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「菊と刀」のバーター―日本国憲法第9条を考える―その1

 昭和天皇も承認していた幣原・マッカーサー会談

 政治外交史の研究者豊下楢彦氏は、近著『昭和天皇の戦後史』(岩波書店)の中で、次のように述べている。

 幣原が友人の枢密顧問官・大平駒槌に語った会談内容に関するメモによれば、マッカーサーは米国の一部や関係諸国から天皇制の廃止や昭和天皇を戦犯にすべきだとの声が高まっていることに危機感をもち、幣原に対して「幣原の理想である戦争放棄を世界に声明し、日本国民はもう戦争しないという決心を示して外国の信用を得、天皇をシンボルとするように憲法に明記すれば、列強もとやかくいわず天皇制へふみきれるだろう」と語ったという。
 このメモがどこまで正確なものか否かは別として、『実録』は、幣原が翌25日に昭和天皇に拝謁し、前日にマッカーサーと会見したこと、そこにおいて「天皇制維持の必要、及び戦争放棄等につき談話した旨の奏上を受けられる」と記している。つまり、新憲法の1条と9条となる根幹の問題が両者によって議論されて「意見が一致」し、しかもこの段階で、その「旨」が昭和天皇に「奏上」されていたのである。


注:「幣原が友人の枢密顧問官・大平駒槌に語った会談内容に関するメモ」
  1946年1月24日、幣原喜重郎首相とマッカーサー連合国軍最高司令官との間で行われたいわゆる幣原・マッカーサー会談の模様を、当時、幣原の友人、枢密院顧問大平駒槌が幣原本人から聞き、それを又聞きした大平の娘羽室ミチ子が作成したメモ。羽室メモと呼ばれている。
  「(幣原は)世界中が戦力を持たないという理想論を始め戦争を世界中がしなくなる様になるには戦争を放棄するという事以外にないと考えると話し出したところマッカーサーが急に立ち上がつて両手で手を握り、涙を目にいっぱいためてその通りだと言い出したので幣原は一寸びっくりしたという。・・・マッカーサーは出来る限り日本の為になる様にと考えているらしいが本国政府の一部、GHQの一部、極東委員会では非常に不利な議論が出ている。殊にソ聯、オランダ、オーストラリヤ等は殊の外天皇と言うものをおそれていた。・・・だから天皇制を廃止する事は勿論天皇を戦犯にすべきだと強固に主張し始めたのだ。この事についてマッカーサーは非常に困つたらしい。そこで出来る限り早く幣原の理想である戦争放棄を世界に声明し日本国民はもう戦争をしないと言う決心を示して外国の信用を得、天皇をシンボルとする事を憲法に明記すれば列国もとやかく言わずに天皇制へふみ切れるだろうと考えたらしい。・・・これ以外に天皇制をつづけてゆける方法はないのではないかと言う事に二人の意見が一致したのでこの草案を通す事に幣原も腹をきめたのだそうだ」

注:『実録』とは『昭和天皇実録』のこと


 ここには憲法9条は、日本が再び軍備を持てないようにしようとしたアメリカの陰謀によるもの、もしくは軍事力を背景にした押しつけだとする俗説を否定する重要な史実が示されている。

 私は、日本国憲法に第1条と第9条の両者が採用・規定されたことを、ルース・ベネディクトの有名な著書『菊と刀』をもじって、「菊と刀」のバーターと呼ぶことにしたい。「菊と刀」のバーターは、どうやら昭和天皇と当時の首相幣原と連合国最高司令官マッカーサーの合作で、進められたようである。

 といってもそれは決して、実利的な意味でのバーターだと解されてはならず、もっと深く重い意味があるように思われる。しばらくこの問題を考えてみようと思う。

                                 (続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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