために国会が機能できるようにしておくことがベターではないか。ここまで言うとすればもはや強迫観念以外のなにものでもない。だが、日本国憲法は、そうした強迫観念に基づいて迫ってくる人に対しても、以下により対応できるようにしているから安心しなさいと諭している。

① 参議院議員を半数ずつの改選とし、恒常的に機能するようにした。
② 各議院の定足数を総議員の三分の一とした。
③ 参議院の緊急集会を用意した。なお、憲法の条文上は、「衆議院が解散されたときは」となっているが、解散のときだけに限定する合理性はなく、任期満了の場合も利用できる。

 憲法に、国会議員の任期や選挙に関して、大災害時の特例をもうけるべきだとの主張は失当である。
(続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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