国際的な平和協力活動における武器使用の自己矛盾

 7.1集団的自衛権行使容認閣議決定は、「2 国際社会の平和と安定への一層の貢献」と題する項の中で、以下のように述べている(要旨)。

・ 国際的な平和協力活動において、「国家又は国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場しないことを確保した上で、「任務遂行のための武器使用」(従事する国際的な平和協力活動の任務遂行を武装勢力が妨害するとき、武器を使用してこれを排除すること)及び「駆けつけ警護」(離れた場所にいる他国要員、国連職員、わが国のNGO職員等が武装勢力に襲撃されたときに、駆けつけて武器を用いて警護すること)を認める。

・ 他国に在留する邦人がテロ等の緊急事態に巻き込まれ、これを当該他国の同意を得て自衛隊を派遣し、救出活動をする場合に、警察的な活動の範囲で武器使用を認める。
 
 憲法9条の下では自衛隊の海外派兵は禁止されている。これは「自衛権行使三要件」の一つの適用例であった。しかし、わが国政府は、武力の行使を伴わない形態ならば海外派兵ではないとして、「武力の行使と一体化」しないとの要件や「PKO参加5原則」の枠組みにもとづくものであれば、武力行使を伴わないので海外派兵ではなく海外派遣だとして、自衛隊を海外に送り出してきた。

 本閣議決定は、自衛隊が派遣された国において、相手方が、「国家もしくは国家に準じる団体」ではく、単なる犯罪集団に過ぎない場合には、その犯罪行為を制圧するのは警察的活動であり、武力の行使にあたらないという解釈のもとに、武器使用も可能にする道を開くことを企図している。

 本閣議決定は、従来の政府見解を大きく踏み外し、現場の実情を無視するものである。本閣議決定を現実化し、実行に移すと、派遣自衛隊を武力衝突に導くだけではなく、警護対象者や救出対象者を戦闘に巻き込んでしまう危険性が大であり、撤回することを強く求めなければならない。

 その理由の第一は、他国におけるテロ集団等が、単なる犯罪集団に過ぎないのか、あるいは「国家もしくは国家に準ずる団体」なのか、判然としない場合が多く、客観的判断基準がないことである。とりわけ非正規民兵のような武装集団は一般民衆の中に、一般民衆と同様な姿で立ち現れることが多く、単なる犯罪者もしくは犯罪集団として武器使用して制圧しようとしたところ、突如、大規模部隊が反撃をしてくるという事態も想定される。

 たとえば2011年にスーダン共和国から南スーダンが独立した当時、及びその後南スーダンにおいて内乱が発生した当時、現地で活動していた日本ボランティアセンター(JVC)に属するNGOメンバーは以下のように述べている(『世界』2015年1月号所収の谷山博史『紛争現場からの警鐘 「集団的自衛権」へのNGOの反論』)

 「私が緊急退避を行った際の状況は、政府軍と反政府軍とがともに民兵を動員し、正規兵、非正規兵の区別が曖昧な中で戦闘が行われていました。明確な指揮系統はなく、市内では戦闘と同時に、『兵士』が商店や住宅に押し入り『敵兵』を探索しながら、破壊や略奪行為が行われていました。誰が破壊・略奪を行っているかもよく分からないまま、危険はNGOや国連の施設にまで迫っていました」

 「武装した住民を含む多様な勢力が離合集散、時に『寝返り』を繰り返し、敵味方の識別も難しい紛争の現場において、果たして自衛隊が戦闘に巻き込まれずに『駆けつけ警護』をすることが現実に想定できるでしょうか。『武装勢力』と『銃を手にした住民』とをどう区別するのでしょうか。現場で対峙した相手が、その国の正規軍の制服を着ていることもおあり得る話です」

 その理由の第二は、自衛隊の装備は、警察や海上保安庁の所持する武器とは、その威力、殺傷力において隔絶しており、自衛隊は実質において軍隊である。従って、自衛隊が、部隊を形成して、武器使用することは、武力の行使に該当すると判断される場合が多いということである。

 その理由の第三は、自衛隊が武器を携行して他国政府の同意のもとに当該国に在留する邦人の救出におもむくとき、他国政府と対峙するテロ集団等は、自衛隊は敵対する政府と一体をなすものとみなされ、かえってテロ集団の武力攻撃を誘発することになる。
 この点について上記NGOメンバー、次のように報告している(同上)。

 「南スーダンの戦闘では、隣国のウガンダが『在留ウガンダ人の救出のため』と称して部隊を派遣。その後『政府軍』の同盟軍として戦闘当事者となり、『反政府軍』への攻撃を開始しました。このことは、『反政府軍』を支持する人々の間に、ウガンダ人への強烈な敵対感情を呼び起こしました。一部の地域では住民が在留ウガンダ人への襲撃を開始、多くのウガンダ人が国連施設に保護を求めました。『自国民を救出する』名目の軍隊の派遣が逆に自国民を危険にさらすことになり、結果的には多くのウガンダ人が、自国の軍ではなく中立的な国連を頼ることになったのです」

 武力や武器に頼る平和協力活動は、平和協力ではなく、かえって敵対と戦闘に端を開いてしまう。これは自己矛盾である。NGOメンバーは、「私たちを警護するために武器使用を認めるようにすることは、むしろそれはわが国の平和ブランドと現地住民の信頼を毀損し、NGOの活動を困難にすることになる」と指摘している(同上、『世界』10月号所収の原文次郎『武力行使で平和がつくれるか 「対テロ戦争」の現場から』)。安倍首相ら、武器・武力信奉者は、思い込みが激しすぎる。もう少し現実を見るべきである。(了)

※ 本閣議決定の上記部分は、現行法上認められている国連の平和維持活動(PKO)協力活動にとどまらず、広く国際平和協力活動を対象としており、この点においても自衛隊の活動範囲を広げることを企図している。この点も看過できない問題点であることを指摘しておく。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR