専守防衛が堅持される?それほんまかいな~? (続き)

 「専守防衛」とは、要するに、「①わが国に対する武力攻撃があり、②これを排除するために他に適当な手段がない場合に、③必要最小限度の実力行使にとどまる」ことを要件とする自衛権を行使するための必要最小限度の実力として、憲法9条の下でかろうじて市民権を得た自衛隊の身体表現そのものである。従って、自衛隊の実力(軍備及び組織の力であり、ありていに言えば軍事力である。)を「専守防衛」以外の目的のために運用することは自衛隊の自己否定である。これにより自衛隊は憲法9条に違反する存在へと転落することを意味する。

  また「専守防衛」が具体的に意味するところは明瞭であり、以下の各要件を全て満たすことが要求される(前述の1972年10月31日・田中角栄首相答弁も、1981年版から2014年版に至る防衛白書の記述も同趣旨である。)。

第一にわが国に対する武力攻撃があったときにこれを排撃することである。
第二にわが国領域(領土、領海、領空)及びその周辺から攻撃をする敵を排除することである。
第三に敵の武力攻撃を排撃するのにほかに適切な方法がなく、かつ必要最小限度の武力行使にとどまること。

 さて「専守防衛」は、過去、幾度が国会等における議論の対象となってきた。その概略を示すと以下のとおりである。

 1956年2月29日、鳩山一郎内閣は、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲内に含まれる可能性がある」との政府統一見解を示した。しかし、これに対して社会党議員からの追及があり、時の防衛庁長官が政府を代表して「(政府統一見解で述べられた事態は)今日においては現実の問題として起こりがたいのであり、そういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは、憲法の趣旨とするところではない」と答弁することにより、先の政府統一見解を事実上撤回した。

 他国に攻撃的脅威を与える兵器の導入について、野党議員やマスコミの批判を受けて、攻撃性を抑制する措置がとられることがあった。たとえば1972年から導入開始された航続距離の長いF4ファントム戦闘機について爆撃装置をはずし、空中給油装置を地上給油用に改修され、また1980年代の主力戦闘機F15イーグル、空中給油装置は当面使わないこととして導入された。

 2003年1月、北朝鮮がNPT脱退を表明したことに端を発した第二次朝鮮半島危機に際して、ミサイル発射準備段階で、発射基地を攻撃できるのかどうか、あるいは敵地攻撃能力を持つべきだという議論が起きた。しかし、最終的に政府は、「相手国の攻撃意図が分かったときに相手をたたく攻撃兵器を持つべきだという防衛専門家の議論は承知しているが、政府にそのような考えはない。必要最小限の専守防衛に徹し、足らざるは日米安保条約、アメリカの抑止力によって、日本の安全を確保すべきである」(同年3月28日参院予算委における小泉純一郎首相答弁)と、議論を収束させた。
 もっとも同年3月、アメリカが対テロ戦争を呼号して未だ武力攻撃もないのにイラク戦争をしかけたことが呼び水となって、上記政府見解を示された後も、国会議員や民間団体から「専守防衛」を見直し、敵基地攻撃能力及び先制攻撃論を容認することを求める提言が相次いだ。しかし、政府は、2010年防衛大綱においても2013年防衛大綱においても、基本的には「専守防衛」を維持したのであった。

 「専守防衛」は、このように憲法9条の制約下にある自衛隊の装備及び運用の限界を画するものであるが、一面では、国民の支持を確保し、わが国による侵略の被害を受けた近隣諸国の警戒感をおさえ、良好な関係を保つために有効なキャッチフレーズでもあった。
 実際、最近の世論調査(内閣府実施)では、自衛隊によい印象をもつ、もしくはどちらかといえばよい印象をもつ人の割合は90%を超えているが、その理由として圧倒的多数の人が、「災害出動」や「わが国の安全を守る活動」をあげている。「わが国の安全を守る活動」というのは、「専守防衛」ということであろう。また近隣国もことあるごとに「専守防衛」に期待を寄せている。

