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矛盾が噴出する「武力行使3原則」

 復習になるが、7月1日の集団的自衛権閣議決定で、「武力行使3原則」が確認された。それは以下のとおりである。
   
① わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合
② これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき
③ 必要最小限度の実力の行使(「武力の行使」)

 なお、上記で認められる他国に対する武力攻撃に対処するための「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠になるが、憲法上は、わが国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として許容されるものである。

 これに基づく関係法令の整備のための実務作業が開始されている。その実務を担っているのは、本年1月、内閣官房に設置された「国家安全保障局」である。さて、これに関して、毎日新聞(デジタル版7月12日(土)7時15分配信)は、以下のとおり報じている。

~集団的自衛権の行使を可能にするための法整備を巡り、政府は11日、武力攻撃事態法を改正し、日本が外国から攻撃を受ける前でも武力行使できるようにする方針を固めた。同法は武力行使を「(外国からの)攻撃が発生した」場合に限定して認めているが、「攻撃が発生する明白な危険が切迫している」場合でも武力行使を可能とする。日本の安全保障法制の大きな転換点となる。
 来年の通常国会での改正を想定している。同法は、有事の際の自衛隊や地方自治体の対処方針の概要などを定める。現行法は外国からの武力攻撃に対しては「武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない」とし、自衛隊の武力行使は日本が攻撃を受けた場合に限っている。
1日の安全保障に関する閣議決定は「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合」でも、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険があると認めれば、武力行使が可能だとした。改正で、自衛隊が集団的自衛権に該当する活動に従事する際の法律上の根拠とする。
 同法は、防衛のための自衛隊出動には国会承認が必要と定めており、日本が攻撃を受けていない場合の出動にも同様に国会承認を義務付ける。武力行使の程度に関しても、現行法と同様に「事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない」との制約を盛り込む。【青木純】」~    http://t.co/7cKrnB4Rbd

 少し、法文で確認してみよう。ややこしいが我慢をして読んで頂きたい。

 自衛隊法76条は、自衛隊の防衛出動について定めている。「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成15年法律第79号)第9条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。」

 自衛隊の防衛出動は、「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(以下「武力攻撃事態法」という。)と連動しているのである。そこで武力攻撃事態法に移ることとする。

 武力攻撃事態法3条は、「武力攻撃事態等への対処に関する基本理念」と銘打たれ、その3項には「武力攻撃事態においては、武力攻撃の発生に備えるとともに、武力攻撃が発生した場合には、これを排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし、武力攻撃が発生した場合においてこれを排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」と定められている。武力攻撃事態とは何か。それは第2条で「第1号 武力攻撃 我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。第2号 武力攻撃事態 武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態をいう。第3号 武力攻撃予測事態 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態をいう。」と定義されている。つまり武力攻撃事態とは、武力攻撃が発生した事態と武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態とが包含されているのである。そして武力攻撃事態と武力攻撃予測事態とを総称して武力攻撃事態等と呼称しているのだ。

 上記武力攻撃事態法の法文から明らかなように、「武力攻撃事態」の発生により、自衛隊法76条に基づき出動命令を命じられた自衛隊は、武力攻撃の発生に備えるとともに、武力攻撃が発生した場合には、これを排除するため事態に応じた合理的に必要とされる限度の武力の行使をすることが認められることとされているのである。
ところがこれを改正し、武力行使できる場合を「武力攻撃が発生した事態」とではなく、「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫している事態」に緩和してしまおうと言うのである。勿論、これには「わが国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃が発生した」との要件を書き加えるのであろうが、わが国を基準に考えれば、武力攻撃発生前の先制攻撃を認めることになることは間違いない。具体的な改正案作成の段階になると、このような矛盾がここかしこに噴出することになるだろう。

                            (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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