続「共謀罪法案」

憲法31条は、次のように定めています。

何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

この規定は、due process(適正手続き)条項と呼ばれていますが、法律によって手続き的正義が保障されることだけではなく、いかなる行為が犯罪となるか、それに対していかなる刑罰が科されるのか、厳密、明確かつ適正に定めた法律によることなく刑罰を科されることはないという実体的正義も保障されることを意味しています。

後者は、罪刑法定主義と呼ばれ、近代刑法の根本原則とされています。

「共謀罪法案」は、計画と実行準備行為という空気のようにとらえどころのない行為に刑罰を科することとするものですから、罪刑法定主義に反し、ひいては憲法31条に違反するものと言わなければなりません。

さて、たとえば刑法199条では、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」と定めています。これにより具体的客観的に犯罪内容とそれに対する刑罰が特定されているのです。少し難しい言葉を使うと、「人を殺す」という部分が犯罪構成要件と言い、「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」がそれに科される法定刑です。

犯罪構成要件に該当する行為を実行行為と言います。人が、実行行為に着手し、犯罪構成要件に係る結果が生じた場合、犯罪が成立し、法定刑に基づいて処罰されることになるのです。

実行行為に着手したが結果が生じるに至らなかった場合を未遂と言うのだということはよくご存知でしょう。刑法44条で「未遂を罰する場合は、各本条で定める。」とされ、同じく43条で「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった場合は、その刑を減軽する。」と定められています。つまり結果が生じた場合、つまり既遂の場合に処罰することとし、未遂の場合には、個別にそのことを定めた場合にのみ、処罰するということになっているのです。これが刑法典総則に定める原則です。

ですから実行行為に着手する前の段階についても刑罰の対象とするということはさらにさらに例外でなければなりません。ところが「共謀罪法案」では、277にも及ぶ犯罪の計画と実行準備行為(「共謀」に限りなく近い)を刑罰の対象とするわけですから、刑法典総則を書き換えてしまうに等しく、いわば刑法典の破壊と言ってもいいでしょう。

近代市民社会では、刑法典は、善良な市民のマグナ・カルタであると同時に犯罪者のマグナ・カルタでもあります。それを破壊することは野蛮です。
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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