『存在の耐えられない軽さ』―9条改憲に妄執する人々

  「岸田文雄外相は28日、都内の会合で、安倍晋三首相が提案し、党内議論が始まった憲法改正について『今は憲法9条の改正は考えない』と語った。一昨年の安全保障法制の議論を例に挙げ、『平和憲法との関係でどこまでの備えが許されるのかぎりぎりの結論を出した』と指摘。『その結論が出たとたんに平和憲法そのもの、9条を変えるとなれば、話は振り出しじゃないかということになりかねない』と述べた。」(6月29日付『朝日新聞』朝刊)

 私と立場を異にするとはいえ、岸田外相は、合理的、常識的判断を示している。

 実は、これに近い考え方は、昨年7月の参院選で、衆参両院において「改憲賛成派議員」がそれぞれ総議員の三分の二以上を占め、改憲勢力が色めきたったころ、既に、示されていた。

 たとえば、安倍首相に熱いエールを送り続ける産経新聞の阿比留瑠比氏は、昨年7月21日付産経新聞朝刊掲載のコラム『阿比留瑠比の極言御免』の中で、次のように述べている。

 「産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が16、17両日に実施した世論調査結果が20日付の紙面に載っていたが、記事本文には記されていなかった部分に注目した。憲法改正の賛否を問うた部分である。

 単純に賛否だけをみると、「賛成」(42.3%)と「反対」(41.7%)とが拮抗(きっこう)し、国論は二分されているように思える。これだけを判断材料にすれば、国民意識は割れており、憲法改正は時期尚早という見方もできるかもしれない。

 ところが、「反対」と答えた人に「9条を残す条件での憲法改正」について聞くと、なんとほぼ3分の2の64.5%が「賛成」と答え、「反対」はわずか24.5%にとどまっている。

 さらに調査を詳しく見ると、全体のうち26.9%が9条を変えないならば賛成に回る潜在的な改憲支持者だということがわかる。これをもともと「賛成」と回答した42.3%に加えると、69.2%にも上るのである。これなら、憲法改正の機は熟したといえる。

(中略)
 
 膨張志向の中国、核とミサイルに固執する北朝鮮など、日本を取り巻く国際環境は年々厳しさを増している。その中で、国民の生命、財産と自由を守る安全保障制度を整備するためには本来、憲法9条を改正して自衛隊を「軍」と位置づけた方がすっきりする。

 だが、現実的には9条改正は非常に難しく、その実現を待っていたら国際情勢に対応できないので「次善策」として安保関連法を整備したのではないか。実際、安倍首相は安保関連法の成立後、周囲にこう語っていた。

 『この法律によって、憲法9条改正の喫緊性はある程度、薄れた』

 それなのにわざわざ国民に理解されにくく、連立相手の公明党を含む他党の賛同を得るのも困難な9条改正に突っ走らなくてはならない理由が、安倍首相のどこにあるのか。自衛隊の存在を違憲状態に放置するような9条はいずれ見直されるべきだが、それにはもう少し国民の合意形成が必要だろう。

 ともあれ、9条を除けば国民の憲法改正への理解はぐんと高まることは分かった。秋の臨時国会でスタートする衆参両院の憲法審査会での前向きな議論に、心から期待したい。」
(論説委員兼政治部編集委員)

 阿比留氏は、戦争法制の強行可決後、安倍首相が「この法律によって、憲法9条改正の喫緊性はある程度、薄れた」と周囲に語っていたことまで明かして、改憲のまたとないチャンスを、国民に反対の声が強い9条に手を突っ込んでふいにしてはならないと戒めつつ、9条以外の条項のお試し改憲を提起しているのである。

 さて拙速を戒めるために引用された「この法律によって、憲法9条改正の喫緊性はある程度、薄れた」との発言を、わずか1年もたたない本年5月3日、何の情勢変化もない中で、反故にしてしまった安倍首相。それを潮目に、一斉に動き出した自民党憲法族。『存在の耐えられない軽さ』と嘆くのは、自民党でもおそらく岸田外相だけではないだろう。いわんや国民においておや。
                      (了)
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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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