「国際的組織犯罪防止条約」を批准するにはいわゆる「共謀罪法案」を成立させることが必要不可欠か?(資料)

 いくつかの資料を参考までに掲げておきます。

1 TOC条約を所管する国連薬物・犯罪事務所(UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime)の立法ガイド第51項

51. The Convention aims at meeting the need for a global response and at ensuring the effective criminalization of acts of participation in criminal groups. Article 5 of the Convention recognizes the two main approaches to such criminalization that are cited above as equivalent. The two alternative options of article 5, paragraph 1 (a) (i) and paragraph 1 (a) (ii) were thus created to reflect the fact that some countries have conspiracy laws, while others have criminal association (association de malfaiteurs) laws. The options allow for effective action against organized criminal groups, without requiring the introduction of either notion - conspiracy or criminal association - in States that do not have the relevant legal concept. Article 5 also covers persons who assist and facilitate serious offences committed by an organized criminal group in other ways.

(外務省仮訳)
51. 本条約は、世界的な対応の必要性を満たし、犯罪集団への参加の行為の効果的な犯罪化を確保することを目的としている。本条約第5条は、上記に同等のものとして引用されている犯罪化に対する2つの主要なアプローチを認めている。第5条1(a)(i)及び1(a)(ii)の2つの選択的なオプションは、このように、いくつかの国には共謀の法律があり、他方、他の国には犯罪の結社(犯罪者の結社)の法律があるという事実を反映して設けられたものである。これらのオプションは、関連する法的概念を有していない国において、共謀又は犯罪の結社の概念のいずれかについてはその概念の導入を求めなくとも、組織的な犯罪集団に対する効果的な措置をとることを可能とするものである。また、第5条は、他の方法により、組織的な犯罪集団によって行われた重大な犯罪をほう助し及び援助する者も対象としている。

 外務省仮訳は、ゴチックで下線を付した部分に問題があります。これは「これらのオプションは、関連する法的概念を有していない国において、共謀又は犯罪の結社のいずれの概概念の導入を求めなくとも、組織的な犯罪集団に対する効果的な措置をとることを可能とするものである。」と訳するのが正しく、外務省仮訳は、共謀罪もしくは参加罪のいずれかを導入することは必要だとのミスリーディングを意図したものです。

2 私は、「TOC条約は、マフィアなどや文字通り世界をまたにかけた犯罪組織、反社会集団の撲滅を目的とする条約です。ご承知のように、この分野では、わが国には暴対法が存在しています。」と述べましたが、この趣旨に関連する資料を次に掲げておきます。

① TOC条約(外務省仮訳からの抜粋)
第1条 目的
この条約の目的は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進することにある。

第2条 用語
この条約の適用上、
(a)
「組織的な犯罪集団」とは、3人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するものをいう。
(b)
「重大な犯罪」とは、長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為をいう。
               (以下略)

第3条 適用範囲
1 この条約は、別段の定めがある場合を除くほか、次の犯罪であって、性質上国際的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するものの防止、捜査及び訴追について適用する。
    (以下略)

② 暴対法
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 暴力的不法行為等 別表に掲げる罪のうち国家公安委員会規則で定めるものに当たる違法な行為をいう。
二 暴力団 その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。
三 指定暴力団 次条の規定により指定された暴力団をいう。
四 指定暴力団連合 第四条の規定により指定された暴力団をいう。
五 指定暴力団等 指定暴力団又は指定暴力団連合をいう。
六 暴力団員 暴力団の構成員をいう。
七 暴力的要求行為 第九条の規定に違反する行為をいう。
八 準暴力的要求行為 一の指定暴力団等の暴力団員以外の者が当該指定暴力団等又はその第九条に規定する系列上位指定暴力団等の威力を示して同条各号に掲げる行為をすることをいう。

 少なくとも国民の幸福と安全、国際社会の安全をまじめに願って国内措置を整備するというなら提出されているような法案ではなく、上記の如き、明確な定義規定をもうけるべきでしょう。
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日弁連の誤訳について

