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佐藤優『創価学会と平和主義』(朝日新書)を読む

 以前、佐藤優氏の『獄中記』(岩波現代文庫)を読んで、彼が、鈴木宗男氏とともに政治的スケープゴートに仕立て上げられ、苦難の法廷闘争を闘いつつ、獄中生活の大半を多方面にわたる書物を読破することに費やしている姿にふれ、感動を覚えたものである。挫折の時代を終えて、社会に戻った後の佐藤氏の活躍ぶりは、そのときに私もはっきりと感じ取ることができた彼の不屈の精神が花開いたものだと、私は一人得心し、快哉を叫んでいた。

 その佐藤氏が、「7.1集団的自衛権行使容認閣議決定」について、以下のように述べている。

 「私は、閣議決定の全文を5回繰り返して読んだ。この文章は、外交実務を経験した人間でなければ読み解きが難しい部分がいくつもある。その結果わかったのは、閣議決定、むしろ『集団的自衛権行使による自衛隊の海外派兵は遠のいた』ということだ。」(『創価学会と平和主義』朝日新書)

 いかに優れた資質と能力を持っている人でも、売れっ子になり、多作になると、誤りが多くなり、愚にもつかないことを平気で書いてしまうもものだ。あの松本清張氏でも、GHQ参謀二部(G2)の部長であったウィロビーの情報操作に乗って、伊藤律スパイ説を世に伝播させてしまうという大きな誤りを犯した。読書の達人であり、眼光紙背に徹する読みで定評があるとはいえ、失礼ながら松本清張氏の域には達しない佐藤氏が、これだけ次から次へと書きまくっていれば、こんなことまで書いてしまうのもやむを得ないのかもしれない。

 しかし、ことはこれから戦争をする国づくりを進める安倍政権とこれを阻止せんとする平和を愛する人々との攻防の最前線にかかわる問題であるから、黙って見過ごすわけにはいかない。私は、佐藤氏に、「5回も読んで、こんなことを書くようでは、あなたの眼は節穴か?」と詰問せざるを得ない。

 佐藤氏は、昨年7月2日の、「朝日」、「毎日」、「読売」、「産経」の紙面を引用し、次のように講評している。

 「集団的自衛権行使容認に賛成の立場であっても、反対の立場であっても、四紙とも閣議決定は『海外の戦争に日本(自衛隊)が参加できる契機になった』と受けとめているように見える。」

 佐藤氏はこのような全国紙四紙の見かたに敢えて異論をさしはさむのであるが、それは以下の理由によるもののようだ。

 武力行使三要件の第一要件で「これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から脅かされる明白な危険がある場合」とされている。これは厳しい縛りである。ほかにも「我が国の支援対象となる他国軍隊が『現に戦闘行為を行っている現場』では支援活動を実施しない」、「『武力の行使』を行うために自衛隊に出動を命ずるに際しては、現行法令に規定する防衛出動に関する手続と同様、原則として事前に国会の承認を求めることを法案に明記する」などの縛りがある。

 佐藤氏によれば、このような縛りがあるために、旧知の安全保障に詳しい外務省OBが困惑しているそうだ。「こんなに縛りがついているんじゃ米国に要請されても、自衛隊を派遣することができない。今までは憲法上できないという言い訳ができたが、文言の上では集団的自衛権を認めているので、今後は政治判断で自衛隊を派遣しないことになる。日米の信頼関係にマイナスになる危険をはらんでいる。」と。しかし、これはおかしな話だ。これらの縛りが仮に厳しいために自衛隊を派遣できないとして、それは憲法上の要請からくる縛りであり、その縛りに抵触するなら堂々と要請を断ることができるのであって、何も政治的判断によるものではない。政治的判断で要請を断るのは、縛りに抵触しない、つまり縛りが全然機能しないこと意味するのだ。

 実際、以下述べるとおり、これらは何の縛りにもならないのだ。

 武力行使三要件の第一要件で、「我が国の存立が脅かされ」と「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」とは、 国家安全保障局が作成した「自衛権などに関する政府見解の想定問答集」によると、「国家と国民は表裏一体のものであり、我が国の存立が脅かされるということの実質を、国民に着目して記述したもの(加重要件ではない)」とされている。そうすると結局は、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合」ということになり、生身の国民を離れた抽象的、観念的な概念となる。一方、日米同盟は、わが国の安全保障の機軸、わが国の存立の基盤だと政府は一貫して述べている。そうであれば、米国が、戦争を開始したら、わが国もともに戦わないことには日米同盟を危殆に陥しいれ、わが国の存立を脅かす明白な危険が存在することになる。従って、当然に、わが国も「武力行使3要件」に基づき参戦を余儀なくされることにある。
 そもそも「これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」というのは、一義的明確性を欠き、政府の判断を限定することはできない。
また国会の原則事前の承認(緊急の場合には事後承認)というのも、佐藤氏も認めるとおり現行法令と同じ規制であり、その上政府が特定秘密保護法により安全保障に関する重要な情報を独占する法体制の下で、国会のチェック機能が働くとは思われない。

 さらに日米同盟を「双務化」させるために集団的自衛権行使容認を呼号する安倍政権の足取りを見るとき、米国から参戦を求められてこれを拒否するということを想定することは不可能である。

 ところで、佐藤氏が、この文脈で「我が国の支援対象となる他国軍隊が『現に戦闘行為を行っている現場』では支援活動を実施しない」との縛りがあるように言うのは、完全なる誤解である。これは国際貢献活動としての有志連合国の対テロ戦争をはじめとする戦闘ないし国連の集団的安全保障措置に対する後方支援活動に関するもので、集団的自衛権行使とは異なる次元に関することだ。当該閣議決定は、従来の規制を緩め、後方支援活動を戦闘現場に限りなく近い場所で行うことを可能にし、武力行使と一体化させ、さらには戦闘に転化させる危険をもたらすもので、それ自体厳しい批判にさらされなければならない。

 なお、佐藤氏は、憲法学者の木村草太氏の「武力行使三要件は、集団的自衛権という言葉を使っているが、実際には個別的自衛権で説明できる武力行使に限定している」との所説を、援用し自説の補強としているが、これについては既に以下の論文において反駁したので、ご参照頂きたい。

 「武力行使三要件に関する誤った説明を排す」
 http://tofuka01.blog.fc2.com/blog-entry-133.html

(了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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