「集団的自衛権行使容認閣議決定」は立憲主義に反する その1

 立憲主義とは、最広義に定義すると、国家機関を構成する諸機関は、憲法の諸条項に拘束され、これに違反することは許されないという原則である。この意味の立憲主義を否定する人はまずいないであろう。日本国憲法は、この意味の立憲主義を実効あらしめるために、第一に、第98条1項で憲法を最高法規として「その条規に反する法律、命令、詔勅その他国務に関するその他の行為の全部又は一部はその効力を有しない」と定め、第二に、第81条で裁判所(最終的には最高裁判所)の違憲立法審査権を定め、第三にどうしても現実の必要に応じて憲法を改正しなければならないときのために第96条に憲法改正の手続規定を置いている。

 安倍政権が昨年7月1日に行った「集団的自衛権行使容認閣議決定」は、どこから見ても憲法9条に反しており、第98条により、無効となる。従って、今後、同閣議決定に基づいて検討し、立案する有事関連法案十数件(※)も違憲の法令となり、無効である。

※ 朝日新聞の2月14日朝刊は、以下のように整理している。

<グレーゾーン事態>(同閣議決定第1項)

 自衛隊法(米軍の武器等防護)/米軍以外の軍隊の武器等防護の必要性

<国際社会の平和と安定への貢献>(同閣議決定第2項)

 自衛隊法/在外邦人の救出・米軍やその他の軍隊に対する物品などの提供
 周辺事態法/米軍以外の軍隊への支援活動の必要性
 船舶検査活動法/船舶検査の実施要件の見直し
 国連平和維持活動(PKO)協力法/PKOで可能となる活動の拡大や武器使用権限の見直し
 旧テロ対策特措法・旧イラク特措法/恒久法化

 <集団的自衛権>(同閣議決定第3項)

 自衛隊法/新3要件にもとづく自衛隊の任務の位置づけ、権限、手続きなど
 武力攻撃事態法/新3要件で武力行使が可能な事態、手続きの整備
 米軍行動円滑化法/米軍以外の軍隊への支援活動の必要性
 外国軍用品等海上輸送規制法/-
 捕虜等取り扱い法/武力行使ができる場合の手続き

 <その他>

 国家安全保障会議設置法/法改正に伴う新たな役割の追加


 安倍政権は、どうしても「集団的自衛権行使」を認めなければならないと考えたならば、憲法改正手続を踏むしか道はなかったのである。

 その理由を、これから論じていくことにする。以下の論述の基礎的な部分は、2月14日(土曜日)に行った私の講演のレジュメに加筆をしたものである。レジュメを読み返し、加筆しながら、思ったが、私は、緩い話をするのが嫌いで、どうしても窮屈で堅苦しい話になってしまう。もっとわかり易い話をしなければならないと反省することしきりである。

 しかし、講演レジュメの加筆だけではあまり能がないので、今回、新たにその展開部分を追加することにした。

 その展開部分というのは、実は、岩波書店から刊行されている「シリーズ日本の安全保障3『立憲的ダイナミズム』」第3章『九条論を開く―〈平和主義と立憲主義の交錯〉をめぐる一考察』において、執筆者の山本元慶応大学大学院教授が、「安倍政権の『集団的自衛権・憲法解釈容認化』に対して、一躍舞台の中心に躍り上がることになった対抗言説は〈集団的自衛権の行使を違憲だとする、長年にわたって確立されてきた内閣法制局による憲法九条に関する憲法解釈を、憲法改正の手続を経ることなくして変更することは、立憲主義をふみにじる〉というものである。」(山本教授は、これをテーゼAと命名されている。)とした上で、従来の憲法学説の多数説は、内閣法制局の九条解釈をにせ解釈と批判をし、現在テーゼAを主張している憲法学者の多くもこれまで同様の批判をしてきた筈であるが、今、これをどう整合化することができるのかとの学者らしい鋭い問題提起をされた上で、あり得る見解を並べ、それらを批判している。

 山本教授も、少し違った論拠からではあるが、現在進行中の安倍政権による集団的自衛権行使容認とその関連法制の整備に反対だと明言されているので、同じフロントにおいてともに安倍政権に対峙しているお方だとは理解できる。しかし、山本教授の問題提起と批判は、そのフロントで、安倍政権に打撃を与えるよりも、味方に打撃を与えるような意地悪さを感じさせるものがある。いわば後ろから鉄砲を撃たれているような錯覚を覚えるのである。

 そこで、私なりにこの問題提起に挨拶をしたいと思った次第である。今回は、この程度にして次回から、まずは講演レジュメに加筆したもの2回程度にわけて載せることにする。
(つづく)

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR