緊急事態条項と憲法9条・立憲主義(23)

緊急事態条項は、危険、有害かつ不必要である(その11)

世界の常識化と日本の常識

 著名な改憲論者・西修駒澤大学名誉教授は、1990年から2014年の間に制定された世界の102カ国の憲法を調べたところ、全てに緊急事態条項がもうけられていたと述べているとのことである。2015年5月7日衆院憲法審査会で、船田元自民党幹事(当時)は、早速これを持ちあげて、次のように主張している。

 特に、緊急事態条項におきましては、今後高い確率で起こると指摘されるいわゆる東京直下型地震などの大規模自然災害発生時などに国会議員の任期が延長できることなど、憲法においてあらかじめ規定しておくことが急務となっています。このような措置は、防災における最大の課題でもあり、統治システム整備の基本でもあります。しかも、これは憲法によってのみ規定できるものと考えております。
 ちなみに、駒沢大学名誉教授西修先生の調査では、1990年から2014年までに新たに制定された102カ国の憲法のうち、国家非常事態に関する規定は100%に達しているとのことであります。(同審査会議録)


 改憲勢力は、緊急事態条項は世界の常識であるとばかりに、その創設を推進しようとしているのである。しかし、戦争と武力行使の違法・禁止と国連による集団点安全保障を国際法の原則として打ち立てながら、未だその道半ばにして、軍事力による抑止力を頼みの綱とし、パワーポリティクスの真っただ中で試行錯誤している国際社会における常識は、必ずしもわが国の常識ではない。
 わが国は、そのような国際社会から一歩抜け出して、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し」、軍事力によらない国際平和を追求することを誓い、かつ明治憲法下にあって緊急勅令をはじめとする緊急事態条項の悪用、濫用によって軍部独裁とファシズムを招き、侵略と亡国の道を突き進んだことの反省に立って、明確な意思をもって緊急事態条項を拒否、排除したのである。

 既に述べたように第90帝国議会(憲法制定議会)衆議院憲法改正案委員会における金森徳次郎国務大臣(憲法問題担当)の緊急勅令や非常大権に関わる答弁は、制定時の審議を通じて日本国憲法に血肉化している。前に引用した同答弁を要約すると、以下のとおりである。

 ①緊急事態条項は民主主義の根本原則を侵すものである。
 ②立憲主義に反するものである。
 ③緊急事態に対しては、平素からの法令の整備によって対応できるようにするべきである。
 ④過去に経験に照らし、間髪をいれないような事態はなく、臨時議会、参議院の緊急集会によって対処できる。
 
 これらの前に、大前提として、そもそも日本国憲法の恒久平和主義の下では戦時や内乱など軍事力を用いた緊急事態条項はあり得ない。

 わが国においては、これらがのことが常識である。

 このことを確認した上で、次回には、改憲勢力がよりどころとしている世界の常識なるものについても一瞥しておくこととする。
(続く)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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