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「刑事司法改革法案」に異議あり (その2)



 法制審議会「新時代の刑事司法特別部会」(特別部会)での、刑事司法改革問題の審議の進み具合を見ていきましょう。

 残念ながら、すでに江田法務大臣(設置当時)のアジエェンダ・セッティング(諮問事項)において「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直し」という抽象的で曖昧な表現がなされており、それは多義的に解釈されてしまうという弱点が孕まれていました。このため、事務当局(法務省)と検察関係、警察関係の委員ら及び一部の刑事法学者委員ら(以下では、これらの人たちを「反改革勢力」ということとします。多数派と言っていいでしょう。これに対し日弁連委員らとこれと大筋において共同歩調をとった村木氏・周防氏をはじめ有識者委員及び一部学者委員らを「改革勢力」ということとします。こちらは少数派ということになるでしょう。)による、改革抑え込みと捜査の多様化・合理化の名分とする捜査本位の反改革ための執拗な策動が繰り広げられることとなってしまいました。

 弁護人の立ち合い権保障については、意見の隔たりが大きく合意を得ることが困難であるとして、早い段階でふるい落されてしまいました。取調べの可視化(録音・録画)については、全事件、全過程にわたり実施をするべきだという改革勢力の訴えに対し、反改革勢力から、対象事件をごく一部に抑え込み、かつ取調べ過程の一部分(弁解録取書の作成と供述調書作成の最終段階である読み聞かせ(「読み聞け」といいます。)と署名)のみの義務付けに限定し、あとは取調官の裁量に任せることとするなどというように猛然たる巻き返しがなされました。証拠開示制度についても、全面開示への抜本的制度改正の要求と現行制度を前提とした一部手直し論との攻防、あるいは再審手続における証拠開示制度をもうけるかどうかをめぐっての対立・攻防がありました。

 さらに調書裁判から公判中心主義への転換に関して言えば、反改革勢力は、その名分を逆手にとって巧妙なカウンター攻撃に転じました。彼らは、通信傍受(盗聴)を会話傍受(盗聴)にまで広げ、さらに対象犯罪を現在の4類型(薬物事犯、集団的密航等出入国違反、武器製造法・銃刀法違反等及び組織犯罪法所定の組織的殺人・同未遂)から大幅に拡大し、傍受方法も大量かつ長時間の継続的傍受を可能とするように合理化して令状主義を骨抜きにすること、さらには共犯者らに刑の減免や免責をエサに供述を引き出し、捜査・公判に協力させるための制度を導入すること、など捜査の便宜に資する方策を提起し、採用をさせようとしたのです。

 特別部会の終盤にあたる2014年3月27日には、無実の死刑囚袴田巌さんの再審請求事件について、静岡地裁が再審開始決定を出しました。その決定において前回述べた再審事件の上にまた同様な構造(身柄拘束を利用した密室での取調べによる虚偽自白の強要及び証拠捏造と証拠隠し)の冤罪で、人の一生が台無しにされた事実が白日の下にさらされることになりました。しかるに反改革勢力の動きはそれによっても何らブレーキがかかることはありませんでした。

 ところで、特別部会においては、答申案の採択は、個別の問題ごとに賛否を問うのではなく、各論点一括して賛否を問うという枠組みが設定されてしまいました。これでは、ある論点には賛成、ある論点には反対という場合、反対の論点には目をつぶって答申案に賛成するか、賛成の論点も泣いて切り捨て答申案に反対するかどちらかしかなくなります。しかも事務当局は、全会一致で答申案を上げることとしていましたから、答申案に反対すれば結局答申案は成立しないことになってしまっていたのです。このようなルール設定により、反改革勢力と改革勢力の攻防が展開された特別部会は、各委員の自由な討論、意見表明及び最終態度決定に大きな制約がかけられることになってしまったのです。

 そのような困難な状況のもとで、改革勢力は次第に押されて行き、取調べ可視化(録音・録画)については、小さく生んで大きく育てるというたとえの如く、対象事件の範囲は限定されても、ともかく取調べの全過程にわたり実施させるということに重点を置くこととするなど、将来の確かな発展へつながる第一歩を確保しようとの守りの姿勢に転じることを余儀なくされました。証拠開示制度についても、全面開示は諦め、日常の弁護活動において少しでもプラスになるようにする、あるいは弁護活動の実践を通じて全面証拠開示を実現させていく足がかりを獲得することに目標を移して行くことになりました。さらに反改革勢力による捜査手法拡大のためのカウンター攻撃に対しては防戦しつつ譲歩をすることを余儀なくされました。

 こうして特別部会においては、はやばやと全事件・過程の取調べを可視化(録音・録画)する、証拠全面開示制度を導入する、調書裁判から公判中心主義への転換という今次刑事司法改革の根幹ともいうべき目標は放棄され、それらを限定的な範囲と低いレベルの改善にとどめつつ、他方でそれに対する見返りとして検察・警察が、使い勝手がよく効率的な捜査の武器をどれだけ獲得するかという逆立ちしたバーゲニングの場となってしまったのです。

                                 (続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイア。
「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう。」

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