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イタリア憲法改正の挫折―何が問題だったのか

 イタリアでは、昨年12月4日、憲法改正国民投票が行われ、投票率65.47%、賛成40.89%、反対59.12%で、否決、この憲法改正国民投票を政権への信任投票と位置付け、強力にキャンペーンをはってきたマッテオ・レンツィ首相(民主党書記長)は、辞任に追い込まれた。

 イタリア憲法138条によると、憲法改正手続きのハードルは高い。

 上下各院において3 月以上の間隔を置いて2 回可決すること、2 回目の表決は、議員の絶対多数による可決が必要であることとなっている。
 さらに、2回目の表決が、各院の3分の2 以下であったときは、何れかの院の5分の1 以上、50 万人以上の有権者又は五つの州議会の要求(これらの要求がなければ上記で確定)があったときに、国民投票に付することとし、その過半数の賛成を得なければならないとされている。

 ではどのような憲法改正案であったのか。

 投票用紙には、「議会で承認された2016年4月15日付の官報第88号せ公布された『(上下両院が)対等な二院制を克服するための措置、議員定数の削減、諸制度の運営費の抑制、国民経済労働評議会の廃止、共和国憲法第二部第五章の改正』に関する憲法改正法を承認しますか」と記されており、賛成、反対のいずれかに印をつけるようになっていたとのことである。

 この投票用紙の記載内容を読んで、イエス、ノーの回答をするためには、よほどの基礎知識が必要であり、多くの国民にとってはとても判断ができないものにように思われる。だからレンツィはじめ政権幹部は、「ひとこと賛成に印をつけてくれさえすればよい」とのスローガンで、国民を誘導しようとしたのであろう。

 イタリア憲法では、上院は、州を基礎に選ばれ、定数315と定められている議員から構成されており、全国民の直接選挙により選出される議員からなる下院と全く対等平等な権限を持つものとされている。
 憲法改正案の中心は、この上院について、定数を100に削減し、うち5は大統領によって任命(これは報酬あり)、残り95は州議会議員や市長から互選されることとし(これは原職で報酬が支給されるので無報酬)、その権限を大幅に縮小する(法案審議や内閣信任・不信任決議採択の権限を下院に限定する。上院は下院で可決された法案の修正を提案できるが、下院は修正を拒否することができるなど)というものであった。

 戦後イタリア政治の歴史をひもとくと、政党間の対立、上院と下院の対立によってしばしば長期にわたって政治空白がもたらされていることがわかる。このような政治空白はいわばイタリア政治の宿痾であったと言っていいだろう。

 この度の憲法改正の企図は、この宿痾の原因の一つに対する外科治療を施すことにあった。しかし、治療自体にはそれなりに合理性、必要性は認められるものであったとしても、外科治療が適応であったのか、外科治療の手技、病巣摘除の範囲が適切であったのか、インフォームド・コンセントが十分に確保されていたのか、それらはまた別問題である。

 レンツィは、議会ではこれらの論議を尽くさせ、よりよい改正案を模索しなければならなかった。 

 レンツィは、民主党の書記長ではあったが、下院議員の経歴はない。そのため国民からの信任が欲しかったようだ。当初から議会における2回目の表決で三分の二を確保することが困難な状況にありながら、強引に可決し、国民投票に持ち込んで、これをプレビシット(信任を得るための人民投票)とする、こういう目論見で突っ走ってしまったのであろう。

 わが国に置き換えてみよう。憲法改正の一応の合理性、必要性があっても、それだけでは、憲法改正の立憲主義的規制の要件を満たしたことにはならない。それだけのことで突っ走り、数の力で仮に国会が憲法改正を強行発議しをしても、国民投票では、国民は承認しないだろう。

 ましてや憲法9条「改正」は、何らの合理性、必要性もないのである。

 
 安倍首相は、イタリアの経験を、少しは、まじめに考えてみるべきではないか。

                        (了)

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プロフィール

Author:深草 徹
1977年4月、弁護士登録。2013年4月、セミリタイアして4年。歳を重ねましたが、「これからも、社会正義の話を、青臭く、続けよう」と思います。

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