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明治維新という時代

大西郷は永続革命をめざしたのか?(23)

(まとめ)その2

―橋川文三『西郷隆盛の革命性と反動性』から―

 丸山真男の異端の弟子、橋川文三が『西郷の革命性と反動性』という興味深い一文を書いている(『橋川文三セレクション』岩波現代文庫所収)。

 橋川は、遠山茂樹『明治維新』(橋川が読んだのは岩波全書版であるが、今は、岩波現代文庫で読める。)の次の文章を引用して考察を深めていく。

 「『此時に当り、反するも誅せらる。反せざるも誅せらる』の窮地に追い込まれた西郷は、ついに二月、逸る部下に擁せられて挙兵した。西郷起つの報は、自由民権派に大きなショックを与えた。熊本民権派は、ルソーの民約論を泣き読みつつ、剣をとって薩軍に投じた。」
 
 多くの歴史家から不平・没落士族の最後の反動的で無謀な決起によって引き起こされたとされているこの西南戦争が、そのように単純なものではなく多様で雑多なエネルギーが流入していたことを知る思想家橋川にとっても、なおルソーの名と結びつく一面をもっていたということは、刺激的なことであった。

 このルソーの民約論を泣き読みながら西郷軍に投じた人物は、橋川によると、孫文を支援し、辛亥革命の成功に寄与したアジア主義者・宮崎滔天の長兄・宮崎八郎である。八郎は、東京で中江兆民に師事し、兆民訳の『民約論』を熊本にもたらした。彼は、帰郷した後、熊本において、これを普及させ、自由民権運動の先頭に立っていた。
 
 橋川は、八郎から、中江兆民へ、更にはその弟子幸徳秋水へと連想の糸を伸ばしてゆき、秋水全集から、秋水の師兆民を評した次の一文を引用する。

 「先生が平生いかに革命家たる資質を有せしかは、左の一話を以て知るべし。先生仏国より帰りて幾ばくもなく、著すところの策略一篇を袖にし、故勝海舟翁に依り、島津久光公に謁せんことを求む。(略)先生拝伏して曰く、嚮日献ずるところの鄙著(筆者注:「先日献呈した私の著書」)清覧賜えりや否や。公曰く、一閲を経たり。先生曰く、鄙見幸いに採択せらるるを得ば深甚なり。公曰く、足下の論甚だ佳し、只だこれを実行するの難きのみと。先生乃ち進んで曰く、何の難きことこれあらん、公宜しく西郷を召して上京せしめ、近衛の軍を奪うて直ちに太政官を囲ましめよ、こと一挙に成らん、今や陸軍中、乱を思うもの多し、西郷にして来る、響の応ずるが如くならんと、云々」

 兆民の革命的ロマンティシズムを秋水はみごとに描き出している。橋川は、この一文を引用した上で、兆民が、いかに西郷を敬愛していたか、西郷の死をどれだけ惜しんでいたことかと論を進める。

 橋川の言わんとするところは、西郷の革命性、西南戦争の革命性という側面にも正当に目配りをしなければならないということにあるように思われる。

 橋川は、今はもう廃刊となってしまった雑誌『現代の理論』1968年1月号にのった司馬遼太郎・萩原延壽の対談中の、萩原の次の発言を引用している。

 「“明治維新はこれじゃない”という西郷をどういうふうに考えられるかという問題ですね、いわばデモクラットの先駆だという形で西郷を見ることもまったく不可能ではないわけです。それからパーマネント・レボリューションという形の、一種のアナーキズムと見ることも可能であろうし、云々」

注:西郷の談話を記録した『西郷南洲翁遺訓』に、「今となりては、戊辰の善戦もひとえに私に営みたる姿になり行き、天下に対し戦死者に対して面目なきぞとて、しきりに涙を催されける」という有名な記述がある。萩原の発言は、これに関連してのコメントであろう。

 橋川はこの発言を肯定的に受け止め、たしかに西郷を一種独特のラジカル・デモクラットと考えることも不可能ではない、逆にいえば、大久保⇒伊藤の路線が日本を最も好ましい国家に作りあげたわけではなく、西郷の一見空漠たる東洋的な道徳国家のヴィジョンの中にあり得べきもう一つの国家像を見出すこともできる、と言う。

 ここまでお読みいただいた方々は、橋川のいうところを了とされるであろう。
  
                                (続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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