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徴兵制を心配するのは単なる杞憂か

 手元にある憲法の教科書には、徴兵制は、憲法9条に反するのは勿論のこと憲法18条にも反し、認められないと書いてある。たとえば浦部法穂『全訂 憲法学教室』(日本評論社)の273頁には以下のように説明されている。

 「徴兵制が憲法18条に違反するかどうかで、かつておかしな議論が自民党筋からなされたことがある。徴兵制は、憲法9条違反であるのはもちろんだが、それが各人の意思に反して強制しうることを認める制度である以上、18条に違反することは当然である。」

 しかし「自民党憲法改正草案」のように憲法9条を変えて国防軍創設規定を置けばもちろんのこと、集団的自衛権行使を容認する7.1閣議決定の実体化が進み、憲法9条が死文化するようなことになってくると、徴兵制を認めない最後のよりどころは憲法18条だけになる。そこでこの重責を担う憲法18条を確認しておこう。

憲法18条

 「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、其の意に反する苦役に服せられない。」

 確かに、これならたとえ憲法9条が変えられたり、死文化したりしても、徴兵制は許されないように思われる。実際、政府や防衛庁長官も、以下のとおり、そのような見解を示しているではないか。

「1980年8月15日稲葉誠一衆議院議員提出徴兵制問題に関する質問に対する答弁書」

 一般に、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいうと理解している。
このような徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条、第18条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考える。

「2002年10月10日参議院外交防衛委員会における石破茂防衛庁長官答弁」

 一般に徴兵制度とは何かということを言えば、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度である、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練し、新陳交代させ、戦時編制の要員として備えるものをいう。これは、徴兵制の定義としてこのように定義付けるのは私は正しいだろうというふうに考えております。このような徴兵制度は、現行憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものではないのに、兵役と言われる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があると。したがって、このような徴兵制度については、平時であると有事であるとを問わず、憲法13条、18条などの規定の趣旨から見て許容されるものではないというのが政府の見解であります。

 しかし、私の天邪鬼根性は、政府や防衛庁長官が、憲法13条まで援用して徴兵制は認められないなどと熱弁を振るっていると、どうも素直に信じることを許さないのである。憲法13条は、人権総則といわれる規定で、14条以下に規定されている人権のカタログにあてはまらない新しい人権をこれに基づいて認める根拠規定となる。そのかわり、解釈の幅は広く、徴兵制がこれにより禁止されるという解釈は、確固不動のものではなく、時代と状況の変化により揺らぐ可能性が大きいのである。なにせこの国の政府は、憲法9条を解釈で死文化させようとする離れ業をやってのけるのだから。

 では、憲法18条はどうか。これもそんなに安心できるものではない。

 まず国際人権規約規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)でわが憲法18条に相当する第8条を見てみよう。

国際人権規約規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)

1 何人も、奴隷の状態に置かれない。あらゆる形態の奴隷制度及び奴隷取引は、禁止する。
2 何人も、隷属状態に置かれない。
3(a) 何人も、強制労働に服することを要求されない。
(b) (a)の規定は、犯罪に対する刑罰として強制労働を伴う拘禁刑を科することができる国において、権限のある裁判所による刑罰の言渡しにより強制労働をさせることを禁止するものと解してはならない。
(c) この3の規定の適用上、「強制労働」には、次のものを含まない。
(ⅰ) 作業又は役務であつて、(b)の規定において言及されておらず、かつ、裁判所の合法的な命令によつて抑留されている者又はその抑留を条件付きで免除されている者に通常要求されるもの
(ⅱ) 軍事的性質の役務及び、良心的兵役拒否が認められている国においては、良心的兵役拒否者が法律によつて要求される国民的役務
(ⅲ) 社会の存立又は福祉を脅かす緊急事態又は災害の場合に要求される役務
(ⅳ) 市民としての通常の義務とされる作業又は役務

 これによると徴兵制そのものは容認されていることがわかるだろう。

 ついでわが憲法18条のもとになったアメリカ合衆国憲法修正13条をみてみよう。

アメリカ合衆国憲法修正13条(1865年)

 奴隷またはその意に反する苦役は、当事者が適法に有罪判決を受けた犯罪に対する処罰の場合を除いては、合衆国またはその権限の及ぶいかなる場所においても存在してはならない。

 米国では、ベトナム戦争終結後の1973年までは徴兵制が実施されていた。その後は停止され、志願兵制になったが、1975年までは選抜徴兵登録制度に基づく名簿の作成事務は続けられた。それは一旦停止されたものの1980年に選抜徴兵法が制定され、選抜徴兵登録制度が復活している(つまり現在は志願兵制となっているが、徴兵制の基盤は存在している。)。

 その米国では、1916年2月に合衆国連邦最高裁判所で、徴兵制は憲法修正13条に違反せず、合憲との判決がなされ、確定している。

 どうもわが国でなされている、徴兵制は憲法18条に違反するとの解釈は、安泰ではないようだ。

 だから私は、声を大にして叫びたい。憲法9条こそ命の綱だと。 (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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