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天皇神格化・新興宗教「現人神教」確立への道(6)

幕府協調路線の孝明天皇―大政委任論原理主義者として

 通商条約勅許拒否の後、幕府は、これを無視してアメリカに引き続き、ロシア、イギリス、オランダと、次々と通商条約を締結し、天皇・朝廷には事後報告に留めるということを繰り返した。それだけではなく、将軍継嗣問題も重なり、幕府は危機打開のために1858年6月4日(安政5年4月23日)井伊直弼を大老に任命し、強権政治を開始し、水戸、尾張等御三家藩主ら異論派の押さえ込みをはかった。

 これに対し、孝明天皇は、「主上逆鱗、御扇をもって九条殿下の頭をしたたかに御打擲」と書かれるほどに激怒し、同年9月14日(安政5年8月8日)勅答に背いた幕府を非難し、諸大名に徳川家を助けるように命じる「御趣意書」を幕府と水戸藩に送らせた。これを「戊午の密勅」と呼んでいる。

注1:九条殿下とは関白九条尚忠のこと。
注2:戊午とは安政5年の干支による年である。


 「戊午の密勅」は、幕府を震撼させた。幕府は、これに関わった朝廷諸役らの責任を問う一方、孝明天皇や朝廷諸役には金銭を提供し、攘夷鎖国に引き戻したいとの意向を表明することにより、孝明天皇から「心中氷解」の沙汰書を取り付けた。

 しかし、幕府は、他方で、下級公家、諸藩の攘夷と討幕を結びつけようとする勢力に大弾圧を加えた。「安政の大獄」である。転がりかけた車輪は、容易に止まることはない。世紀の大弾圧の嵐は、下級公家、諸藩の浪士を決起させ、攘夷・討幕のテロルが吹き荒れる。

 1860年3月24日(安政7年3月3日)、桜田門外の変。水戸藩脱藩浪士らにより大老井伊直弼が暗殺されると、幕府は、再び孝明天皇・朝廷の力を借りて、事態鎮静化をはからざるを得なくなった。

 孝明天皇と朝廷諸役は、もとより大政委任論によって立っていたので、これを受け入れ、将軍家茂に孝明天皇の妹・和宮を降嫁(勅許が下りたのは1860年11月30日・万延元年10月18日)へと進む。形の上では公武合体は急速に進行し、幕府の戦略は成功したかに見える。しかし下級公家、諸藩浪士の攘夷・討幕派の過激化と勢力伸長をおし止めることはできず、朝廷は、攘夷・討幕派が席巻する。次第に攘夷・公武合体の孝明天皇も身動きが取れなくなってしまい、幕府はますます追いつめられてしまった。

 これが1860年ころから1863年9月30日(文久3年8月18日)のいわゆる文久3年の政変に至る実情であった。

 不思議なことに、この攘夷・討幕派の勢力伸長とともに、彼らの中では、攘夷は単なるスローガンに転じ、討幕こそがその唯一の目的となって行った。いよいよ討幕派と幕府がモロに激突することになる。今や、孝明天皇という「玉」をどちらが握るか、それが政局の必争点となったのである。

 この段階で、「玉」を握ったのは、幕府であった。孝明天皇は、攘夷原理主義と大政委任論原理主義の狭間で呻吟しつつ、最後は、秩序維持を重んじる保守反動のエトスが「大政委任論原理主義」を取らせたのであった。そうなると彼にとっても攘夷はもはや金科玉条ではない。攘夷論者ではなくなったのに攘夷をスローガンとすることで孝明天皇を担ぎ続けようとした攘夷・討幕派にとっても、もはや「玉」を取る妙手はなくなってしまったのである。

 かくして文久3年の政変を機に、討幕派は急速に勢力を弱め、「玉」を得た幕府は、一会桑(いっかいそう)政権によりしばしの平穏を保つことができた。しかし、幕府の弱体化は、明らかとなっていたのに、一会桑政権の一時的安定に溺れた幕府は、二度の長州討伐戦争を企て自ら墓穴を掘ってしまった。幕府政権を前提とした公武合体論は、やがて天皇・朝廷の名目的政権を諸侯会議が補佐する幕府による実質的政権という公議政体論に席を譲ろうとしていた。まさにそのとき新たな「玉」・明治天皇を得て、下級公家、諸藩の討幕派が再浮上し、一気に討幕へと突き進むことになった。孝明天皇が急死したのである。時に1867年1月30日、慶応2年12月25日のことであった。

注:一会桑とは一橋慶喜、会津藩、桑名藩の頭文字をつなぎ合わせたものである。

 幕末最後の動乱期、天皇は、「玉」となって、相争う勢力がその争奪合戦をするに身を任せることになった。最後にこれを握った側が勝ちを占めるのである。かくして天皇を「玉」とすることによって明治は始まった。天皇神格化は、ここから構築されたことを私たちは忘れてはならない。

                              (続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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