外務省ではなく日弁連の方が、誤訳しているようです。
http://blog.lawfield.com/?p=347

https://twitter.com/ToruKunishige/status/856801045069963264/photo/1

否定のeither or等は基礎文法

TOC条約を所管するUNODC(United Nations Office on Drugs and Crime)の立法ガイド第51項の誤訳指摘を何回も読みました。わずか5文からなる同項の原文・外務省訳・日本語訳ですがいくら読み返しても分かりません。これは、日本国が暴対法を立法したことを知らないためです。同項の3文のsomeとothersにいたり、日本国は暴力を定めており同文後半に該当している。このためTOC条約5条にある選択は後者のCriminal association lawの法定国に属することもようやく理解できました。これで日本国は効果的な対策として4文のwithout requiring A either Bいずれも必要としない、5文は同5条が幇助罪の適用も定めていること[参照されたい]、などにも合点しました。外務省訳は読み返してもいまだに分かりません。外務省・日弁連からこうした「畜」訳を強制される翻訳者も可哀そうですがWhile some knew, others didn't. Me, neither. もっとも国連や国際機関はまたeither A or Bの否定は選択の全否定、すなわち両選択はいずれも同51項のOffice設置のために必要ではないこと、なぜ日本国民が気づかないのか心配しています。選択AもBも両備した「日本」国は無敵となりましたが、憲法前文にある「政府の行為」が再来しないよう貴兄のご活躍を希望する読者の一人です。

Re: 否定のeither or等は基礎文法

> TOC条約を所管するUNODC(United Nations Office on Drugs and Crime)の立法ガイド第51項の誤訳指摘を何回も読みました。わずか5文からなる同項の原文・外務省訳・日本語訳ですがいくら読み返しても分かりません。これは、日本国が暴対法を立法したことを知らないためです。同項の3文のsomeとothersにいたり、日本国は暴力を定めており同文後半に該当している。このためTOC条約5条にある選択は後者のCriminal association lawの法定国に属することもようやく理解できました。これで日本国は効果的な対策として4文のwithout requiring A either Bいずれも必要としない、5文は同5条が幇助罪の適用も定めていること[参照されたい]、などにも合点しました。外務省訳は読み返してもいまだに分かりません。外務省・日弁連からこうした「畜」訳を強制される翻訳者も可哀そうですがWhile some knew, others didn't. Me, neither. もっとも国連や国際機関はまたeither A or Bの否定は選択の全否定、すなわち両選択はいずれも同51項のOffice設置のために必要ではないこと、なぜ日本国民が気づかないのか心配しています。選択AもBも両備した「日本」国は無敵となりましたが、憲法前文にある「政府の行為」が再来しないよう貴兄のご活躍を希望する読者の一人です。

Fumio Sakuragi 様 的確なご意見ありがとうございました。匿名氏のコメント欄への「誤訳」なる書き込みがあり、再度、書かねばならなかったのですが、今、書いている西郷隆盛論がひと段落してから思い、先延ばしにしていました。貴兄のコメントで、その必要はなくなったようです。

Re: 否定のeither or等は基礎文法

 原文は、「without ・・・ either notion - A or B -」であり、「‐」を無視して、二重否定の構文として、「without ・・・・ either A or B」と繋げて読むのが間違いという趣旨で、UNODCの口上書に対する回答(国重議員のツイート参照)や立法ガイドのパラグラフ55からも明らかです。

 また、暴対法は暴力団のみを対象としており、暴力団以外の組織的な犯罪集団は対象外となっているため、TOC条約第5条の要件を満たしておりません。
 また、TOC条約第5条は、参加罪について、組織的な犯罪集団の犯罪活動に参加する行為を犯罪とするだけではなく、犯罪活動以外の「その他の活動」に参加する行為についても、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っている場合には、これを犯罪とすることを義務付けていますが、暴対法は、「犯罪活動以外の「その他の活動」に参加する行為についても、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っている場合」を対象としていないため、TOC条約が求めている参加罪ではありません。
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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