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「国際的組織犯罪防止条約」を批准するにはいわゆる「共謀罪法案」を成立させることが必要不可欠か?(再論)

 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)第5条は締約国に何を義務づけているのかということを、締約国当局に向けに、解説した国連薬物・犯罪事務所(UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime)の立法ガイド第51項の読み方について、私は、当ブログの本年4月24日蘭で、外務省仮訳を紹介し、そのうちの「これらのオプションは、関連する法的概念を有していない国において、共謀又は犯罪の結社の概念のいずれかについてはその概念の導入を求めなくとも、組織的な犯罪集団に対する効果的な措置をとることを可能とするものである。」との部分は間違いで、「これらのオプションは、関連する法的概念を有していない国において、共謀又は犯罪の結社のいずれの概念の導入を求めなくとも、組織的な犯罪集団に対する効果的な措置をとることを可能とするものである。」と訳すのが正しいと指摘しました。

 その部分に該当する英文は以下のとおりです。

The options allow for effective action against organized criminal groups, without requiring the introduction of either notion - conspiracy or criminal association - in States that do not have the relevant legal concept.

 外務省仮訳が正しいという前提で、それを論証するように難しい理屈をつける人ならともかく、ごく普通の人が、素直に読むかぎり、私の指摘したように読み取れるのではないかと思います。

 確かに、TOC条約第5条には、共謀罪もしくは犯罪組織参加罪について「必要な立法その他の措置をとる」ことを締約国に義務づけています。しかし、そこにいう共謀罪もしくは犯罪組織参加罪は、「長期4年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる」「重大な犯罪」に係るものという条件がついていますし、「必要な立法その他の措置」と幅のある言葉づかいをしています。

 立法ガイド51項第二文を見てみましょう。

 The two alternative options of article 5, paragraph 1 (a) (i) and paragraph 1 (a) (ii) were thus created to reflect the fact that some countries have conspiracy laws, while others have criminal association (association de malfaiteurs) laws.

 訳してみましょう。「第5条1(a)(i)及び1(a)(ii)の2つの選択的なオプションは、このように、ある国々は共謀罪を認めており、他の国々は犯罪組織参加罪(結社罪)認めているという事実を反映して設けられたものである。」です。

 そうすると問題は、簡単に解けますね。

 立法ガイドは、共謀罪の概念を認めている締約国は、前記の「重大な犯罪」に係る共謀罪を、犯罪組織参加罪(結社罪)の概念を認めている締約国は、前記の「重大な犯罪」に係る参加罪(結社罪)を立法しなさいよと言っているに過ぎないといことになりますね。

 それでは共謀罪の概念も参加罪の概念も認めていない締約国はどうなるのでしょうか。その場合は「effective action against organized criminal groups」が義務づけられるのです。

 わが国は、既に暴対法立法がなされ、共謀共同正犯に関する判例が確立しており、刑法典に、殺人予備罪、放火予備罪、内乱予備陰謀罪、凶器準備集合罪などの定めがあるほか、爆発物取締罰則、破防法など各種の特別法で、予備、陰謀、独立教唆、独立ほう助、せんどうなど70を超える犯罪が定められています。これらは優に、「effective action against organized criminal groups」の義務を履行したものとみなせるでしょう。

 論より証拠、いわゆる「共謀罪法案」を棚上げにして、批准手続きをとってみたらいいじゃないですか。まさか、国連当局は、「貴国は義務不履行につき、批准書を受理しない」などとは言わないでしょう。案ずるよりは産むがやすしと言うではありませんか。

 もっとも私は、いわゆる「共謀罪法案」ではなくて、わが国が、テロ対策などというまやかしをしないで、TOC条約の本旨に従い、現状で不足しているものが本当にないのかどうか厳密に検証し、もしあれば熟議と国民の理解を得たうえで、一定の立法措置をとることまで反対するものではありません。それは国際主義、国連尊重主義の手本となる道に適うでしょう。

  蛇足ながら、念のため申し添えておきます。
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トップの共謀罪コラムに追加しました!

こんにちは。
今日のこの記事の紹介を、トップの新規アップ記事の共謀罪の部分に付け加えましたので、宜しくお願いします!

口上書に対する回答との整合性

 立法ガイドを策定した国連薬物・犯罪事務所(UNODC)が、4月11日付の口上書による回答において、「締結国は共謀のオプション又は犯罪の結社のオプションのいずれかを選択しなければならない」、「これが、立法ガイドのパラグラフ51の背景にある意味」と述べているので(https://twitter.com/ToruKunishige/status/856801045069963264/photo/1)、第3の選択肢があるかのような解釈は誤訳になります。このことは、本体の条約5条の文言とも整合し、立法ガイドのパラグラフ55が、「第5条1項(a)の規定に基づき、締約国は 同項(i)および(ii)に規定される一方または双方を犯罪として定めなければならない。」としていることからも明らかです。

 また、立法ガイド51の最後の方に出てくる「concept」という単語は可算名詞であるのにもかかわらず単数形が用いられており、どちらか一方の概念を持たない国がもう一方の概念をとる必要がないことを述べたものに過ぎません。両方の概念を持たない国のことを念頭に置いているのであれば、可算名詞なので、複数形になります。

 日弁連の最新の意見書では、従来入っていた立法ガイド51を根拠にする論拠を入れていません。これは、誤訳に気づいているからと思われます。
プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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