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緊急事態条項と憲法9条・立憲主義(10)

平和主義と自衛権(その5)

いわゆる集団的自衛権について

 国連憲章51条中の「個別的又は集団的自衛の固有の権利」について、その意義、目的、要件を定めた規定は憲章中には存在しないし、その制定過程においても、それについて議論さえもなされていなかったことは、既に述べたとおりである。
そのことの意味するところを考えれば、国連憲章は、従来の自衛権概念を何ら変更していないということであり、従来どおりの自衛権を確認したに過ぎないということになる筈である。
 ところで実際に加盟国の実情を見てみると、加盟国には自衛権を行使し得るに足る軍備を保有する国もあれば、そうではない国もある。前者は、自ら侵略を排除する措置をとればよいが、後者の国はそれができない。そこで後者の国は、自ら加盟する国連の集団的安全保障措置により侵略を排除してもらうことを期待するだろう。しかし、国連の現状では、その負託に必ずしも応えられない。そこで、そのような国は、一定の関係国の支援により、自国に対する侵略を排除してもらうことが認められるべきである。それも自衛権の行使のありようではないか。
 そうしたことを確認したのが国連憲章51条であり、「個別的又は集団的自衛の固有の権利」なのである。

 残念ながら、戦後、国際法学者はこのような読み解きをしないで、「個別的自衛の固有の権利」を従来から国際法で認められていた自衛権(今ではこれを個別的自衛権と呼んでいる。)のほかに、「集団的自衛の固有の権利」を国連憲章が新たに認めた集団的自衛権と解してしまった。そして、諸国家及び国連もそうした解釈の下で国際政治、外交、国際紛争に対処することになっていった。

 しかし、そうではあっても、国際法学者の主流的な立場の人たちは、国連の集団的安全保障、即ち加盟国の武力行使を禁止し、国連安保理が平和の維持、安定のための措置をとることを旨とする体制を、恒久平和を達成するための至高の到達点ととらえ、これを危殆に陥れないように、集団的自衛権の行使を限定しようとし、自国防衛説と言われる見解を唱えた。この見解では集団的自衛権とは、他国に対する武力攻撃が同時に自国の死活的利益を危うくする場合に、自国の防衛のため、当該武力攻撃に反撃する権利である説かれている。ところが自国防衛説は、現実には、米国とその同盟国、旧ソ連とその同盟国など大国が、自国の国益を守り、そのヘゲモニー、イデオロギーを強制するために、侵略と干渉の道具として集団的自衛権を濫用する論拠となってしまった。

 これに対し、ニカラグア事件に関する国際司法裁判所の判決(1986年)は、集団的自衛権の要件として、被害国における自衛権要件の充足と、被害国の明示の要請をあげた。これは他国防衛説と言われる見解で、国際司法裁判所は、自国防衛説のもとで集団的自衛権の濫用を招き、国連による集団安全保障が危うくされている現状を直視し、敢えてこの見解を採用することにより、集団的自衛権を限定しようとしたものと考えられる。
 現在は、むしろこの見解が国際法学の主流となっている。

注:ニカラグア事件
1979年、ニカラグアにサンディニスタ革命政権が樹立された後、国内では右派ゲリラ勢力(コントラ)の武装闘争が展開され、逆に隣国の親米国家エルサルバドルでは反政府組織が勢力を拡大し始めている中で、アメリカが、ニカラグアの港湾の機雷封鎖、港湾施設や海底パイプラインや石油貯蔵施設の爆破など、サンディニスタ革命政権に攻撃を加えた。1984年、ニカラグアは国際司法裁判所に提訴、アメリカはニカラグアからエルサルバドルの反政府勢力への武器援助がなされたとしてエルサルバドルへの集団的自衛権の行使だと主張したが、1986年、同裁判所はこれを排斥、アメリカの国際法に違反する違法な武力行使を認定した。


 さて、わが安倍政権は、7.1閣議決定とその後成立させた安保法制において、集団的自衛権行使を認めるという憲法9条解釈の大転換をしたが、そこで認められることになった集団的自衛権は、フルスペックではなくわが国の存立もしくは国民の生命、財産、幸福追求の権利が危殆に瀕するときにはじめて行使される限定的なものに過ぎないと主張している。これは上に述べた自国防衛説そのものであり、安倍政権は、その下で集団的自衛権が濫用された歴史に完全に無視しているというほかはない。
(続く)
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26日に!

こんにちは。
このシリーズの紹介を,26日にさせて頂きます!
見出しと頭の部分の紹介で、タイトルから元記事へ行けるようにしました。
お気に召すと良いなと思います。。。

Re: 26日に!

> こんにちは。
> このシリーズの紹介を,26日にさせて頂きます!
> 見出しと頭の部分の紹介で、タイトルから元記事へ行けるようにしました。
> お気に召すと良いなと思います。。。

ありがとうございます。「緊急事態条項と憲法9条・立憲主義」はもうしばらく続きます。
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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