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緊急事態条項と憲法9条・立憲主義(20)

緊急事態条項は、危険、有害かつ不必要である(その8)

戦後わが国は金森答弁を指針としてきた  

 緊急事態条項を拒否、排除した日本国憲法が制定されて以後、わが国は、いみじくも金森国務大臣(憲法問題担当)が答弁したとおり、「特殊の必要が起りますれば、臨時議会を召集して之に応する処置をする、又衆議院が解散後であって処置の出来ない時は、参議院の緊急集会を促して暫定の処置をする、同時に他の一面に於て、実際の特殊な場合に応する具体的な必要な規定は、平素から濫用の虞なき姿に於て準備するやうに規定を完備して置く」主義を貫いてきた。
そして、実際、各種の非常事態に対処するため、憲法の下位に立ち、憲法に適合することをそれなりに慎重にチェックされた諸法令が整備されてきた。それは以下に概観するとおりである。

非常事態に対処する諸法令・・・自然災害、テロ、戦争等に関して

①まず自然災害等に関して

 災害に関連するものとしては、災害救助法、災害対策基本法、大規模地震災害特別措置法、原子力災害対策特別措置法などを中心に災害法制が整備され、災害時の緊急対策が可能となっており、消防法、警察法、自衛隊法(災害出動)などによるマンパワーの動員も可能となっている。
 災害対策基本法には、内閣総理大臣の「災害緊急事態」布告により買い溜め、売り惜しみによる生活物資の不足を解消する、価格つり上げによる被災者の生活困窮と復旧・復興のための物資の滞りを防ぐ、差し迫った金銭債務弁済期を猶予して事業や生活の破綻を防ぐ、海外からの支援物資の救急受け入れを可能とするなど内閣に4項目の緊急政令制定権を付与するほか、内閣総理大臣に権限を集中する規定が置かれており、また被災地の市町村長に一定の強制権限が与えられている。
 災害救助法には、被災地を管轄する都道府県知事に一定の強制権限が与えられている。
 これらは、大災害に遭遇して、試行錯誤で作り上げてきた法制度であり、未だ百パーセント完璧なものとは言えないかもしれない。しかし、問題点があれば、それに即して改善をするというこれまでの行き方は決して誤りではなく、今後もその努力を続けるべきであろう。
 ただ問題なのは、法制度上の不備よりも、これらの法令を杓子定規に適用しようとしたり、逆に法令の趣旨に反する解釈、慣行がまかり通ったりして、被災地と被災者に混乱を招く事態がまま生じていること、日ごろの準備や訓練をおざなりにし、いざという時にスムースな対処ができない事態が生じていることなどである。

 大災害が発生するたびに、自民党のお偉方は、ここぞとばかりに緊急事態条項が必要だとご託宣を下し、右派メディアはこれを奉っている。しかし、これはなんとか憲法「改正」に手をつけたいという願望の吐露に過ぎない。

 ここに興味深いデータがある。日弁連が昨年9月、岩手、宮城、福島3県の太平洋沿岸37自治体に実施したアンケートの集計結果である(回答を寄せたのは、24自治体。本年4月390日弁連主催で実施されたシンポジウム「大規模災害と法制度~災害関連法規の課題、憲法の緊急事態条項~」で発表された。)。
被災地自治体は災害対策・災害対応のための緊急事態条項を必要としていないと見てよいだろう。

質問 災害対策・災害対応について市町村の権限は強化すべきか軽減すべきか
回答
権限強化     6自治体 25%
現状維持    17自治体 71%
権限軽減     1自治体  4%
   
質問 災害対策・災害対応について市町村と国の役割分担をどうすべきか
回答
市町村主導   19自治体 79%
場合による    3自治体 13%
国主導      1自治体  4%
無回答      1自治体  4%
   
 この分野で「緊急事態条項」は必要ないことは、明らかである。

②ではテロ対策としてはどうか

 テロとは、特定秘密保護法の定義によれば「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」とされている。これは、もともと刑法、爆発物取締法、ハイジャック防止法その他の刑事罰を定める法令に違反する犯罪であるから、警察法、海上保安庁法及び警職法によって防止措置、取り締まり、強制措置が可能であった。
 しかるにこれまで、有事法制の一環として、「武力攻撃事態等における我が国の安全と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」(事態対処法)と「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)において、大規模なテロの発生を想定した「緊急対処事態」なる事態を設定し、災害救助法と災害対策基本法を模した仕組みがつくられ、武装した自衛隊を出動させることまでも予定されている。
 これらは、現実の必要性を検証することなく、有事法制の制定の論理・・・自衛隊のプレゼンスを鮮明にし、自衛隊の活動する場面をできるだけ拡大し、自衛隊の活動をよりスムース、容易にすること・・・に符節をあわせたもので、憲法9条に反する過剰な法制度である。
 
③戦争及び内乱に関して

 戦争や内乱は、外には憲法9条を基礎とした平和外交、内には立憲主義を実践することにより防止できるし、しなければならない。

 それでも万万が一、突如外国からの武力攻撃を受けた場合にはどうするのか。そのような事態が生じるとすれば政府の失敗以外の何物でもないが、多くの国民からすれば座して攻撃に任すということにはならないだろう。当面、自衛隊が存続する限りは、従来の武力行使三要件に基づく反撃をし、撃退に努めつつ、国民の力によって失敗した政府を新しい政府に取り換え、停戦と平和確立の外交を推進させるべきである。その場合、有事法制制定前の自衛隊法と、警察法、海外保安庁法及び警職法によって対処することは可能であり、緊急事態条項をもうける必要はない。
 漸次、軍事力としての自衛隊の縮小・解消が進むにつれて、政府の役割は一層重要になる。政府は、国際関係の緊張激化を招かず、国際社会から信頼と尊敬を得られる力量を持たねばならず、国民もそのような政府をつくる重い責任を負う。

 しかるに現在、突出した有事法制ができあがっている。これらは、日米同盟を何よりも重視し、外国からの武力攻撃を受けた場合を超えて自衛隊を出動させる道を開いており、限りなく戦争遂行法制となってしまっている。その中で、事態対処法と国民保護法に、内閣総理大臣が「武力災害事態」なるものを認定することにより、災害救助法と災害対策基本法を模した仕組みがもうけられているが、これは憲法9条に反する過剰な法制度である。

 また万万が一内乱が発生した場合には、警察法と警職法基づく警察の適切な活動により、これを抑制し、刑法の内乱罪その他の罰条により措置すればよいのである。自衛隊法には内乱の規模によっては警察を補完するために自衛隊の治安出動をさせる規定もあるが、同胞あい撃つ事態は何としても避けるべきである。
 内乱に関してもテロと同じく、「事態対処法」及び「国民保護法」所定の「緊急対処事態」を適用するのであろうか。そうだとすれば同じ批判があてはまる。

 現在の有事法制は既に過剰であり、緊急事態条項など論外であることを再度確認しておきたい。これらは憲法9条と立憲主義に照らして、再度厳密に検討しなおす必要がある。2015年9月に成立した安保法制の廃止はその第一歩である。
(続く)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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