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政府・与党は「特定秘密保護法」を詐取したのではないか


 2000円の飲食をして5000円札を渡したところ、店の主人が、勘違いして8000円のおつりを差し出した。これ幸いとばかりに黙ってこれを受け取って店を出た。これは俗につり銭詐欺と称する事例で、詐欺罪が成立すると解するのが多数説である。客は、店の主人が1万円札を受け取ったと勘違いし、錯誤に陥っているが分かったのに、黙っていた。本当は、客は、そのことを告げ、店主の勘違いを正さなければならない。それをしなかったのは、不作為による偽罔行為であったと認められ、詐欺罪が成立するのである。
 もっとも客には店主の勘違いを正す義務はないとすると不作為による偽罔行為があったとは認められず、詐欺ではなく、占有離脱物横領に問われるに過ぎないと説く少数説もある。しかし、これは少し社会常識に反するように思われる。

 こんなくだらないことを書いたのは、政府・与党による特定秘密保護法(以下「本法」という。)の制定強行は、このつり銭詐欺に似た構造を持っているからだ。

 政府は、本法の法案策定過程を秘匿したまま、これを国会に提出し、情を通じた与党と一体になって、ろくろく審議時間もとらず、一瀉千里に本法を成立させてしまった。ところがその後、以下の事実が判明した。

 一つは、本年8月17日付「毎日新聞」が報じた本法案作成過程に関わる一連の公文書により判明した事実である。

 毎日新聞社は、情報公開法に基づき法案作成過程にかかわる行政文書の開示請求をして、大量の文書を入手した。それらの文書の中に、2011年10月にできあがった本法案素案に基づき内閣情報調査室が関係各省庁から意見聴取をした際のメモがある。内閣情報調査室は、内閣法制局からも4回にわたって意見聴取しており、「内閣法制局との検討メモ」なる文書が残っている。それらによると内閣法制局は、「立法事実が弱いように思われる。防衛秘密制度をもうけた後の漏えい事件が少なく、あっても起訴猶予のため、重罰化の論拠になりにくい」、(「ネットという新たな漏えい形態に対応する必要がある」と内閣情報調査室が食い下がったが)「ネット(経由の漏えいの危険)と重罰化のリンク(つながり)が弱いのではないか」と述べたのをはじめ、否定的意見、疑問などを多々提起していたのである。

 もう一つは、本年2月11日付及び同月25日付「赤旗」が報じた事実である。

 本法の基礎となったのは秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が作成した報告書(2011年8月8日付「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」)である。その中には、罰則に関する基本的な考え方として「罰則を設けることにより、特別秘密を取り扱う者に緊張感を与え、その保全意識をより高める効果が期待できるものと考えられる」との記述及び秘密取扱業務に従事する者及び業務により秘密を知得した者の過失漏えい罪を処罰するべき旨の記述がある。これらの点について、同報告書案に対し意見を求められた法務省が異議を述べていたのである。これは同紙には、法務省が内閣情報調査室に提出した2011年6月20日付「秘密保全法制に係る有識者会議報告案について」外1点の文書のコピーが掲載されおり(残念ながら外1点の日付部分が欠落しているが、本文には2011年5月とある。)、それに明記されている。

 このように政府の法律顧問ともいうべき内閣法制局、及び法令の適用の現場を指揮する専門の行政機関である法務省から、異例ともいうべき否定的意見乃至疑問が、本法案作成過程において提起されていたことは、本法の成否を左右するまことに重要な事実である。

 政府・与党は、これらの重要な事実を国民に秘匿し、野党の追及を予防して、本法を掠め取ったといわれてもしようがないであろう。

 これは、おつりをちょろまかしたという、出来心のたぐいの「かわいらしい」話と比べて、レベルのちがう話ではなかろうか。私は、政府・与党のやったことは非道・悪質さにおいて、決して目をつむるわけにはいかないと思う。

 政府・与党は不作為による偽罔行為に基づき「特定秘密保護法」を詐取したのではないか。 (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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