国際法事始め その3

 国連憲章は、第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に対する行動」として第39条から第51条の13カ条をもうけている。

 第39条から第50条には、国連が、安保理のもとで、各加盟国に、決定で義務付けをし、もしくは勧告・要請により協力を求めて、「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為」に対する集団的行動をとることとし、その内容と手続が具体的に定められている。これが集団安全保障措置と言われる画期的な仕組み・制度である。

 安保理決定で、安保理指揮下に国連軍をもうけ、武力行使を伴う措置(軍事的措置)をとることを定める第42条は、その前提たる第43条の各加盟国と安保理との間の兵力提供などの特別の協定が成立していないため、これまでに発動されたことはなく、今後も、当分、発動されることは期待できないが、第41条の非軍事的措置や、勧告により加盟国の協力を得て行う軍事的措置(朝鮮戦争、湾岸戦争)、勧告・要請により各加盟国の協力と対象国の同意のもとに実施される平和維持活動などは、数多くの実績が積み重ねられている。

 このような集団安全保障措置の前提として、国連憲章2条4項は、以下のように規定している。

 「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」

 ここには「慎まなければならない」と穏やかな表現がされているが、実は、これは武力不行使の原則と言われ、国連加盟国は、武力による威嚇と武力行使を原則禁止されているのである。

 各加盟国は、武力不行使の原則のもと、安保理が、平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為を抑え、除去し、平和の維持、回復を達成すること、これが1944年10月公表された国連憲章の原案であるダンバートン・オークス提案の骨子であり、そこには現在の第51条に相当する条項はなかった。

 ところが、1945年6月、サンフランシスコ会議において調印された国連憲章には、上記のとおり第7章の末尾に第51条が置かれている。その第51条には以下のように書かれている。

 「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。」

 「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」ということは、上記武力不行使の原則に対する重大な例外をもうけたことを意味している。もっとも安保理が必要な措置をとるまでの間と限定し、安保理への報告と安保理の権限を侵さないことを条件とするなど、安保理による集団安全保障措置との整合性をはかってはいるが、「個別的又は集団的自衛の固有の権利」を野に放ってしまった後にはもはや無力な引止め策であると言わざるを得ない。

 はたしてダンバートン・オークス提案から国連憲章調印に至るまでの間に、一体何があったのであろうか。次回には、その間のできごとを整理した上で、この「個別的又は集団的自衛の固有の権利」なる世にも不思議な文言を、どう読むのが正しいのか述べてみたいと思う。
                                           (続く)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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