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憲法改正白熱討論「緊急事態条項」


 昨日(7月8日土曜日)、私も所属する兵庫県弁護士会主催で、緊急事態条項創設賛成の立場から大阪国際大学名誉教授で憲法学者の奥村文男氏と反対の立場から弁護士で日弁連災害復興支援委員会元委員長の永井幸寿氏の二人の論客による、「緊急事態条項」是か非かをめぐる討論会が行われた。

 緊急事態条項とは、一般に、「戦争・内乱・恐慌ないし大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において、国家権力が、国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩序(人権の保障と権力分立)を一時停止して、非常措置をとる権限」を政府に与える憲法上の条項のこととされている。
 これに対し、奥村氏は、「戦争・内乱・恐慌ないし大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない非常事態において」、立憲的な憲法秩序の枠内で、国民の生命、財産等を守るために政府が迅速に対応できるように権限を集中するための憲法上の条項だと説明された。しかし、立憲的秩序の枠内であるというなら、憲法にわざわざそのような条項を設ける必要はなく、下位法で対応できることであり、緊急事態条項はそもそも必要ないことになる。
 私は、やはり緊急事態条項といわれるものは、一般に理解されているようなものを前提としないと議論が前に進まないように思う。

 さて、ご承知のように、日本国憲法には、緊急事態条項は存在しない。これを積極的な意味があると考えるのか、それとも憲法の欠陥だとマイナス評価をするのか、ここがそもそもの出発点であるが、この点について、奥村氏は、後者、永井氏は前者である。

 憲法制定会議となった第90帝国議会の帝国憲法改正案委員会において、憲法問題担当国務大臣金森徳次郎氏が、何故、明治憲法の緊急勅令のような制度を設けないのか明確に答弁をしている。要約すると以下のとおりである。

① 民主政治を徹底し、国民の権利を擁護することを目的とする日本国憲法にそぐわない。
② それが濫用され、憲法破壊につながる。
③ 非常時であっても臨時議会の招集や参議院の緊急集会により対応できる。
④ 平素から法律を整備するなど準備しておけばそれで足りる。

 憲法制定当時の、提案者側は、どうやら積極説であったようである。戦後、わが国は、金森氏の説くところに従うようにして、大災害など緊急事態に対処する法制度を整備してきた。はたして、それによって、現在、解決困難な問題が生じているだろうか。

 永井氏は、阪神・淡路大震災から東日本大震災に至る多くの大災害において、災害復興支援活動を行ってきた経験に基づいて、災害対策基本法をはじめとする災害法制は、逐次問題解決する形で整備されてきた、将来への対応も事態を具体的に俎上に載せて対応策を法的に手当てすればよい、むしろ問題は、それらを使いこなす事前の訓練や準備、現場を所管する自治体こそが第一次的に災害対策の権限を持つべきで、政府は、人、もの、かねのバックアップに徹する、このようなことが重要だと指摘された。

 これに対し、奥村氏は、個別の法制度だけでは、どうしても腰が引けた対策しかできない、個別法にはこれを統括する基本法が必要であり、さらにその根拠となる憲法上の緊急事態条項が必要であると説明された。その具体的なケースとして、近い将来予測される南海トラフ地震、北朝鮮のミサイルが頻繁にEZ内に落下する状況をあげられた。

 憲法改正には、立憲主義的規制がある。①厳格な手続きによる規制、②憲法の根本原則・・・国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義、三権分立・・・を変えることはできない、③憲法を改正しなければならないやむを得ない事由が存在し、改正することに合理性、相当性があるということが実証されなければならない、この三つである。奥村氏の主張は、この③に対する考慮が全く見られず、主観的・抽象的な必要性に終始されているように思われた。もっと言えばイデオロギー的主張に過ぎないようである。

 奥村氏が憲法9条改憲論にコミットされているかどうかは知らないが、イデオロギー的主張という点は、憲法9条改憲論にも共通するものある。

                              (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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