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緊急事態条項と憲法9条・立憲主義(3)

「王様も憲法に縛られる」が立憲主義か―その1 

安倍首相は、かつて次のように述べたことがある。

「〔憲法は〕国家権力を縛るものだという考え方はあるが、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方であって、今まさに憲法というのは、日本という国の形、そして理由と未来を語るものではないか。」(2014年2月3日衆院予算委での答弁)

憲法とは、君主制の下で、その絶対権を制約する国の根本規範として定められたものであり、君主といえども憲法に拘束されるという考え方が、立憲主義である。・・・王様も憲法に縛られる。これが立憲主義だというわけである。

これは、立憲主義のスタート時点に遡れば正しい。しかし、私たちが生きて活動する現在においては正しくない。立憲主義は、安倍首相は、夢想する如く、そこにとどまったわけではないのである。

まずイギリスの経験から。

「マグナ・カルタ」⇒「権利請願」(⇒ピューリタン革命⇒名誉革命)⇒「権利章典」

 「マグナ・カルタ」は、13世紀はじめ、中央集権国家への道を進みつつあったジョン王に対する封建貴族の異議申し立てであり、王の徴税権に制約を課そうとするものであった。

「権利請願」は、17世紀初はじめ、君権神授説を唱えるジェームズ一世に対する異議申し立てに端を発する。ジェームズ一世は、「法に拘束されない王権の行使こそ真に自由な政治である」と主張。その主張どおり、市民に対する恣意的な徴税と不当な逮捕・拘禁を乱発した。これに対し、コモン・ロー裁判所の裁判官であったサー・エドワード・コークは、「王は何人の下にあるべきではない。しかし、神と法の下にある」として、これに歯止めをかける判決を下した。さらに庶民院議員に転じたコークは、ジェームズ一世に輪をかけたような専制君主チャールズ一世に対し、議会を指導し、歴史に埋もれたマグナ・カルタに息を吹き込み、市民に対する徴税権と逮捕・拘禁の専断的行使を制約することをしたためた文書をうやうやしく差し出し、これを承認させた。これが「権利請願」である。

しかし、チャールズ一世は、これを反故にし、議会を無視して徴税権を行使したことから議会と対立。ついにピューリタン革命に至る。王政は廃止され、チャールズ一世は処刑される。だがクロムウェルを指導者とする革命政権は短命に終わり、王政復古、チャールズ二世の反動期を経て、17世紀末に再び議会はチャールズ二世に戦いを挑む。主導権を握った議会穏健派は、1688年、チャールズ二世のあとを継いだジェームズ二世の王位継承問題に介入、オランダからオレンジ公ウィリアムを招請、王位につけた。このとき議会は、その優位性を王冠に刻みつけた。それが「権利章典」というイギリス憲法の骨格をなす文書である。

※参考 権利章典(Bill of Rights)

1.国王の権限により、国会の承認なしに法律を停止、または法律の執行を停止しうるとする主張は、違法である。
2.国王が法律を無視したり、執行しなかったりすることは、違法である。
3.教会関係の事件を処理するための宗務裁判所は、すべて違法であり、有害である。
4.国王大権と称して、議会の同意なくして、王の使用のために税金を課すことは違法である。
5.国王に請願することは国民の権利であり、このような請願をしたことを理由とする収監または訴追は、違法である
6.議会の同意なしに、平時に常備軍を徴募し、維持することは法に反する。
7.新教徒である臣民は、法の許範囲内で自衛のため武器を持つことができる。
8.議員の選挙は自由でなければならない。
9.議会での言論の自由および討論・議事手続きについて、議会外で弾劾されてはいけない。
10.過大な保釈金、過大な罰金、残虐で異常な刑罰を科してはならない。
11.陪審員は正当な方法で選ばれねばならない。
12.有罪の判決の前に、罰金、没収に関して権利を付与および約束はすべて違法であり、無効である。
13.いっさいの不平を救済するため、また法律を修正・強化・保持するために、議会はしばしば開かなければならない。


流血事態を招かなかったので名誉革命と後世呼びならわされることになったが、王は、絶対権はおろか、その権限を著しく制約され、権力は、議会を中心とする市民に移ったと評してよく、正真正銘の革命であった。

こうしたイギリスの憲法史をざっと概観しただけでも、憲法は、既に、単に君主の権力を縛るという段階から、それを一歩突き抜けていった経過がわかる。イギリスでは、17世紀末には、市民の自由と人権こそが国家の第一義的な目的であり、国家権力はそのために行使されなければならないという立憲主義とそれを前提とした立憲君主制(「王は君臨すれども統治せず」)が、ビルトインされた。
(続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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