 ではこの度の戦争立法では、どうなるのであろうか。戦争立法が通れば、以下のようになる。

(海外派兵の目いっぱいの拡大)

①海外派兵法制のよりどりみどりのメニューがつくられる。

・国際平和支援法/国際平和共同対処事態/協力支援活動と捜索救助活動
・重要影響事態法/重要影響事態/後方支援活動と捜索救助活動(対象は合衆国軍隊等に拡大)
・国際平和協力法/国連の統括しない国際平和安全活動
・事態対処法/存立事態/防衛出動(わが国と密接な関係にある他国・無限定)

 これらは重なり合う。政府は状況に応じて選択することができる。従来に比べて自衛隊の海外派兵の範囲及び活動の質・量は飛躍的に増大する。

②海外派兵法制のいずれにおいても集団的自衛権行使に入り込んでいくことになる。

 協力支援活動・後方支援活動・捜索救助活動は兵站活動であり、その多くは国際法上「武力行使」にあたると通常は考えられている。わが国政府は、それを武力行使ではないと主張しつつ、「武力行使との一体化論」によりほころびを避けてきたが、戦争立法では「武力行使との一体化論」をも形骸化させようとしている。

 また国際平和協力法により安全確保活動、駈け付け警護をメニューに入れ、当該任務推敲のための武器使用を認める。これらは武力行使に限りなく近づく。

③仮にそれらが武力行使ではなくても、それらの危険な活動により、反撃と戦闘が始まり、集団的自衛権行使にはいりこむことになる。

(海外での武器使用の拡大)

①政府見解では以下のとおり、武器使用と戦闘行為、武力行使とは異なる概念とされる(政府見解では、武力行使の定義が著しく狭いことに留意されたい。)。

・戦闘行為/国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為
・武力行使/①国家もしくは国家に準ずる組織に対する②組織的・計画的な戦闘行為
・武器使用/国家もしくは国家に準ずる組織が対象とならない武器の使用(自己保存、武器防護、治安活動・警護等任務遂行のための武器の使用)

②これまでの海外派兵時の武器使用の基本形は自己防護型と武器防護型であった。
⇒戦争立法ではこれを以下のように著しく拡大
イ 宿営地での共同自己防護
ロ 安全確保活動・駆けつけ警護活動における任務遂行のための武器使用
ハ 在外邦人の警護・救出任務遂行のための武器使用
二 重要影響事態での後方支援活動中に人員・物資・補給等の活動をする合衆国軍隊等の武器防護/その他海外自衛隊と連携してわが国の防衛に資する活動に従事中の合衆国軍隊等の武器等を職務上警護するにあたっての武器使用

③これらが単なる武器使用にとどまらず、武力行使にあたる場合もある。かりにそうでなくともこうした武器使用の拡大により、敵対勢力の反撃から戦闘行為、武力行使に発展する(武力攻撃事態、存立危機事態を招き入れる)。

(大が小を兼ねるという倒錯)

 武力攻撃に至らない低レベルの侵害行為に自衛隊を迅速に投入するシステム構築することが予定されている。軍事力をつかってはならない事態に、迅速果断に使用できるようにするというわけである。それ自体自衛隊の任務を逸脱するでであるが、さらに、これにより反撃から戦闘行為、武力行使に発展する(武力攻撃事態、存立危機事態を招き入れる)危険が高まる。

 見られるようにわが国の領域もしくはその周辺において、わが国対する武力攻撃に反撃し、排除することをはるかに超えている。自衛隊は、世界のどこにも、ことあるごとに派兵され、武力行使をすることとなる。このような戦争立法において、「専守防衛」はもはや廃棄されることは明らかである。しかるに政府、自民党は堅持されると言い張っている。それの意味するところは、ただ一つ、国民が反対にまわるのを防ぎ、近隣国の反発を避けるために、死滅する「専守防衛」の名前を騙っているに過ぎないということだ。政府、自民党はペテン師である。
     (了)
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プロフィール

深草 徹

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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