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当世マルクス事情

 私が学生時代を送ったのは1965年から1969年。個人的なことだが、あの大学闘争の影響で、卒業は6月末にずれ込み、採用が内定していた某鉄鋼メーカーに実際に入社した日付は、他の同期生より遅れて、7月1日付であった。
 
 あの時代は、活動家は勿論、ノンポリでも多くの人は、マルクスの著作を読んでいたものだ。私も、ドイツ・イデオロギー、哲学の貧困、経哲草稿等々や資本論をかじったりした。マルクスの主張をどこまで理解できたかはクェスチョンマークであるが、構想力、透徹した論理と独特の思考のひらめき、皮肉や適確な比喩・引用などを交えた表現の冴えには感動を覚えたものである。おそらく法律実務家になった後も、事案の検討、構成、書面書きや尋問などにおいて、マルクスを読んでいたことがなにがしかの役に立ったのではないかと思っている。

 ところがその後どうもマルクスは学生には不人気だったようである。わが国における左翼の退潮、「社会主義国」の崩壊、残った「社会主義国」で発生している貧富の格差、環境汚染、腐敗現象、中には万世一系のカリカチュアとなった「社会主義国」もある。こんな状況では、マルクスが見捨てられるのはあたりまえかもしれない。

 しかし、これは湯水とともに赤子も流してしまうという類、なんとももったいないことである。マルクスは、やっぱり読み継がれるべきだ。なんせ英国BBC放送が、「過去1000年間で最も偉大な思想家は誰だと思うか」というアンケートをとったら、断トツでマルクスだったと言うのであるから。

 そんなふうに思っていたら、昨日、書店でおもしろい本を見つけた。「若者よマルクスを読もうⅡ 蘇るマルクス」(かもがわ出版)という本である。神戸女学院大学名誉教授で思想家を名乗る内田樹氏と、かっての同僚・神戸女学院大学教授の石川康宏氏との、対談、長めの往復書簡により構成されている。当然、高校生とか大学生など若者向けに書かれたものであるが、もう若くはない私も読んでみた。もっとも私は、区民センター内の青少年向けの勉強スポットに出向き、高校生や大学生にまじって、一日中読書をする日々を送る今日このごろであるから、若者のような気分に浸っているのであるが・・・。

 マルクス経済学者である石川氏は直球勝負、フランス現代思想が専門の内田氏は変化球、それぞれの持ち味を生かし、マルクスを論じ合うという趣向である。お二人のマルクスとの距離感、マルクスへの興味・関心のもちどころ、現実政治の見方やかかわり具合には大きな違いがある。しかし、大きな意味では調和の取れたほどよい仕上がり具合になっているところが、実におもしろい。

 内田氏の話の中で、マルクシストとマルクシアンの区別に触れているところある。マルクシストは「マルクスの思想をマルクスの用語を使って語る人」、マルクシアンは「マルクスの思想をマルクスの用語ではなく、自分の言葉を使って語る人」だと。これは内田氏の師であるエマニュエル・レヴィナス所伝の話だとのことだ。まぁ教条主義、訓詁学と独創的で発展的なマルクス応用という区別であろうか。
 日本のマルクス主義をバックボーンとする政党も、これからはマルクシアンを目指して欲しいものだ。

 もう一つ、内田氏は、フランスの文化人類学者レヴィ・ストロースが『悲しき熱帯』の中で述べている次の言葉を紹介している。

 「マルクスは私を熱狂させた。この偉大な思想を通じて、私はカントからヘーゲルに至る哲学の流れにはじめて触れた。一つの世界がまるごと私の前に開示されたのである。そのことが私のマルクスへの傾倒をさらに亢進させた。以来、この熱が衰えたことはない。社会学的あるいは民族誌的な問題に立ち向かうとき、私はまず『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』か『経哲草稿』の何頁かを開いて、私の思考力に生気を吹き込んでから問題に取り組んだものである。」

 そうか、マルクスの読み方にはこういうのもあるのだ、一度真似してみよう。

 石川氏の『賃金、価格および利潤』を解説した長い書簡は、『資本論』への格好の手引きである。本格的にマルクスを読んでみようという人向けだ。

 新自由主義の修羅場と化したわが国において、格差・貧困、非正規雇用、ワーキング・プア、ブラック企業、過労自殺が大きな社会問題となって久しい。今ようやく、マルクスが再評価されつつあるようだ。

 出でよ、マルクシアン、マルクシスト。     (了)
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中学生時代に。。。

こんばんは。
初めて学校でマルクスやエンゲルスについて学んだ頃、食事中、「世界の共産主義国には問題山積みだけれど、掲げる理想社会は凄く良いと思う」と云って、父親を立腹させた事があります。
問題は「ヒトの質」だと思うのです、宗教でも、経済でも。
理想を現実に移すヒトの。
未来永劫、この問題は解決できないのかもしれないですね。。。

Re: 中学生時代に。。。

そうですね。人の問題は大きいですね。その論理を金科玉条のごとくふりまわす人、相手の言い分に耳を傾けない人、自分の間違いを認め、反省できない人・・・
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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