核燃料サイクルからの撤退を! (9)

私の手元に、核不拡散研究会なる研究会がまとめた昨年2月4日付の「我が国の原子力発電・核燃料サイクル政策への提言~「一国主義」を脱却し、責任あるグローバル・プレイヤーへ~」(最終報告書)なる文書がある。核不拡散研究会がどんな団体か、私は知らないが、代表者として遠藤哲也(IAEA理事会議長)、谷口富裕(前IAEA事務次長)、山地憲治地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)、秋山信将(一橋大学教授)の名前が書かれている。

これによると、核燃料サイクル政策に関しては「徹底した検証、柔軟性・透明性の確保」が謳われ、当面は使用済燃料の中間貯蔵能力の拡充や直接処分を可能にするための法改正など必要案体制整備を行なうこと、技術や人材の基盤の確立・維持に向けた活動を開始することなど「柔軟性」の確保に主眼を置く、国際的な視点からは「利用目的のなしプルトニウムは持たない」など「透明性」の確保が不可欠だと指摘されている。

しかし肝心の核燃料サイクル政策の「徹底した検証」に踏み込んではおらず、結局、当面反省、しかし時期を見て復活を、という日和見主義というほかはないようである。

さて高速増殖炉が、核燃料サイクルの推進力、技術者・科学者の希望の星であったとすれば、これから入っていくプルサーマルは、さしずめ核燃料サイクルの消えゆく灯火、技術屋・科学屋が恋いこがれた幻を追って奏でるエレジーである。

今回は最初に簡単にプルサーマルの説明をし、次にその導入の経緯を述べることとする。

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プルサーマルとはなにか
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軽水炉に、プルトニウムが5%~10%程度、残りは、殆どがウラン238からなるMOX燃料を装荷し、運転することをプルサーマル運転という。軽水炉は、中性子を減速して用いるが、この減速された中性子を熱中性子といい、英語で、「thermal neutron」(サーマル・ニュートロン)という。そこで軽水炉を、別名サーマル炉とも呼び、サーマル炉にプルトニウムを用いることから、プルサーマルと呼称されるのである。
わが国で、現に、実施されているプルサーマルは、炉心に装荷する燃料のうち4分の1をMOX燃料とするというものである。もっとも、現在、青森県下北郡大間町に建設中の大間原子力発電所1号機(電気出力138.3万kWの改良型沸騰水型軽水炉<ABWR>)は、完成・稼働すれば全量MOX燃料が使用される計画である。

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プルサーマル導入の経緯(1) 
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原子力委員会は、第2回長期計画(1961年)において、①核燃料サイクルは、プルトニウムの抽出、利用が目的であり、その中心を担うのは高速増殖炉である、②1960年代末には高速増殖炉の実験炉を建設し、1970年代にはその実用化を目標とする、③これと並行してプルサーマルの実用化をはかるとの展望を示していた。

しかしながら、その後の展開を見てみると、わが国は、ひたすら高速増殖炉の開発、実用化にのめり込み、プルサーマルについては、いわば忘れ去られ、片隅に放置された存在となっていたのである。

長期計画では、ほんの申し訳程度に触れられだけであった(例えば第8回長期計画<1994年>では「軽水炉によるMOX燃料の利用は、将来の高速増殖炉の実用化に向けた実用規模の核燃料リサイクルに必要な技術の確立、体制の整備等の観点から重要であり、エネルギー供給面で一定の役割を果たすことにも留意しながら、これを計画的に進めていきます。(中略) 軽水炉によるMOX燃料利用は、海外において多くの実績があり、わが国の少数体規模での実証計画において燃料のふるまい等について良好な結果が得られていることを踏まえると、現在の軽水炉でMOX燃料を利用することについては、特段の技術的問題はないと言えます。今後、わが国においては、燃料仕様の共通化等により一層の経済性の向上を目指していくことが重要です。」とされている。)。

現実にも、沸騰水型原子炉(BWR)、加圧水型原子炉(PWR)において、各1回、少数のMOX燃料体を装架して実験を行っただけであった。

ところが1995年12月の事故により、「もんじゅ」が運転停止となり、運転再開のメドが全く立たない状況となって、にわかに事態は急展開した。以下、そこに至る経過を少し追ってみることとする。
(続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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