東京、キャンベラ、マニラ、ブリュッセル

1 安倍首相は、7月8日、訪問先のオーストラリアで、トニー・アポット同国首相と会談、両首脳は、武器等防衛装備品や技術の移転に関する協定書に調印した。安倍政権は、本年4月1日に武器輸出3原則を撤廃し、武器輸出を解禁する防衛装備移3原則を閣議決定したばかりで、早くもその閣議決定は「成果」を挙げたことになる。

オーストラリアのアポット首相は、昨年9月の総選挙で、野党・保守連合(自由党と国民党)を率いて、与党・労働党に圧勝、首相に就任した。所属は自由党であるが、同党は、近年、とみに新自由主義・ネオコン的色彩を強めており、かっての党首であったマルカム・フレイザー元党首などは、離党をし、批判を強め、対米依存脱却、自主外交の重要性を訴えている。

こうしたことから首相就任後のアポット氏が打ち出す政策が注目されていたが、予想を上回るほどに新自由主義・ネオコンそのものというべき状況である。

外政においては、対米依存を一層強め、インドネシアを経由して流入するアフガン、イラン、スリランカなどのボート・ピープルをインドネシアへ追い返すなど関係を悪化させ、中国に対して露骨な敵視策をとり、その一方で、同じ新自由主義・ネオコンの安倍政権に接近するなど穏健なオーストラリアのイメージを一変させている。

また内政においては、先住民や非英語圏からの移民に対するヘイトスピーチを禁ずる「人種差別禁止法」の規定を、表現の自由を理由に緩和しようとし、叙勲制度にイギリスの騎士叙勲であるナイト、デイムの称号を復活させるなどしている。

安倍首相は、本年4月、来日したアポット首相を歓待し、出来立ての国家安全保障会議の「四大臣会議」に出席させると、アポット首相もいたく感激して安倍政権の外交政策をベタほめし、集団的自衛権行使容認の解釈改憲に賛同する一方、靖国神社参拝や従軍慰安婦問題については、盟主アメリカの意向を知ってか知ずでか、一言も触れることはなかった。

安倍首相は、今回の、お返しのオーストラリア訪問において、オーストラリア議会で、集団的自衛権を容認する閣議決定に触れつつ、「日本とオーストラリアの試練に耐えた信頼関係を安全保障分野での協力に生かしていくことになる」、「経済の連携を深めてきた両国が地域と世界の秩序を育み平和を守るため、ラグビーのようにスクラムを組もうとしている」などと演説した。

かくてアジアの南西部において、あらたな二国同盟への動きが始まった。ネオコン二人組の一場の夢ではなく、アメリカの強い後押しによるものであり、アメリカのアジア太平洋重視・リバランスの一里塚である。

2 目を転じて、フリッピンを見てみよう。ベニグノ・アキノ3世が、第15代大統領に就任したのは2010年6月であった。

そのフリッピンが、蜂起した市民の力で独裁者マルコスを追放したのは1986年2月であった。市民革命は、独立・民主主義・非核平和を掲げるフィリッピン憲法を制定させ、米比友好安全保障条約を破棄、米軍基地撤去を実現した。1992年末までに、米軍基地は撤去され、駐留アメリカ軍は完全撤退した。

ところが2002年には、テロとの闘いに疲弊するフィリッピン政府は、「米比相互補給支援協定」を締結し、長期合同演習の名目で、ミンダナオ地方にアメリカ軍を事実上駐留させることとなる。次第にアメリカ軍の駐留は常態化、恒久化し、ついに本年4月28日、米比軍事協力協定を締結した。

① アメリカ軍は今後10年間、フリッピン軍基地とその施設を利用してフリッピン軍と合同訓練、演習、共同作戦を実施できる。

② 基地内に駐留するアメリカ軍将兵はフリッピン政府の監視下に置かれる。

③ 駐留するアメリカ軍部隊は、ローテーションで派遣され、常駐はしない。

これが米比軍事協力協定の内容だ。ローテーション、常駐しないとあるが、沖縄の基地だって将兵自体はローテーションを組まれ、常駐ではない。しかしアメリカ軍としては常駐である。それと何らかわらない。テロとの戦いが、中国の脅威への対抗ということに変じたものの、フィリッピンは、ともかくもアメリカ依存を深めた。

今度は、安倍政権率いるわが国が、フィリピンとの間で、米比軍事協定とほぼ同じ内容の日比安全保障協力協定(仮称)を取り交わし、自衛隊がフィリッピンに駐留するという構想が持ち上がっているようだ。かくして東京、キャンベラの間に、東京、マニラの二国間同盟への胎動が始まった。

これも毛並みの良さを誇る安倍首相、ベニグノ・アキノ3世の両御曹司の一場の夢ではなく、アメリカの強い後押しによるものであり、アメリカのアジア太平洋重視・リバランスの一里塚である。

3 さらに安倍首相は5月6日、7日、NATO本部、EU本部を訪問、「日本とNATO間の国別パートナーシップ協力計画」に署名、NATO及び諸構成国との合同軍事演習、アフリカ各地での軍・民間活動の協力を含む合意だ。これによりわが国はNATO及び諸構成国との軍事的連携にも踏み出した。目的はアフリカにおける中国とのしのぎを削る利権・ヘゲモニー争いだ。まるで20世紀初頭の世界ではないか。

集団的自衛権容認閣議決定は、実に深く、広い意味があるようだ。しかし、いずれにおいても国民的支持を受けているわけではない。対置さすべきは憲法9条での連携だ。

(本稿は、「世界」7月号の以下の三つの論文を参考にして書いたもので、文章上の責任は筆者にある。谷口長世「安倍欧州諸国安保歴訪」、「杉田弘也「戦略的依存に終止符を」、加治康男「中国の海洋進出と日比軍事連携の道」」
                                    (了)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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